温度調節を施し、栄養のある餌を十分与えた野ネズミを飼育室で育てると、生まれてから2年余りも生存した記録があります。それでは実際の森林ではどれくらいの寿命なのかを知るため、札幌に近い野幌の森林で調べました。
(1)調査地をトドマツ針葉樹林・広葉樹林・針広混交林・ササ地に運びました。面積は合わせて4ヘクタールです。
(2)これらの森林にそれぞれ100個ずつ生け捕り用の金網ワナを、毎月1週間、これを8年間続けました。冬は雪を掘ってワナを仕掛けました。
(3)捕らえたネズミには記号をつけ、性別・体重・繁殖状態・場所を野帳に記録してから放しました。
(4)8年間の調査で、エゾヤチネズミの新個体が2000頭あまり捕獲できました。
(5)これらのネズミの「生命表」(戸籍簿)を作り、生存期間(寿命)を計算したところ、平均寿命(生後1ヵ月後の初捕獲から姿を消すまでの期間)は約4ヵ月でした。
(6)そのほかいろいろな新発見がありました。A:親ネズミの胎児数・出産数から推計して子ネズミは、生後から離乳期までに半数が死亡すること。B:親まで育ってからも8割を越えるネズミが子孫を残すことなく死んでしまうこと。C:タネや草などのネズミの食べ物は森によって異なっており、その森にすむネズミの生息数や寿命と深くかかわっていること。