先日、会食のときに、フィリピン人と話す機会がありました。

そのなかで、「ボルテスV(ファイブ)」を、どこまで知っているのかを尋ねました。
20代の方でしたが、歌は子供の頃から聞いて知っているけれど、なぜ母国のフィリピンで有名なのかは知らないとのことでした。

ボルテスVは、勧善懲悪だけでなく、その中での各々の人の感情の葛藤、うごめく謀略の観点から、とても学びになる日本が誇るべきアニメです。
機会があれば、フィリピン人こそ、過去の歴史やその感情に触れる学びのためにも、通して見てもらえたらと思いました。



ボルテスVについては、下記を参考下さい。人気の理由が分かると思います。

1977年から78年にかけて日本で放送されたTVアニメのボルテスVは、1978年には早くもフィリピンに輸出されました。
その頃のフィリピンはマルコス政権でした。

フェルディナンド・マルコス(1917~1989)氏は1965年に大統領に当選するや議会を停止。戒厳令を敷き、独裁体制となりました。
その時の失業率一時10%を越え、生活苦にあえぐ庶民とは対照的に大統領夫人は贅沢三昧、大統領一族・取巻きたちは汚職のし放題で、国民の不満が蓄積しました。
その不満をかわすために選挙が行われましたが、対抗勢力が多く得票したとみるや開票操作を行い「マルコス勝利」と嘘を発表し、それに怒りが爆発し、市民デモ隊が宮殿を包囲すると、大統領夫妻は亡命し、新しい大統領に変わりました。
( 1986年のエドゥサ革命 別名ピープルパワー革命)



「ボルテスV」がフィリピンで放送されたのはまさにそんなマルコス独裁の最中でした。

そして「ボルテスV」では、敵・地球植民地化を狙うボアザン星の様子が描かれます。
それは一握りの王侯貴族階級が贅の限りを尽くし、王侯貴族以外を「農奴」と呼んで搾取し虐げる社会でした。
話は省略しますが、革命が起き、皇帝は倒されます。

かくして「ボルテスV」は1978年にフィリピンで放映が始まるや最高視聴率58%を記録する大ヒットを飛ばしました。
そこに描かれていたのは、まさにフィリピン人が成し得たばかりの「庶民を苦しめる独裁者を庶民が革命によって打ち倒す」というストーリーでした。

「ボルテスV」はその後何度もフィリピンで再放送され、「親子三代で知ってる」「フィリピン人が日本語で歌える日本の楽曲の代表格」となって今に至っているそうです。