今、大阪では「大阪都構想」の立案を大阪維新の会の松井大阪府知事と橋下大阪市長を中心的に進めてられており、それに対して大阪府や大阪の市議会において他会派の反対が激しくぶつかっています。それをメディアが本質を詳細に説明することなく、対立だけをあおるように報道を続けております。


 「大阪都構想」については詳細が示されていないので何とも賛否を述べるものではありませんが、地方分権の強化という意味においては非常に興味があるところです。


 いま日本はすさまじい人口減少の時代の入り口に立ち、これまでのような社会の仕組みが成り立たなくなります。今のまま何もせずにこの流れに流されてしまうと、東京一極集中がさらに加速し、そのほかの地域は生活基盤が損なわれ、まさに衰退の一途をたどる危険にさらされてしまいます。


 これは人口ピラミッドのなかでの、子どもを産むことができる年代の人口減少と、未婚率の高さに起因するもので、効果的な政策が打てたとしても人口の回復には数十年かかると思われます。

 人口の増加が見込まれない今、東京以外の地域はそれぞれ力をつけ、長所を伸ばし、魅力的な街づくりに努力しないといけません。さらには、人口減少時代にあっても、市民が安心して暮らせるあらたな仕組みを、低コストで実現しないといけない時代になったのです。


 たとえば人口減少の時代においては、このまま手をこまねいていると、20年後には労働人口は70%未満になり、あらゆる産業で働き手が失われ、企業が成長の推進力を失い、衰退していきます。教育については子どもの人口が40年後には半分になると学校の統合をおこなっても子ども不足が深刻な問題となり、子ども達は野球やサッカーがしたくても人数がそろわない、部活がないという事態になります。学校が統合化されて通学が不便になることで子ども達の為に親世代がその地域から流出し、地域の荒廃が進みます。自治体は地域に取り残されたお年寄りの福祉サービスの為に更に財政負担が増えて行くだけでなく、福祉士の確保にも苦しむことになります。



高齢化社会

 これに対してあらゆる対策を取らねばなりません。たとえば学校においてドイツの様に午前に勉学を行い、午後に複数の学校の生徒を集めてスポーツクラブや芸術学校を運営し、田舎でありながらも子ども達の夢を実現できる環境を整備することも選択肢の一つだと思うのですが、国の制度がそれを許しません。


 農業政策もお隣の養父市が特区として積極的にとりくんでいらっしゃいますが、成功して全国展開される場合は仕組みのみの展開にとどめ、細かな制度は各自治体それぞれの事情もあることですから各所に任せてほしいとおもいます。これは製造業、漁業も同じで、各地域の特色があるので画一的な政策はかえって物事をこじらせる恐れがあります。


 道路や治水についても市の財政的な問題もありますが、ハードの整備についてはあまりに国や県の管轄部分が多く市にとって優先したいものに取り組めないことがあまりに多すぎます。アメリカでは高速道路は州間道路とみなされ道路の管理は州や市にほとんどが任されています。建設に当たっても審議会に連邦政府がオブザーバーで出席する程度となっているようです。道路などは都市と都市を繋ぐネットワークなのですから、ハード整備などはあくまで地方に任せるという姿勢は見習うべきです。


 今、国に求められるのは地方に財源と人材を分け与え、法律の改正を行い、改革の障壁を取り除くことです。また、地方自治体はそれに十分こたえるべく、組織の改編を行い、合理的で能力を十分に発揮する人事制度を築き、力をつけていく必要があります。


 私たち市民もまた、時代の変化を理解し、行政の行うことにしっかりと目を向け、行政任せにするのではなく自分たちでできることは極力自分たちで行い、できないことについては行政にゆだねるという本来の自治体と市民の役割分担の形を取り戻す必要があるのだと思います。


 今、安倍政権は地方の再生に全力で取り組む方針を掲げていただいております。とてもありがたいことですが、これまでなかなか前に進まなかった地方分権ですから安心はできません。今一度これまでの国の地方分権の取り組みについて考察してみたいと思いますし、今ある関西連合についての考察、あるいは身近な北但広域行政事務組合などの広域行政についても考えてみたいと思います。


 今回は暗い話になりましたが、明るい未来を切り開くことは可能です。そのために今から現実に目を向けてしっかりと対処し、夢をもって街づくりを進めることが必要なのです。