第四回
シュピレヒコール!
「安保、はんたーい!原潜、帰れ!」
じぐざくデモは続く。
横須賀・臨海公園に集合した色とりどりのヘルメット。みんな口をタオルで隠し、長い角材を持っぞろぞろと前進した。
「整然と行進しなさい」
しきりにマイクががなっている。
左右を見ると機動隊の群れが挟み撃ちしながら押し寄せてくる。
「お前ら、絶対に手を出すな」
「手を出したら公務執行妨害で持っていかれるからな」
角原さんの声が頭を巡る。
しかしそれに混じって蘭のつりあがった瞳が浮かんでいた。
「ルーチェ」に取り残された健太郎と芹はあれから黙ったまま向かい合っていた。
恐ろしいほどの女同士のエゴを感じた。
「まあ、ぼくとしては信用を失ったようだし…」
「…」
「同じことを言うようだけどこの際、どちらとも付き合わないということで…」
「…」
芹は依然と何も答えないので、健太郎としては何度もハイライトに火をつけ、結局その場でひと箱を空にしてしまった。
(よし、けじめをつける意味でこの際、坊主頭になろう)
健太郎は秘かに決断した。このビートルズのような頭をさっぱり切り落として二人と決別するのだ。
そんなことを考えていると芹は何を思ったのかフフッと微笑んだ。まさか坊主頭を想像したわけじゃあるまい。
彼女はそれからおもむろに、「出ましょ」と言って立ち上がった。