20161115-1116 | ヨネダ設計舎のブログ

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出来事 日常 建築 

20161115-1116


仕事のめどをつけてから、お休みをいただき、ひとり建築巡礼の旅に出て、2日間で16の建築に会ってきました.




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諏訪湖.車中、この日の旅用にGEOで借りた『君の名は』のサントラをかけていて、モデルとなった町を偶然訪れることに.




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中村キースへリング美術館

建築に仕込まれた人の視覚・知覚・動きを喚起増幅させる仕掛けにより、鑑賞者に対してより作品たちをを浮かび上がらせる美術館.

僕は今、重ねること、という事にひとつの可能性を感じていて、キースのこのコラージュ作品に大きな感銘をうけました.


ある言葉にも目が行く.

『「ベイビー」が僕のトレードマークになったのは、それが最も純粋で、人間として絶対的な存在だから』

―キース・ヘリング―




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ルオー記念館

随分前に写真で見たことがあって、ここには空間があると直感し、ずっと訪れたかった小さな礼拝堂.

アールの壁と天井、光がつくる体感と静謐な空気.とてもよい空間でした.



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隣接する清春白樺美術館 ルオー記念館とともに初期の谷口吉生氏の設計.



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初日の最終、安曇野ちひろ美術館に.  山々を背景に、さりげなく、風景のなかにそっと置かれたような美術館です.
設計者である内藤氏の作品は、僕の地元三重にある氏の代表作である海の博物館の印象が強かったけれど、この建物を体験して、同種の形式、素材なのに素材の寸法、空間の寸法、繊細なディテールの構成で、これほどまでに違う空間ができるのかと大きな勉強になりました.
海の博物館の男性的な力強い木架構の連続に対して、この美術館は人に近いスケールで細い線材、アールのタイバーなど女性的なやさしい印象の建築でした.


正直、、、今回の旅は建築巡礼だったので数々の建物を見ることがメインだったのですが、(ちひろさんごめんなさい。)建物に見とれているうちに、次第に岩崎ちひろさんの作品に惹きこまれていきました.

こどもたちを描いたやさしい作品の数々.


ある作品に目が行きました.洋服を着た子、普段着の和装をした男の子、6人くらいの男女の子供たちが空に滲む豊かな虹を見上げている作品.


今は疎遠になっている幼馴染、自分の子供の頃、自分の祖父祖母の子供の頃、自分を育ててくれた人たち、色んな気持ちが湧いてきて、我慢できず、気が付いたら初めて美術館で涙を流していました.大泣きです.

ひとの心をうごかす本当の仕事、ひとの生き方に影響をあたえうる力をもつもの.


思えば、このやさしく包まれるような建物は岩崎さんの作品の家としてこれほどまでに相応しいものはないのではないかと.ちひろさんの作品はもちろんのこと、そのすばらしさに応えた設計者の手腕に打ち震えるものがありました.




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この日、大きな月.(前日は40年に一度のスーパームーン)

安曇野をあとにして、群馬を目指します.




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月と群馬音楽センター





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車中泊のつもりでしたが、翌日に備えるために当日、ビジネスホテルをとりました.

あえて昭和チックに 笑



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この日を振り返り、ひとりホロヨイ.




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高崎をあとにして、軽井沢へ向かいます.





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レーモンドの聖パウロ教会.

丸太と急傾斜の架構の下に祈りの場があります.

思い返せば、この軽井沢は僕が独立する前にお世話になっていた会社のある年の社員旅行の地(僕がおねだりして)だったのですが、自身の建築士試験、直前模擬試験の日と重なってしまったため、僕は涙をのんで諦めたのでした.



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吉村順三  森の中の家を眺め、ていねいにスケッチする.

テラスでバーベキューをしたり、鳥の目線になって眺めをつくったといわれる2階の大きな窓での語らいなど、この名作で時間を過ごしたひとたちは、ワクワク、無邪気でさぞ幸せな心持ちだったろう、と想像する.

ある種の素晴らしい建築には、ひとの心をみんな童心につれていく力がある.




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帰り、振り返るとこの建物と目が合って、「バイバイ」と言ってくれているようでした.



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吉村氏の建物のひとつはカフェに変身しています.





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西沢立衛さんの軽井沢千住博美術館.

とんでもなかった.とてつもなかった.

入った瞬間にひろがる世界.

論理だけではこの世界は生まれない.
人が感じる状況、体感を想像し、繰り返す検討の末に在る空間.
そこには拠り所となる隠れた幾何学もロジックもなく、存在する空間.
これをつくるにはやはり判断する設計者が自身の感覚を信じ、構築していくしかないのであり・・・.

敷地と溶け合い、緑と溶け合い、光が生きているようで

豊島美術館に勝るとも劣らないすごい世界じゃないだろうか・・・.


もちろん体感だけじゃなくて、知覚についても繊細な配慮の数々.

さりげない領域をつくる柱の配置.でも柱が主張しすぎないように実はうすいグレーで塗られていて存在を弱められていたり.

ナナメの壁の角度.壁の厚みの差異.天床と細く縁を切る壁、ひっつけた壁.床の傾斜.傾斜の緩急、平地の場.様々な間合い.ガラス、植物、作品、光、ひと、柱、壁、陰翳、重なり重なる空間.屋根板金の見付け、寸法加減の絶妙さ.(決して透明性だけを目指しているのではなく、あえてガラスの映り込みも虚の象として取り入れる)


千住博さんの日本画もとてつもなく素晴らしく、良い仕事は分野をこえて求めあい、引寄せ合うのだと、ここでもそう思いました.



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内部撮影禁止なので、ポストカードの写真を。。。




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旅の最終、石の教会に.

自然のなかに埋もれ、同化する祈りの場.

光の中、日没まで空間に身を沈めました.

この旅の感謝、日々の感謝.








あらためておもったこと.

僕は建築が好きだし、その気持ちに対して裏切っちゃダメだと思いました.

過去の反省、至らなさ、日々のこと、それらもふまえて越えていきたい.

では何のために建築をするのか.それは自分だけのためだけじゃ絶対になくて、この幸せを自分に託してくれたクライアントと共有したいし、共につくりたい.


様々な素晴らしい仕事にふれて、ぼくの人生がいったいつまであるのか、それは誰にもわからないけれど、生きている限り、この選んだ道を全うしたい、素直にそんなことを思えた旅となりました.




無事帰宅.2日間で走った距離1009キロ.


お土産に買った、岩崎ちひろさんの絵本を末っ子に渡す.




巻末最後の本の袖に在ったことば.




『0歳から100歳までのすべての子どもたちへおくる』




ぼくもそんな建築をつくりたい.





この旅のご縁に感謝します.


















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米田雅樹 三重県 建築設計事務所