「地域分権」を実現するには中央集権的な内政の進め方そのものを変える必要があると故平松大分県知事も主張されておられ、私もその通りだと思っております。
 では、地方はこのままでいいのかという論点についても様々な議論が現在もあります。ここでは平松氏の構想をご紹介したいと思います。
 
 
 平松氏は1997年初版の「私の日本連合国家論」のなかで「地方分権」を成し遂げるための必要な改革と手順について論じておられます。
 
1.市町村の規模拡大
 その当時の市町村では国や県から権限の委譲を受けるには財政規模も組織も小さすぎるので、昭和の合併の規模を上回る合併を行うべきだと述べられていました。
 これは皆さんもご承知の通り、様々な弊害を伴いながらも平成の合併が行われ、ある程度条件が整ったとみてもいいと思います。
 
2.地方のインフラの整備
 地方分権を進める意義は、それぞれの地域を磨いていくということだとすると、都市部と地方のハンデをあらかじめ埋めておかねばならないという主張です。
 都市部は財政的にも豊かなためにインフラは「整備」から「拡充」に進んでいますが、地方の多くは高速道路網が未整備な地域があり、大きなハンデがあるという主張です。そのハンデを埋めるために道路などのインフラの整備を地方にシフトすべきであるということです。私もいつも思うのですが、鉄道網に至っては明治以来ほとんど手がついていない状況で困ったことだと思っております。
 ベースがそろった状況の中で地域同士が地域の魅力を高めることに注力し、いい意味での競争を行う環境を整えるべきだという考え方です。
 
3.広域の行政府の設立
 故平松氏は県レベルでは大きな意味での地方分権の受け皿としては限界があると感じておられたようです。大分県は北九州での自動車や電機産業を誘致し、世界貿易の拠点となっていますが、この時の経験がそう思わせたのかもしれません。
 最近になって大阪を中心に道州制の構想が発信されて、大いに話題になりました。現在ではちょっと下火になっている気がします。あまりに改革のために調整すべきことが多くて先行きしない感じがあります。
 平松氏はとても現実的な提案をされていました。それは、まずは県があつまり、知事兼任とかではない専任の共同体の首長を選び、各県から数人の議員を選出して、合議制の共同体をつくるべしということです。これをEC(ヨーロッパ共同体)の都道府県版とたとえられています。
 その後、様々な権限移譲をこの共同体に対して行っていきながら、その先に「九州府」を作り「地方分権」ではなくアメリカ的な「州主権」を確立すべきだという議論です。
 
 とても興味深い議論だと思います。
 
 私はいろいろと協議してほしいと思います。とにかく「地方創生」の為には今のやり方では大きな変革は望めない。そして地方にはそれほど時間が残っていないと感じております。