王道の転生もの。現生の生活ではあまり活躍する事がない、生きる事が難しい主人公がパラレルワールドに行き、何故かチート機能を持ち大活躍!そんな物語が多い。

 

でもね、私は思うのです。

 

異世界に飛んでも、人は変わる事は出来ないですよ。中々難しい。

新しい環境に直ぐに溶け込み、性格が変わってゆき、活躍できる。チートすぎるでしょ!!

 

これは異世界に飛ばされてもなお、病んでいる精神にしっかりと悩まされて活躍できると言って良いか微妙なラインで主人公が生きる、そんなお話です。

 

 

目が覚める。

直ぐにベッドから起き上がった。

起床して直ぐの状況であるのにも関わらず、物理的に圧力がかかったのでは無いかと思うほど、目を見開いていた。

 

今日のコンディションは・・・・・。

頭の中が冴えている。最近の自分は何でもできる!

なんて素敵な日の始まりだろう。

 

直ぐに窓に近づき、春夏秋冬季節を感じさせる事がない只々重いカーテンを開ける。
カーテンを開いた瞬間、そこまで高く昇っている訳でもない太陽が主人公の私を照らす。

まるでスポットライトのようだ。そう、主人公が劇に登場する時に照らされる、まんまあれ。

 

太陽までもが私の起床をたたえてくれている。
大きく、大袈裟に背伸びをする。

もちろん、「う〜ん」というお約束の掛け声も忘れていない。

 

すると背後から大好きなアーティストの音楽が流れてきた。

振り返ると光る長方形の物から音楽が鳴っている。

 

それを見て、笑顔になりそそくさと長方形の、そう、記述しなくても分かる。携帯です。
携帯のアラームを止める。スヌーズの分も全て止める。With笑顔。

 

携帯の目覚ましに起こされる前に自分から起きる。そんな自分は偉い。少し太ったペンギンが頭の中に登場し、この行動を褒めてくれた。

 

自分の背丈より少しだけ長い姿見の鏡の前に立つ。
自然と笑顔だった。

そのままの笑顔で自分の顔を覗く。

 

寝癖がついている今でもなかなか可愛いかもかも。

 

根拠が無い自信を全身から発しながら居間に移動する。
直ぐに、大好きなモデルの子が飲んでいる1本200円のベットボトルの水をゴクゴク、喉を鳴らしながら飲む。

 

ふう。

さあ、支度しなきゃ。今日はやる事が盛り沢山なのだから!

完璧な一日の始まりだ!

 

 

その12時間後、重ーい足取りでお化粧が崩れた主人公が帰宅した。

体重が重いという訳では無い。

いや、ぽっちゃりではあるが、そういう類の重いでは無い。
気分的な重い。その雰囲気でドアを開け、部屋の中に入った。

カバンを床に落とし、そのままの足で洗面所に行く。
マツエクをしているのでマツエク専用の洗顔料で顔を洗い、鏡をのぞみ込む。

 

うわー、不細工だな。

 

タオルで顔を拭い、そのままシャワーを浴びて夜用の薬を飲み、そのまま重い足取りでベッドルームに向かう。

そして携帯を充電器に差し込み、ベッドに潜り込み明かりを消した。
そのあとは目を開けたママただただ泣く。泣く。泣く。

 

 

 

さて。何故朝と夜でこんなにも様子が異なるのか。
既に異世界に居る、訳ではもちろん無い。
会社で何か憂鬱になる事件が起きたか。

いや、そうでも無い。夜、薬を飲んでいたという記述と序章の出だしがヒント。

私は怪我をしている。

どこか。心。いや、テレビの中の様な可愛い方は辞めよう。

はい、メンタルがあれです、あれ。キングオブコミュ障。豆腐メンタル。

病院にも通っています。

 

ほら、明るく無いでしょ?

 

別に高かったり分厚い壁の方が突破した際に達成感がある!とか言う爽やかな歌手が作る曲の様な意図がある訳ではない。

この様に差別化をしないと他の小説に埋もれてしまうから。

いや、理由は読み進んで行くと分かる。

 

という訳で序章はここまで。

引き続き、「豆腐メンタルのまま異世界に転生したけれども転生先でも豆腐は豆腐のままだったで候。」をお楽しみください。