「望、寝てんじゃねえよ」

「うー、眠い・・・」

勉強を始めてからわずか20分。

望は早くもテーブルに突っ伏した。

「お前が勉強教えてほしいって言って来たんだろーが。毎回毎回途中で眠りやがって、やる気ねーだろ」

望は勉強を教えてほしいと言って浄華の自宅に来るのに、実際はすぐに眠気に襲われてしまう。

一回眠ってしまうと揺すってもなかなか起きなくなってしまうのだ。

「おい!寝るな!まだ8時だぞ!飯も食ってねーだろーが!」

「う・・・ん」

「ひっぱたくぞ」

「う・・・ん」

何を言っても『はい』しか言わないので、浄華はイラッとしてもう一言言った。

「・・・脱がしていい?」

途端に望はビクッとして顔を上げる。

「いいワケねーだろ!」

顔を赤くして拒む望に、浄華は心の中で舌打ちした。

(何だよ、あの調子で返事してりゃあ襲えたのに)

好きな恋人と二人きり。しかもそいつがさっきから無防備な姿を晒しまくっている。

浄華は我慢の限界だった。

「だったら起きて真面目に勉強しやがれ。次寝たら襲うから」

そう言った途端、望はスッと背筋を伸ばし、パッチリと目を開けてシャープペンシルを握る。

(そんなに嫌なのかよ・・・)

この前のことは許してもらえたとはいえ、やはりトラウマになっているのだろうか。

もちろん、あれ以来望とそういうことは一度もしていない。というより、できていない。

「浄華ー、平方根って何ー?」

「・・・え?ああ・・・」

今は勉強を教えているのだから、変なことを考えるのはやめることにした。

「・・・あれ?平方根って中2で習ったとこじゃね?」

「え?そーだっけ」

「・・・お前どんだけ勉強不足なんだよ。そんなんじゃいくらやっても無駄じゃね?」

「はあ!?お前自分に計算力あるからってそりゃないんじゃねーの!?」

「お前に足りないのは計算力じゃなくて基礎知識だろ。とりあえずそこから叩き込むか」

浄華は望の教科書をぱらぱらめくり、蛍光ペンでラインを引き始めた。

「?何してんだそれ」

「公式にライン引いてる。とりあえずこれ全部暗記しろ」

「これ全部!?」

「みんな覚えてることなんだから素直に覚えろ。便利だし」

「そんなの無理・・・」

「できないなら、襲う」

それを聞くなり、望はルーズリーフを一枚取り出し、公式を5回ずつ書き取り始める。

これで大丈夫だろうと安心したが、『襲う』という単語をちらつかせる度に言う事を聞く望を見て、余計めちゃくちゃにしてやりたくなってしまった浄華は全然大丈夫ではなかった。





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