綺が帰った後、浄華はしばらくソファーの上で横になっていた。
というより、どうするべきか一人で考えていた。
(やっぱりこのままじゃダメだよな・・・)
このままでは望は確実に離れていってしまう。
でも、どうしても思い切って行動することができない。
そんな自分を男らしくないと思う。
(望は俺が誰でもいいから自分を抱いたと思ってんだ・・・)
自分がさっき「誰でもいいなら望なんか抱かない」と言ったのを思い出した。
それは本心だ。誰でもいいならわざわざ友達を抱くわけがない。
それなのに抱いてしまったのは、望のことが好きだからだ。
その気持ちは望に伝わっていない。
「俺は・・・望が好き、なんだよな」
ぽつりとつぶやき、勢いよくソファーから起き上がる。
洗面所で顔を軽く洗い、そのまま外へ出た。
浄華は一気に望の家まで駆けていった。
いつもはすれ違う人に挨拶をするが、そんな余裕もない。
望の家に着いた頃はさすがに息が切れていた。
(なんか久しぶりだな・・・)
あのことのせいで、というのもあるけれど、最近では望が浄華の家に来るほうが多い。
家に誰もいないから気軽、というのが主な理由だ。
望の家は大きな団地の中の洋風な一軒家で、庭には望の母親による見事なガーデニングが見られる。
小学生の頃、ここへ来て暗くなるまで遊んでいたのを思い出しながら、浄華はインターホンを押した。
数秒後、ドアが開いて望の母親が出てくる。
「こんにちは」
「あら浄華くん、久しぶりね」
にっこりと笑った望の母親は昔からあまり変わっていない。
望に似た童顔で、そのせいか年齢よりも若く見える。
「あの・・・望いますか?」
「え?朝から浄華くんの家行くって出てったきり帰ってないけど・・・」
「一回うちへ来たんですけど2,3時間前に帰っちゃって・・・じゃあ捜して見ます」
「ごめんなさいね」
話し終えると浄華は望が行きそうなところを手当たり次第回った。
近所のコンビニや空き地、商店街へ行ったが、どこにもいない。
気づけば3時。捜し始めてから3時間経っている。
朝も昼も食べていないことなどすっかり忘れて歩き回ったが見つからない。
友達の家にでもいるのかと、半ば諦めかけたとき、ひとつ思い当たる場所があった。
(もしかして南公園かな・・・)
南公園は地区のはずれにある小さな公園だ。後ろには森林が広がっているため昼間でも日の光が当たらず、薄暗いので大抵の子供は近くの公園で遊ぶ。しかし浄華と望はその穴場の公園で遊んでいた。
浄華は方向転換し、南公園がある方向へ足を向けた。
南公園に行くと、相変わらず薄暗かったが、全体に広がる緑色と涼しげな風、葉っぱの香りがとても懐かしく感じた。
「!望」
望は一番大きな木の下に座り、幹にもたれながら眠っている。
肩を揺すろうとしたが、穏やかな寝顔を見ると何となく起こす気になれず、考えた後、横に座って自分も幹にもたれた。
(小さい頃も二人でよくここで昼寝してたな・・・)
望と遊んだときのことが酷く遠い日のような気がした。