1年生オープンカンパニー実施の概要とポイント~大学、企業が気を付けるべきポイントは?
 前回に続いて大学と福山通運とで共同実施した1年生のオープンカンパニーについて、何回かにわけて解析しながらお話したいと思いますが、まずはその概要とポイントをまず述べたく思います。
 1年生のオープンカンパニーを実施した契機としては、2023年に新たな推進派の学長が就任したこと、また2023年7月の福山通運との包括協定で「産業界として大学に1年生のオープンカンパニー(いわゆるインターンシップ)を実施してほしい」という直球の提起を頂いたことがありました。
 <実施の概要> 日時:2024年2月15日 場所:(事前指導)福山市立大学 (実施)福山通運株式会社本社 参加者:大学1年生 7名(男子6名 女子1名)

 実施にあたっては、夏頃に、福山通運の人事部を直接伺わさせて頂き、また人事部の方に何度も大学に足を運んで頂いたり、という形でやり取りが始まりました。初めてのことですので、できるだけ、人事部の方々、また大学の教員、事務局が一緒にテーブルについて、コンセプト、あるべき日程、募集方法、フィードバックの仕方などについて構築を進めました。その折に、次のことが大切なポイントとして浮かび上がってきました。この点については、先進的なキャリア教育をすすめる京都産業大学や山形大学などで充実した大学がありますが、意外に大学で整備途中のところが多いのではいかと受け止めています。(でも、こうしたことについては、すでによく知っているよという関係者の方は読み飛ばしていただければと思います。)
         

       (福山津運人事部の方からの挨拶とオープンカンパニー実施の説明。緊張する1年生たち)

構築のポイント
〇日程について
 日程として、どの時期を設定するかが問われます。まずは、学生の学修を阻害しない日程、次に、大学側が支援できる日程、また企業側が対応できる日程をすり合わせて日程を最終的に設定しました。特に大学側では、冬の学期が終わった春休みの時期(しかも1年生の集中講義が少ない時期)に設定することが、最も阻害要因がないということで2月の中旬となりました。

〇学生の募集について
 オープンカンパニーに参加する学生の募集で最も効果的なのは何かを検討しました。特に、学生が単位を得る科目とはならないオープンカンパニーであるがために、当初、応募する学生がほとんどいないのではないか!という懸念が大きくありました。募集の選択肢として、大学のポータルやメールでの募集、事務局での掲示、授業でのPRといったことがありました。今回、1年生が多く受講する授業でのPRが大きな効果となりました。

〇実施体制について
 話し合うなかで大学側と企業側が実施体制を話し合いました。その結果、おおよそ次のことがそれぞれの業務として確認されました。
 ☆大学側:

オープンカンパニーに参加する学生の募集、登録と連絡、事前のガイダンス、引率、終了後のフォロー
 ☆企業側:

オープンカンパニー当日のプログラム構築、当日のプログラム実施、実施後のコメント(大学側へ)

〇担当(大学側)での仕分け
 実は、この点も仕分けをすることになりました。まず、学生が単位を履修できる科目(2年生以上)はカリキュラム担当や教務担当が設計し、担当科目の教員が担当することとなります。今回の場合には、1年生のオープンカンパニーですので、単位や科目と関わりなく実施することから、キャリアデザインセンター(就職支援センター)が担当させて頂くこととなりました。
 けれども、話はそうは簡単ではありません。センターでは、企業や教諭経験者である就職支援相談員が日々学生の就職相談や各種支援をしているのですが、実は、こうしたインターンシップやキャリア教育については、そうした相談員ではなくて、教員側が行う必要があるとの仕分けが進むこととなりました。今回の場合、センター長の前山が引き受けることとなりました。(これから着手する大学では、こうした初期的なことから始めることとなります。)

 
 <インターンシップやオープンカンパニーに関わる担当の仕分け>
●学生が単位を履修できる科目としてのインターンシップ:

  カリキュラム担当や教務担当(設計)、科目担当教員(実施)
●就職支援(求人対応、学生の面談や就職指導):

  就職支援担当(相談員)
●単位科目とはかかわりのないオープンカンパニー:

    キャリア教育を担当する教員(科目担当者ではない形でのもの)
     

学生の歓びの反応
 企業の人事担当の方、また大学で新たに取り組まれる場合には、スムースに進めるためには、上記のポイントを押さえて頂ければと思います。
 実施当日、福山通運の人事部の方々などに大変に力をいれたプログラムを実施していただいたのですが、終わってからの学生からの結果として圧倒的に「とてもよかった」という反応をもらいました。
 そして、「就職する、働くといったことは想像できていませんが、今回のオープンカンパニーがあって、働くことなどについての考え方がより詳しく持てた。教えてもらえたことを生かしつつ自分のステップアップを目指したい」という声、「物流業界のなかでも企業が自信を持っていること、プライドや責任感をもって仕事に取り組んでいると思いました」という感想を伝えてくれています。

         

  (終了時に学生さんが記したアンケートと感想(一部))


 「1年生から参加できるオープンカンパニーにもっと参加できたらいいなと思った」という生の声が、学生さんたちのはつらつとした状況を伝えてくれています。実は、学生さんは、「働くこと」「職場とは」「やりがいとは何だろう」といったことを、素直に知りたがっているということが透けて見えるところです。
 次回そのあたりを少し詳しくお話したく思います。

引き続きよろしくお願いいたします。感謝 前山(s-maeyama@fcu.ac.jp)