落雷や入山する人たちの火の不始末などで山火事になることがあります。山火事が起きやすいのは、木材を伐りだして明るくなり乾燥した4月頃の森林です。
このような山火事のさい、森に棲む動物たちに火がどんな影響を与えるのか、森林の火入れ作業のさいおこなった実験の話をします。
(1)立木の少ないミヤコザサの生えた平坦地5ヘクタールの周囲に火が外部に漏れないよう防火線をもうけ、風速5メートルの風下から火を付けました。
(2)火入れの前に、内部に生息している3種の野ネズミ200頭ほどを捕らえて個体番号を付け、捕獲地点を記録しておきました。
(3)鎮火を見届けたその夕方から周囲に捕獲器をたくさん仕掛けて、その後記号個体がいなくなるまで捕獲をつづけました。
(4)燃焼中の地表温度は100度以下であり、地中の巣にもぐった野ネズミは焼け死ぬことは全くなかったと思われます。
(5)この結果、地表のササや雑草が焼かれて、体を隠すことのできない野ネズミの殆どが2日ほどの間に周囲に移りこんだことが分かりました。
私が調べたのは、5ヘクタールという小さな面積での「人工的な山火事」実験です。しかも、火力を避けて地下に潜り込める野ネズミに関してのものです。この場所には野ウサギもいたかもしれませんが、この程度の地表植物の燃焼速度では煙をくぐって逃げたように思います。なお、山火事の頻発した昭和30年代は、森林伐採が大規模にすすめられ、伐採跡地が乾燥していました。鬱蒼とと茂った森林は保水力があって春先でも湿っていて山火事が起きにくいのです。また一方、広い面積の森を一度に伐採して、倒木や枝を雑草とともに焼き払う植林方法もしてはいけないことになりました。いま、北海道の森林は、以前より山火事の起きにくい森林になってきていますが、一度山火事が起きると豊かな森林が消失するだけでなく森に棲む動物も棲み場を失い、隣接する住宅地にも危険が及びます。山や森に入る人たちは火の始末をしっかりしてください。