夫が仕事から帰ってきて、リビングでコーヒーを飲む。

夫「今話いい?」


私「はぁ(天を仰ぎ見る)」


私「まぁ、確かに今日はしんどそうだったけど」


夫「今日はまだマシなんだよ。まだ元気だから話がしたい。」


夫「この前マルちゃんと話た時にトドメを刺されたっていうか…ズドンときて。

それからずっとヤバい。

まだ子供たちの顔が浮かぶから思いとどまってるというか…いろんな人にも言われるし。」


私「何を?」


夫「死んじゃダメだよって…」


夫「今一番ストレスっていうか辛いのは、子供たちといても、子供の前で笑えないことで…

このままじゃ仕事も出来なくなるし、職業柄ちょっとした油断が命に関わることも多くて…今ヒヤリハットがすごく多い。」


夫「ちょっとこのままじゃ…」


夫「今の生活は続けられない。」



私「あの、さ、何度も言ってるけど、心療内科を受診して欲しい。

希死念慮がある状態だよ。」


夫「何?」


私「死にたいって思うこと。

普通はないんだよ。

普通はね。」


私「だから、その状態は病院に行った方がいい。

受診してください。」



夫「行ったところで…何が変わる?」



私「例えば私が病院にいって、あなたの状態を話すとする。

死にたいと思うことがあるそうですって。

そしたら、今すぐに連れてこいって言われると思う。

行きたくないっていうんですっていったら、じゃああなたはそのままご主人が選択を間違えてもいいんですかってなると思う。あの時、無理矢理にでも受診させておけばって、一生後悔しますよって。」


私「今のあなたはそういう状態。」


夫「でも病院嫌だ…話も出来ない。」


私「とにかく、行ってください。

先生が家庭に原因があると判断するのか、仕事に原因があると判断するのかはわからないけど、家庭に原因があるなら距離が必要だし、仕事に原因があれば休暇が必要だと思う。」


夫「仕事じゃないよ。ずっとこんな調子でやってきたんたから…」


(蓄積だよ!今まで出来てきたからこれからも出来ると何故言える!)


私「とにかく、受診してください。」


夫「病院いって、その後はどうするの…」


私「死にたいと思わなくなったら話し合いをする。」


夫「そんな時は来ないと思う。

居場所がないんだ…

帰ってくるのが辛い。」


私「帰ってくるのが辛いなら、ホテルで生活してもいい。」


夫「いや…帰ってくるよ…」


私「だから、無理をするのが良くない!

帰ってきたくなければホテルに住めばいい。子供の顔が見たかったら帰ってきてもいい。死なない為なら無理しなくていい。」


夫(無言で私を見つめる)


私「え、じゃあ離婚してって思ってる?

それは出来ない。私の本意ではないから。今離婚したら多分私が死ぬ。

うーんまぁ私が無理をさせてるならなんとも言えないけど…無理をしないで、命を一番に考えて。」



夫(無表情で膝をかきむしりだす)


私「とにかく受診してください。

私からはそれしか言えない。」


夫「わかった。

まずは一回行ってみるよ…

どこに行けばいいの…」


私「それは調べますよ。」


夫「行ってもどうにもならないと思うけど。」


私「それはまず行ってから言ってください。」




私にトドメを刺されたと言った。

そう言われて、なぜ話し合いが出来よう…

言いたいことの一つも言えない。

耐えた。

ひたすら耐えた。


起死念慮のある人に、私の言葉が凶器になるかもしれない。


死にたいと思わなくなってからじゃないと、何も言えない。


そんな私の気持ちなんて、慮ることすら出来ないんでしょ。

ただ言われるだけ。ただ傷つけられるだけ。

そんな時間がどれほど苦痛か…


唇を噛んで、じっと耐える。