「……っ~~~~!!」
ばんばんと熊の様に大きく広い背中を力まかせに叩く。
それでもおかまい無しに一層深く口づけてくる男に、
必死の抵抗を試みるべく、その堅い後ろ髪を思い切り引っ張った。
「いたたた、俊痛い」
「っはぁ…」
はあはあと肩で息をする。
「がっつきすぎや、阿呆!」
「…悪かった。意識飛んでた」
「全くや。あ、唇切れとる。何してくれんのや!」
「すまんて。俊が声出して煽ったりするから」
「阿呆!そーいう声とちゃうわ。息が出来んかっただけや」
自分より一回り大きながたいの男が、不満気に唇を尖らせる。
そういう仕草はまるで子供だ。
何年も昔から変わっていない。
それが、ふとしたはずみにスイッチが入ると、あっという間に
雄になってしまうのだから、全く不思議だ。
この瑞垣俊二が良いようにされてしまうのだ。
年月って酷い。
「えろい顔しとったくせに」
「何か言うたか!?このくちはー!」
「い、いひゃい、いひゃい」
苦しかったのは事実だが、久しぶりの人の熱に
浮かされてたのも事実だった。
秀吾ごときに感づかれるほど、
表情を取り繕えなかったことが、悔しい。
死ぬほど悔しい。
「大体が下手くそなんじゃお前は!唇吸うのはええけどな、
歯で押さえんな。だから切れたんじゃぞ」
「ひゃってひょーしんほひゅんふひほひふひゃろ」
「聞こえんわ!」
横に引っ張るように手を放す。
大分痛いはずだ。
案の定、秀吾の大きな手のひらが頬に当てられた。
「いってー」
「何やて?」
「だってそーしんと俊、口閉じるやろ」
「されるがままいーようにやられる奴がどこにおんのや。
抵抗くらいするに決まってるやろ」
「分かった。もう噛まん。やからもう一回」
「もういやや」
「何でや!」
「何や唇ひりひりするもん。お前唇荒れてるんとちゃう」
秀吾はしたり顔で唇を舐めながら頷いた。
「うん。ひりひりするな。べろちゅーすると
唇荒れるなんて知らんかった。口乾くし」
「べろちゅー言うな」
最中は、必要以上に濡れていても終わるとすぐに乾くのだ。
ちっ、と舌打ちする。
「口寂しいんやろ、まだ煙草辞めれてないんとちゃうか」
太い腕が俊二の身体を引き寄せる。
「んなもんとっくに辞めたっつうの」
「そうか」
暖かくて堅い手が、白い喉の下を撫でる。
猫やないんやぞ。
そう言うために顔を上げると、顎が強い力で固定され、
薄く開いた唇が塞がれた。
春休みの昼下がり、人気の無い校舎に響く、
遠くから聞こえる部活動の声。
窓の外には桜が散っている。
(母校忍び込んでなにしてんのやろ、俺ら)
門が門じゃないー;;誰だお前。天才門脇秀吾は
べろちゅーなんて言わないよ