もう10年近く前のお話です。
その当時のマジックバーの給料はとても安かった。
まぁ好きなことをやっている人たちってのは、例外なくそんなもんだと思う。
金が欲しかったら、違う仕事をすれば良いだけなのだから。
別にうちの師匠がケチだとかそんな話ではない。
決してお金では買うことのできない経験や出会いをさせてもらってるんだから。
師匠は給料以外にも手品道具をたくさんくれた。
手品を習いたてで、貧乏な俺たちはそっちの方が現金よりも何倍も嬉しかった。
それにマジックバーを閉めた後、色々なお店で飯を食わしてくれた。
居酒屋以外で一食で1000円以上の飯なんて、自分のお金では到底考えられないことだった。
中でも師匠がお気に入りの店があった。
近所にある中華料理屋だ。(ここはそんなに高い店ではありません。)
見るからに人の良さそうな親父さんと奥さんそれに息子の3人で営業をしていた。
店内は決してオシャレとは言えない、本当に大衆向けのお店でした。
ちなみにタイトルの『親父さん』というのはこの中華料理の親父のことです。
師匠とは色々なお店に行ったけど、ここに一番良く来たと思う。
一緒に行ってた後輩のタカシは、体もデカく飯も良く食べる食べる。
そんなタカシのために、料理やご飯はいつも大盛りにしてくれたものだ。
タカシも遠慮なく食べてさらに御代りまでしてたっけな。
しばらくすると、コイツらはたくさん食べるなぁと分かったんだろう。
俺たち専用のドンブリまで用意されてた。
それからは、師匠と一緒じゃなくて個人的に行くようにした。
そうそう、こんなことがありました。
ピータンって知ってます?
俺も名前くらいは聞いたことがあるんだけど、どんなものかも全く知らなかった。
そんな話を親父さんとしたら、「普通の人は苦手な人が多いぞ!」と。
好奇心旺盛な俺は「いつか金に余裕がでけたらチャレンジしてみよ!」といった。
まぁたかがだ数百円だったとは思うのだが、その当時、サイドメニューを頼むなんてことは金銭的にありえなかったのだ。
すると親父は「ちょっと待ってな」と。
しばらくして俺に差し出した。なんか黒くて良くわからんものを1切れ。
「これがピータンよ。とりあえず食ってみろ!」
食べてみた。なんか不思議な味だった。
豆類みたいなのを想像してたのに全然違った。
知らない人のために、こんな感じです。
が、俺的には意外とイケたのだ。「美味いっす!」
「そうか、そりゃ良かった!」
そう言って親父はピータンを1皿差し出した。
「こりゃ、俺のオゴリよ!」
とまぁこんなことがありました。
まだまだ親父の話は続きます。
中編 へ続く
