抑此無苦庵は 孝を勤むべき親もなければ

そもそも この私無苦庵には 孝行する親も居ない


憐むべき子もなし

憐れんだり、可愛い子も居ない


こころは墨に染めねども

わたしの心は、墨色の袈裟を着るほどの僧になろうとは思っていない


髪結ふがむづかしさに

髪を結ぶのが億劫なので


つむりを剃り 手のつかひ不奉公もせず

頭を剃って   手は不自由しないで動くし


足の駕籠かき小物やとはず

まだまだ足も丈夫なので駕籠や使用人は雇わない


七年の病なければ三年の蓮も用ひず

いままで病にもかからず健康なので、百草などの薬草の世話にならない


雲無心にして岫を出るもまたをかし

険しい山間の峰から雲が湧き出てくる光景は、自然の素晴らしさを感じる


詩歌に心なければ月花も苦にならず 

詩や歌に心が無ければ、月や花などにも想いはとどかないだろうが

詩や歌に自分の思いを籠める事が出来る幸福を感じ過ごす事が出来る


寝たき時は昼も寝 起きたき時は夜も起る

寝たい時は昼でも寝て、起きたい時は夜でも起きる

自然と自分の心には逆らわず 有るがまま生きよう


九品蓮台に至らんと思ふ欲心なければ

極楽浄土に往生する気持ちはない


八萬地獄に落つべき罪もなし

萬(よろず)の地獄に落ちる罪もなし


生きるまでいきたらば

天の命ずるままに生きたならば


死ぬるでもあろうかとおもふ

思い残す事無く死ぬだけだと思う



無苦庵の玄関脇に掲げられていたそうです。


下手な注釈付けてしまいましたが


人それぞれ 感じ方が違うと思いますので


慶次郎殿へに想いを籠め


ご自分なりの無苦庵記を訳してみては如何でしょうか!!