京町屋のリノベーション視察
大臣就任に先立ち計画しておりました「京町家の断熱改修」視察を行いました。
前田が出席できないため、前田事務所より秘書二名が代理で出席いたしました。
今回の視察は断熱材メーカーのマグ・イゾベールさんと京都の平安建材さんの協力を得て行いましたが、非常に示唆に富む視察で、前田にも報告したところ、非常に関心を示しておりました。
まず、京都の町家の定義ですが、江戸時代から終戦後すぐの昭和25年までに建てられた古民家で、坪庭や通り庭、火袋などの特徴を備えているとのこと。
なぜ昭和25年かと言うと、その年に建築基準法ができたからです。
さて、平安建材さんでは「京ぐらしネットワーク」 を設立し、京都市景観条例に則った町家のリノベーションに取り組んでおられます。
京都では京町家に分類されるのは47,735戸(京都市H20,21調査より)あり、内32%は早急に修理が必要とのこと。
しかしながら、なかなか修理、リノベーションが進みません。
町家の住民は高齢者世帯が多く「いつまで生きているか分からないので家の修繕にお金を使わない」傾向が強いそうです。
また、連棟が多く、リノベーション工事が難しい、とか、地権が複雑で所有権がはっきりせず建て替えが困難、とか、住宅ローンが非常に使い辛いなどで、問題が多いそうです。
しかしながら、京町家が密集するのは京都市内の交通の便が良い場所ばかり。
山もなく平坦で、コンパクトにまとまっているだけに買い物を含め生活には非常に便利。
これに京都らしい町家の魅力を組み合わせれば大変に価値あるマーケットができるのではないだろうか、と中村社長は京町家のリノベーションに取り組みだしたそうです。
実際に取り組んでみるとしっかりとしたビジネスになる可能性は高いとのことです。
一方で制度的に大きな問題があります。
ひとつは建設基準法です。
昭和25年以前に建てられた京町家は現在の法律に照らすと不適格になる可能性が非常に高く、改修はできても建て替えようとすると現行の建物の規格では建設できないのです。
また、町家の面する道は非常に狭いため、建築基準法43条の接道義務の観点からすると完全に違法となってしまうのです。
また、建築基準法の既存不適格ということで金融機関からのローンがなかなか下りないという問題もあります。
これは金融市場の自主ルールであるだけに、一層問題は深いようです。
町家のリノベーションに際して耐震改修に力を入れ、住宅瑕疵担保責任保険にも加入しているそうですが、それでもなかなかローンが下りないのが現状だそうで、既存住宅の流通という観点から何か出来るのではないかと感じます。
前田にもこれらのことを報告いたしましたが、非常に関心を示しておりました。
京町家は日本文化の象徴的な建物群でもあり、今後とも政策研究を重ねて参ります。
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