51.砂漠の野ネズミ・野ウサギ | 手稲山・発寒川からの手紙

手稲山・発寒川からの手紙

北海道の野生動物や自然の状況についてなど手書きの絵などによって詳しくお伝えします。

 中国の万里の長城5000キロメートルの周囲の砂漠で、世界で最大規模の“緑の長城建設”がすすめられています。この砂漠地に植えたポプラなどの樹木がカミキリムシの害やネズミ害を受けました。イスラム教の人たちが住む寧夏(ねいか)という自治区では、それまでに植えた樹木の半数が枯れるという事態が起きました。

 私はこの虫・獣害を防ぐ技術協力のため、この砂漠の町に2年間滞在しました。教は砂漠に棲む野ネズミと野ウサギについて話をします。


 中国の砂漠

 寧夏の砂漠には、夏の間100ミリほどの雨しか降りません。このため、黄河の近くでは川水をポンプで汲み上げ、畑に流す「灌漑農業」が営まれていますが、奥地の砂漠や山岳地では、僅かな雨水に頼るか、空中湿度を抱き込んで育つ砂生植物をさがして羊に食わせるか、厳しい暮らしを余儀なくされています。この地域の砂漠に木を植え、防護林を造り、農地を乾燥と砂嵐から守るのは最も重要な課題です。


 野ネズミ

 砂漠に植えた針葉樹も広葉樹も、木の根元の皮が剥がれ、つぎつぎと枯れました。調べてみるとモグラのような体つきの大型のネズミの仕業でした。ふだん、棲んでいる水辺や凹地から木のそばまで、トンネルを掘って近づいたのです。砂が盛り上がり、筋が残っています。ネズミは天敵に狙われないように行動したものです。

 北海道の野ネズミも、普段は雪と地面との隙間を通って樹木に近づき囓りますが、3月頃の「かたゆき」の上に降った新雪の中をトンネルを掘って移動することもあります。砂漠のネズミも砂を、雪と同じように移動のさい身を隠すために利用することが分かりました。


 野ウサギ

 エゾユキウサギと近縁の野ウサギが砂漠の中を飛び跳ねていました。違うのは雪が降らないので保護色の白い毛変わりがないことです。

 夜な夜な出没して、折角育てた豆や野菜や瓜を荒らしまわっていました。農民は、砂生植物の小枝で編んだ籠を作り、これを植えた苗木の根元に巻いて保護するのですが、ウサギはおかまいなしです。

 遠くの山岳地から野ウサギがやって来れるのは、彼らの足が砂に埋まらないからです。エゾユキウサギと同じく、足指を広げると指の内側に膜と毛が密生して砂に埋まらないようにできています。肉食獣も山から下りてきていることが砂上に残された足跡で見当がつくのですが、ウサギを追いかけても捕まえることは出来ないでしょう。



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