新春インタビューを受けて | 前田武志オフィシャルブログ「まえたけだよりweb版」Powered by Ameba

新春インタビューを受けて

【まえおき】


尖閣諸島問題や現職海保職員の映像流出事件についての政府の責任をめぐり、仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国土交通大臣の問責決議案の可決や、相次ぐ閣僚の失言などで支持率が低迷する菅直人内閣。

ねじれ国会で政府の緊急経済対策を柱とする約4・8兆円の平成22年度補正予算案は昨年11月に参議院で否決。衆院の議決を優先する憲法規定により成立したものの政府は厳しい政権運営を強いられている。

その国政で与野党の代表が激しい攻防を繰り広げる国会審議の最前線が衆参両院の予算委員会、うち、ねじれ国会を象徴する参院予算委員会(定数45人)で前田武志参院議員が委員長に就任し、審議の舵取り役として采配をふるった。

昭和58年の総選挙で自民党から政界入りし、民主党結党、平成21年の政権交代まで政治家としてキャリアを積み重ねて来た前田氏にとり予算委員長は集大成の仕事とも言える。景気浮揚策や国の安全保障問題など課題が山積する日本。「政治」はいま何を問うべきなのか、前田氏にインタビューした。


【インタビュー】


―臨時国会をふりかえっていかがでしたか。


「いまは衆議院で過半数を抑えている民主党が政権を持っていますが、参議院は与党が過半数を持っておらず、いわゆる『ねじれ』になっています。


日本の二院制というのは世界でも珍しく参議院の権限が衆議院とほぼ同等なのですが、今回のねじれというのは日本の政治にとって未知の体験だと、そのように感じています。


こう言うと自民党の時も『ねじれ』あったではないかと言われそうですが、長年続いていた自民党政権の末期における『ねじれ』とは根本の部分で違うと思います。


憲政史上初めて政権交代し、国民が政権を選択できる実感した後での『ねじれ』ですのでその意味合いはずいぶん違っています。


与野党ともに初めての政治的な体験と言えます。


そういった状況のなかで参院の予算委員長に就任してつくづく感じるのは、権力闘争の場で解散もある衆議院とは違って、6年間の任期がある参議院は安定した任期のなかで、いかに長期的な政治課題について熟議するかということです。


しかしながら、今回の予算委員会では大局に立った議論はできていなかった。そこはやはり残念です」


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(予算委員会にて)


―補正予算は参院で否決され、憲法規定で衆院の議決が優先され可決の運びになりました。


「今回の臨時国会で何が最も大切だったかを振り返ると、リーマンショック以降の景気の落ち込みがようやく踊り場に来たなかで、いかにして切れ目なく景気対策を打っていくかということにつきます。


そういう意味で今回の補正予算は雇用問題や子育て、福祉・介護などあらゆる分野で使える。補正予算というのは本予算と違って真水です。


景気対策に直ちに自由度に使える。全体では5兆1000億規模の補正予算のなかで特に地域活性化交付金などは奈良県にも直結した財源と言えます」


―今国会では補正予算の中身の議論は余り深まりませんでした。


「そうですね。参院の予算委員長として委員会で議長役を務めましたが、尖閣諸島の問題や北朝鮮の韓国・延坪島(ヨンピョンド)への砲撃事件などがあって、世界を揺るがす、特に東アジアの安全保障を揺るがす事態になりました。


予算委員会というは、国が実行する政策は全て予算で裏打ちされており、予算委員会はあらゆることを議題として議論が可能です」


―尖閣問題や北朝鮮の韓国に対する砲撃事件について、委員会の議論を通じて感じたことはありますか。


「尖閣問題や北朝鮮の韓国への砲撃などで浮かび上がるのは、日本の国の安全というのは日本一国ではどうにもならない。


やはり、東アジアという地域全体の安全保障であり、平和が確保されなければ非常に危ういと考えています。その安全が確保されなければ経済や国民の生活基盤そのものをき損しかねないような所がある。


参院の予算委員会の話に戻ると、東アジア全体の安全保障を考える上では、あまり自国の利益だけの閉じこもった議論ではいけない。


やはり日本の安全保障をどうやって確保していくのか中長期的な視点にたった議論が必要です。


ひとつだけいうと、『北朝鮮けしからん』と。たしかにその通りです。


だからといって『圧力』だけでは解決していきません。


東アジア全体の安全を考える上では歴史的な背景も考えていかなければなりません。


『愛国心』を煽るだけでもいけませんが政府側、閣僚たちも勉強不足の所もあり、実力が伴っていないところもありました。


そこは真摯に受け止めなければなりません。


そういった意味で予算委員会をもっともっと内容の伴ったものにしていかなければなりません」


(以下次号へ続く)