「お前何であんなこと言ったんだよ!」
望が部屋を出て行った後、浄華は綺に何度も同じことを聞いた。
「ホントのことじゃん?」
綺は涼しい顔で答えながらジーンズを履き、紙パックのコーヒー牛乳にストローを挿した。
「ホントのことなら何でも言っていいわけじゃねーだろ!」
「・・・お前望に隠してるのつらくなかったか?」
「え?」
急に真剣な顔になった綺を見て浄華は言葉が出なくなる。
「男なのに男を好きになって、好きで好きでたまらないのに受け入れられないのが分かってて、忘れるために手当たり次第に男と寝るけどやっぱり忘れられなくて・・・」
自分の心境をそのまま出力しているような台詞に、浄華は正直ぎょっとした。
「好きだけど・・・嫌われたくないから、せめて友達でいたいから気持ちは伝えられないんだよな」
「綺・・・」
「お前の気持ち、すごく分かるよ。俺も経験したことあるから」
「・・・綺が?」
ストレートな性格で、思ったことはとりあえず口に出すような綺が、自分と同じ思いをしたことがある、なんていうのは信じられない。
「浄華はまだ間に合うじゃん」
ストローに口を付けながら綺がぼそりとつぶやく。
綺が何を言っているのかよく分からない。
「何言ってんだよ。望に俺が男と寝れるってばれた上に無理矢理ヤッたんだぜ?嫌われたに決まってる。もう友達として扱ってくれるかどうかも・・・」
「だったらダメ元で告って来いよ」
「何言って・・・」
「後悔するぞ」
真っ直ぐな目で見据えられる。
綺のこんなに真剣な顔を見たのは初めてかもしれない。
沈黙が続いたが、綺が急に立ち上がり、伸びをする。
「コーヒー牛乳飲み終わったし、俺は帰るわ」
綺は少ない荷物をまとめ始める。
荷物を全てバッグに詰めると玄関に足を向けたが、途中でこちらに振り返る。
「最後になるかもしれないから、して?」
浄華は何のことか分からなかったが、綺がすっと目をつむってやっと気づいた。
ゆっくりと綺に近づき、そっと唇を重ねる。
直ぐに離れるつもりだったが、浄華はなかなか離れることができなかった。