人生の最後に聴きたい曲は何かと問われたら、その一曲に何を選ぶだろう・・・
その問いがいつも胸のどこかにあった。
私の憧れの人は、グレン・グールドが弾くバッハのゴールドベルグ変奏曲と即答した。
その時、私は…「ああ、この人とは一緒に死ねない」と感じた。
裸の魂だけになった時の感性を、私は信じる。
そんな出来事から数年間、ずっと私にとっての最後の一曲を探して見つからず。
一緒に死ねるような相手を見分けるための一曲。
そして…数日前。
私は或る詩人を通して、その一曲と出会った。
その夜遅く、夫とのシャンパン・タイムに、さりげなくその曲を流した。
「心地いいね…」と夫が呟く。
「私、この曲を聴きながら死にたいわ。」
「それは、いいな…」と、夫はゆっくり目を閉じた。