横須賀純愛ストーリー(25) | GENのブログ

GENのブログ

どこで咲いても
いつか散る♪

第二十五回

 

 ここで彼女を抱きしめて彼女の要望に応えてやることも、ひとつには誠意ある態度であり「共闘委員会」に好かれる行動であろう。

 しかし、何か決意が削がれるというか、断固、欺瞞的な行動であることは否めず、仁村のように佳世子さんがいながら、別の女とキャッキャッ騒ぐというのは健太郎には抵抗があった。

 せっかく、仏語で手紙を書いたのだから、それは冗談たよ、嘘だよ、遊びだよ、なんて思われたくなくて、やっぱりあれは、巷に雨の降るごとく…一人寂しく濡れて帰ったその孤独がどんなものだったか…

 それは冗談でも、嘘でも、遊びでもないことを貫徹するためにはやはりこの場合は、寸でのところで思い止めなければならない。空手でいう寸止めである。

 これは蘭のために…。

 ところが彼女はすっかりメロメロになったような、覚悟を決めて身を任せているような、怪しげな目つきを輝かせながら寄ってくるのである。

「き、きみは女子高生?」

 健太郎は内心動揺しながら話を振った。

 それがどうした?とでもいうように彼女はただ黙り、しおらしくしていようと努めているのか目をつむりまさしく寄りかかってこようとする。

 はよ、やらんかえ!ぼけ。

 と、まるで言われているような気がして健太郎はますます動揺した。

 しかし、彼女の肩に手をかけるのでもなく、両手をぶらりと垂らしたまま、

「何年生?」

「…」

「毎晩って言ってたけど、ここ長いの?」

「…」

 と、凡そこんな場面にふさわしくない台詞だけが出てくるのだった。

 お前は生活指導部の教師か?

 自分ながら不本意ではあったが、そうしようと決意している以上、ここは誘惑に負けてはいけないと言い聞かせていた。

 彼女は「いいわよ。早く抱きしめてちょうだい」と言うかのように、煌々と輝く静かな芝生を見渡すベンチに、ただ黙って、口を半ば開き、健太郎の唇を待つかのように目をうつろに剥き、しなだれてくる。

 

 遠くで燦々と降り注ぐ太陽の光と…

 青い海のうねりと…

 白いヨットの帆が揺れる…

 東京湾横断セーリングの力強い風と波の音が迫ってくる…

 それだけをしきりに考えて、

 この難局を乗り越えるのだ。

 

 「あ~しかし、よく飲んだなあ。むにゃむにゃ」

 と、再び嘯いて、そして目をつむった。

 

 裏磐梯を駆ける蘭の楽しそうな笑顔が脳裏をかすめた。