陸上競技はトラック&フィールド(競技場で行われる種目)がいよいよ本格的にシーズンイン。

この領域は私にとって本業でありますから、このシーズンオフに取り組んできたことがどうあらわれるか、楽しみでありつつ、ちょっと怖さもある、そんな時期です。

 

とは言ってもシーズンはまだ始まったばかりで、ピークは先に設定していますので焦ることはありません。

 

とか言いながら、このシーズンオフがあっという間に過ぎ去ったように、このシーズンだってあっという間なのは重々承知。

そう言えばいつの間にか桜が咲いて、今や葉桜。

はい、気を引き締めて参りましょう。




 

スポーツでも何でも、目標を立てる時に大切なのは現状把握です。

目標設定のコツとか手法は種々ありますが、

具体的で、

数値化出来て、

達成できそうな目標を、

期日を決めて

設定するのが良いというのがざっくりとした要約ということになりましょうか。

 

陸上競技の場合、記録や順位は数字ですし、試合の日程は決まっています。

なので目標設定しやすいように思いますがそこが落とし穴。

 

具体的かと思いきや実は抽象的だったり、達成できそうと思っているだけで実はそれはいばらの道だったりということは往々にしてあるのです。

 

高い目標を掲げることは素晴らしいことなのですが、どう考えても期日的に無理があるということもしばしば。

 

「100mを10秒台で走る」という一見具体的に見える目標を掲げる人もいますが、10秒00から10秒99まで全て「10秒台」です。

陸上競技の経験がない方からすればたった1秒未満の話ですが、私が10秒56で走った10数年前、そのレースの1着は10秒41でした。

体感で言えば「はや~~」です。

単純計算で1.5mぐらい差があるわけですからね。

 

昔話はさておき、改めて目標設定をするとなった際、適切な現状把握は出来ているでしょうか?

 

現状把握というのは、単純に現在地を点で示すだけを言うのではありません。

「何故今私はここにいるのだろうか」ということを適切に振り返ることが重要です。

 

人間は突如中空に出現するものではないように、現状というのは必ず過去に影響を受けています。

そうでなければこの世はファンタジーです。

 

これは構造上の問題なので個人を責める話ではないのですが、日本は敗戦という過去を適切に振り返ることが出来ないまま現在に至っていると言えます。

 

先の大戦は何だったのか?何故原爆が投下されたのか?

この辺りについては言論が封殺されたまま戦後処理が行われ、あるはずの連続性に目を向けることが難しくなってしまった。

 

しかしめげずに前を向くということは素晴らしい。

何はともあれ、経済大国として「生まれ変わった」というのはファンタジーを凌駕する奇跡であったとも言えるでしょうか。

 

しかし現在の日本はご存知の通り衰退の一途を辿っている。

「イケイケどんどん」、「モーレツ」、「その場しのぎ」、「とりあえず前向きに」だけではどうにも立ち行かなくなっているのが現状です。

 

ならば改めてどこに問題があったかを精査する必要があります。

そう、過去に目を向けねばならぬのです。

この場合だと、先の大戦の始まりと終わりについて(こう考えるといつ終わったのかは実は曖昧)。

 

振り返ることを恐れたのか忘れたのかは分かりませんが、長らく振り返って来なかったツケは小さくありません。

 

まぁこの辺りをどうするのかは次の選挙まで待つしかないかも知れませんが、今シーズンの競技成績のこととなると話は変わります。

取り急ぎ、ここ最近の生活はどうだったかを振り返ってみましょう。

睡眠、栄養、ストレス、練習時間、集中力、どうでしょうか?

 

そもそもどれぐらい睡眠時間を確保するのが自分にとって最適でしょうか?

食事は現実的にどれだけ理想に近付けられるでしょうか?

新学期で生活環境が変わったとしたらストレス対応が上手くいっていないのは当然。

練習時間は確保できていたとしても「どんな風に」練習出来ていたか?

試合の時も含めて「今ここに集中」が出来ていたか?

 

それを適切に振り返りましょう。

プロアスリートでない限り、競技はある意味二の次ですから、仕事や家庭での何某が一番大切です。

それをどの様に制御していくのかは、これまた具体的に考えていく必要がありますね。

 

習慣化のコツなんかで出てくる「if then思考」はかなり有効。

「こういうことになったらこうする」ということを予め決めておくことですね。

でも「こういうこと」というのは、過去からしか参照できません。

 

こうやって冷静に過去からの流れで現在があることが分かれば、具体的な目標がある程度決まってくるはずですし、その為に何をすべきかも見えてきます。

 

これは実例ですが、私が指導している選手に、かなり高い目標を掲げている選手がいます。

その目標を達成するには1年とか2年では難しく、3年から4年は掛ける必要があると踏んでいます。

それには精神の向上も含めた、包括的な取り組みが必要なのです。

そしてその目標を達成させる為には、昨シーズンを有耶無耶にしてはいけないと伝えました。

実は昨シーズンは目標未達で終わっていました。

ならばもっと悔しがれ!そういうことですね。

本気で達成したいなら、本気でやることです。

 

その話をしてから明らかに取り組み方が変わりました。

今シーズンに入ってその選手は、驚くほど好調です。

 

ですが「勝って兜の緒を締めよ」。

まだまだ道は長いですから、一時の感情に流されてはいけません。

これも「なぜこの結果だったのか」「もっといけなかったのか」と過去の振り返りをすることです。

 

かつての我が国が日露戦争に勝利した時の様になってはいけません。

勝ったはいいけどリカバリーできる?

勝ったはいいけどそれが限界になってない?

それも実力かもしれないけど運が良かっただけじゃね?

そういう思考が、きっと次の勝利に繋がります。

 

まぁ戦争をしているわけじゃないので、そこまで言わんでええやんとは思いますがね。

 

ただ、過去を適切に受け止めなければ望む未来はないのです。

 

結果が振るわなかった人ほど嫌な作業かもしれませんが、この前の試合を改めて振り返るのです。

未来はそこから始まる。そう信じて。