授業が終わり、間に友達を挟んで望と帰宅したあとは、自宅で1人で何もせず、ただぼーっとしていた。

 宿題のプリントを見ても、小説を開いても、テレビを付けてみても興味が沸かない。

 何も考えずにソファーに横たわっていると、携帯電話から着信メロディーが流れてきた。

 面倒くさいと思いながらも携帯電話を開き、通話ボタンを押す。

「もしもし?」

「あ、浄華?久しぶりだな!」

「あ・・・や?」

 電話は他校の友人、高樹綺(タカギアヤ)からだった。

 綺は美人な上性格もよく、友達思いなので、望の次に大事と言っていい程の親友だ。

 学校が違うわりには頻繁に会っていたが、最近は望とのことのせいで連絡を取っていなかった。

「お前最近連絡くれないから彼氏でも作ったのかと思った」

「はは・・・相変わらず一人だよ」

「ところで、お前今夜空いてる?」

「ん・・・まあ・・・」

「じゃあお前ん家行ってもいい?」

「あーいいよ。俺も一人で暇だったし」

「テキトーに飯買って7時頃そっち行くわ」

「分かった。待ってる」

 電話を切り、ソファーに放り投げる。

 これで気は晴れるだろうかと期待しつつ、浄華はまた横になった。


「なあ、お前もしかして振られたの?」

「・・・っ!?う・・・っ」

 二人でコンビニの惣菜を食べているとき、綺が唐突に尋ねてきた。

 思わず口に含んでいた烏龍茶を吹き出しそうになる。

「なんだよ急に・・・」

 笑ってごまかそうとしたが、綺は真剣な目で話し始めた。

「よく一緒にいるんだからいつもとの違いくらい分かるよ。いつも言ってる幼馴染のやつか?」

「う・・・まあそうだけど・・・」

「くそ・・・浄華を振るなんて許さねえ・・・っ」

 綺の声が急に低くなったので、浄華は慌てて台詞を付け足す。

「仕方ねえだろ!そいつストレートなんだから。・・・それに、あれは完全に俺に非があるし・・・」

「非?何かしたのか?」

「えっとほら・・・その・・・我慢できなくなっちゃって・・・」

「あー・・・無理矢理ヤっちゃったとか?」

「・・・ああ・・・・・・」

 あの時を思い出し、気分が一気に暗くなった。

「お・・・俺がそいつだったら全然嫌じゃないけどな・・・」

 何とか浄華を励まそうとしているのが手に取るように分かる。

 浄華は急に笑い出した。

「えっ!?何・・・?」

「いや・・・何か可愛いなーと思ってさ。ありがとな」

 優しく笑いかけて綺の髪を軽く梳くと、綺の顔がじわじわと赤みを帯びる。

 少しの間そうしていると、綺は自然な動作で浄華に抱きついた。

「綺?」

「浄華・・・したい・・・」

「え・・・今から!?」

「俺、別に飯食いに来たわけじゃないんだけど・・・」

(確かに俺もそのつもりだったけど・・・)

 一瞬頭の中を望の顔がよぎる。

 でも、もう可能性はないと考えるとどうでもいいような気がしてきた。

 うつむいている綺の顎を持ち上げ、唇に軽く自分のそれを押し当てる。

「・・・そうだな。じゃあ先に風呂入ってこいよ。すぐ沸くから」

「!・・・分かった」

 浄華は残りの烏龍茶を飲むと、台所の横の給湯スイッチを押した。





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