それから (漱石先生) 『雨は依然として、長く、密に、物に音を立てて降った。 二人は雨の為に、雨の持ち来す音の為に、世間から切り離された。 同じ家に住む門野からも婆さんからも切り離された。 二人は孤立のまま、白百合の香の中に封じ込められた――――。』 夏目漱石 それから の、ある場面の描写。 空間と情景の奥ゆかしさが伝わってくる。 物事を隔てるのは物理的な壁だけではない。自然の音や人の心理等様々な要因の影響で、間合いは変化する。 言葉は物事の扉を開く鍵だと思う。 言葉の美しさから生まれる佇まいの美しさがある。