地方に住んでいても大学に行きやすい環境を作るためには果たして学費の免除だけでよいのでしょうか?


 もう一度、進学率の高い場所をご覧ください。



大学進学率地図化


 東京都と京都大阪、そして名古屋などを中心とした大学が多い地域が進学率が高いことに気が付きます。これは学費というよりは自宅から通えることが大きな原因ではないでしょうか。


 そう考えると、大学の進学にとって大きな問題のひとつは学生の生活費なのだと思います。地方に住む私たちでは近くに大学がないので首都圏などの大都市に住む必要があります。これらの地域では賃貸の物件がとても高いだけでなく、飲食費などの生活費用が多大なる負担になると思われます。



 次に大学の学費そのもの高額です。日本は私立大学の比率が高いのです。


私立大学と公立大学の比較

 この通りイギリスとドイツでは国立、州立の大学の数が多く、ほとんどの学生がそれに属しております。大学数では圧倒的に私立の多いアメリカでも学生数になると比率が逆転し、膨大な学生のほとんどを国公立の大学がになっていることが解ります。ちなみにアメリカの私立大学は日本の3倍程度の学費になります。

 それに比して日本では私立の大学が多く、補助金を多く受けながらも高額な学費になっているのです。



 もう一つの問題が大学の東京一極集中です。



都道府県別大学数


 東京が圧倒的に多いことが解ります。しかも国公立はこのうち14しかなく、残りの125は私立大学なのです。全体の大学の約23%を占めます。私立大学は学生の人気の高い東京をはじめとする首都圏に学生を求めてすさまじい勢いで設立したことが解ります。



 わたしが思うに、地方の進学支援と低所得者の支援という意味では国公立大学を地方都市に設立あるいは拡充することが必要なのではないかという点です。学生集めには苦労すると思いますが、有能な教授を招き、研究施設を充実させて学生たちを集め、地方の経済の技術支援にもなり、日本の東京一極集中の流れを緩和することができる効果もあります。現状では地方自治体の財政が困窮していることもあり、公立大学の再編が行われるなど逆の流れになっていますが、歯車を逆転させる必要があるのではないでしょうか。


 もう一つ、学生寮の拡充です。ハーバード大学では99%の大学生が寮生活を行っているようですし、アメリカの大学生活は寮生活が一般的だそうです。日本の場合は国立大学は寮はありますが、それほどのキャバシティーもないのです。東京大学では14,000名の学生数に対し300名の収容人数しかありません。


 そして優秀な生徒への給付型奨学金の創設です。ただし、どの大学でもよいとするのかは別の議論があると思います。研究成果をあげられない、あるいは高度な資格が取れない大学は無効とすべきかもしれません。この点は大いに論議すべきでしょう。


 給付型奨学金だけではすべてをまかなえないので、現状あるローン型給付についても救済策を講じるのも大事です。公的な仕事や高度な資格を一定期間内で取得した学生には返済免除を行うなどの例も諸外国で見られます。これを取り入れるのも一つの方法かもしれません。




 その方法が取れずに給付型奨学金を実施し、地方と都市との大学進学率の格差を埋めるためにはは全国民が税という形で支援するしかないのでしょう。いずれにせよ、短絡的な議論で給付型の奨学金を出すことは税負担も高くなり、受益者はいいとして、税を払う人にとって不満が出ることは予想されます。また、日本にとって大学はどうあるべきなのかもしっかりと議論してほしいと思います。