一昨日のNHK「チコちゃんに叱られる」です

『指揮者がなぜ手を振るのか?』という問題が出されて
『一瞬先の未来を演じているから』という答えが示されました
番組に出てきた先生の説明を要約すれば
指揮者が頭の中にイメージしている音楽を一瞬先に「先振り」して示し
その後でオーケストラが音を出す、演奏するという説明で
まあ一つの説明として大方正しいとは思いますが
ただ全ての指揮者&オーケストラの組み合わせが「先振り」のタイミングで音を鳴らすわけではなく
指揮者の振りが描く「打点」と同時に音を出す演奏法もあります
要は約束事をどう決めるかの話
まあウィーンフィルやNHK交響楽団は明らかに「先振り」で演奏しているようですが…

でツッコミを入れたくなったのは、その「先振り」の実例として使った演奏のこと!
この「先振り」を一般視聴者に分かりやすく説明するために番組が使ったのが
朝比奈隆指揮するベートーヴェン の交響曲第5番「運命」の映像でした
別に「先振り」を説明するならドヴォルザーク の「新世界から」でもモーツァルトの「ジュピター」でも良かったのですが
運命」は誤解を招くんです ( ̄◇ ̄;)
なぜなら「運命」の第1楽章の楽譜の最初に書いてある音符は八分休符だから!
指揮者はその八分休符を振りますが
休符なので振ったタイミングで音が出ないのは当然です
みんなが知っている「ジャジャジャジャーン」の深刻な音は
最初の八分休符の後の『3つの八分音符と1つの二分音符(フェルマータつき)』なのです
「運命」は休符から始まる珍しい曲で最初の音をオーケストラが合わせて出すのが大変な曲ですが
この一瞬の空白が緊張を生み激しい音楽をスタートさせるエネルギー源になっているのです

なのでこの八分休符を指揮者が振ったところを
あたかも「先振り」の一例のように説明するのは間違いです
誤解を招く表現なので訂正して欲しいですね!
でもこの間違いに一番腹を立てているのはNHKのクラシック音楽番組の担当者じゃないかな (⌒-⌒; )

ちなみにこのテーマのコーナーでは
指揮者の振り方がいろいろ違う例として
めちゃ激しく情熱的な山田一雄や
前のめりの姿勢で顔を突き出し左右の手を大きく振り回す動きがユニークだったスデネック・コシュラーが指揮する姿を久しぶりに見れて嬉しかったな (^_^)