珈琲が好き。
理由は、ひとつじゃない。
味が好き。
淹れる時間が好き。
香りが好き。
焙煎の音や色が好き。
そして、心が落ち着くから好き。
そうやって並べてみると、
気づかないうちに、
たくさんの「好き」に支えられていたんだなと思う。
最近になって、ふと感じた。
ただの嗜好じゃなかった。
珈琲は、ちゃんと僕を助けてくれていたんだって。
嫌なことがあって、
気持ちが乱れて、
どうにも落ち着かない時でも、
珈琲を淹れて、ひと口飲むと、
肩の力がすっと抜ける。
無理に切り替えなくてもいい。
答えを出さなくてもいい。
ただ、自分に戻っていける。
その時間を、
これまであまり意識せずに過ごしていたことに、
少しもったいなさも感じた。
豆を選んで、
道具を揃えて、
家でも珈琲を淹れるようになった。
そうすると、
家の時間の質が変わった。
静かで、やわらかくて、
ちゃんと自分と一緒にいる感じがする。
淹れるスピード。
豆の量。
蒸らしの時間。
ほんの少しの違いで、
出来上がる味はまったく違う。
珈琲って、
思っていた以上に深くて、
細やかさが必要な飲み物だった。
だから、
これまで何気なく飲んでいた喫茶店の一杯が、
急に特別なものに思えてきた。
誰かが丁寧に向き合って、
時間をかけて淹れてくれていたんだなって。
そう思うと、
あの一杯一杯が、
今までよりずっとありがたく感じられる。
珈琲と向き合うことで、
好きなものを「好きなまま」にせず、
ちゃんと感じる大切さを知った。
知らなかったことを知ることで、
自分の感性も、
少しずつ磨かれていく気がしている。
珈琲の時間は、
僕にとって、
心を整え直すための、
静かで確かな時間。


