黒川真理リサイタルを聴いて | The Magellan

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新時代を切り開く意思



黒川真理リサイタル(4月26日、オーバード・ホール)

 幕が上がり、さながらフルオーケストラを思わせる箏の大合奏団や合唱団とともに黒川真理が舞台に登場し、あたり一面がさっと明るくなる。

 黒川と母・雅皓の門下生の昇格披露と後援会発足一周年記念のリサイタル(三部)。正派邦楽会の家元や気鋭の演奏家、舞踊家らとの夢のようなコラボが実現したことは、邦楽界にとっても大きな収穫といえるのではなかろうか。

 とりわけ、第二部の「三つの断章」における黒川の渾身の演奏に深い感銘を受けた。無調、変拍子をはじめ多彩な演奏技法を駆使した難度の高い曲だが、その絃のこすれや呼吸、仕草のすべてに新しい時代を切り開こうとする強い意思が感じられた。この稀有な演奏家の持続と成熟が花開いた瞬間を目の当たりにできたことは幸運であった。

 また、地唄「石橋」では、深海さとみの三絃と藤舎推峰の笛、福原百之助、鶴之助の打物が、黒川のつまびく箏と華やかな音色を奏で、一つの熟成された美の形を見る思いがした。さらに「新青柳」では、家元の中島靖子の箏の圧倒的な存在感の中で、藤原道山のスイングするような尺八が、黒川の三絃やよくとおる声とあいまって、古典の奥深い世界をかもし出した。

 おそらくは、同時代を生きる炎のような精神を共有する競演者の思いを私たちはそこに見ていたのだと思う。その気配に呼応するように、合唱や舞踊などすべての出演者の思いが一つになって、第一部の「通りゃんせ幻想」や第三部の舞踊組曲「和歌の浦」などに結実したといえる。

 古典に現代の息吹を与え、新しいスタイルを創造していこうとする黒川の立ち居振る舞いに、これから来る音のそよぎを聴く思いがして、驚くほど私の心は高揚していた。