第二回
そもそも木本から先輩なんていわれる筋合いはない。同じ新入生なのに何故自分が先輩になるのか。でも二浪したことを考えれば年上になることは確かだ。ドライヤーで頭を乾かしながら納得した。
さて、健太郎は本日の作戦をもう一度練りなおさねばならなかった。第一に蘭にどう言って謝るかだ。
「やっぱり君と付き合いたい」と言ってはっきりとさせるか、それとも芹とのことはあくまでも内緒にしておくかということである。
それにしても芹がつぶやいた台詞にはドキリとさせられた。三渓園でデートした帰り京急のなかでつり革を握るぼくの体を触りながら「蘭に悪いわ」と言ったのだ。
で、もってやはりこの際、恐らくは蘭はこのことを知っているに違いないとシャワーを浴びながら気付くに至った。なぜなら蘭と芹は友達同士であり、何かと通じ合っている。でないと今日急に「話があるから」と呼び出しを食うはずはない。いよいよ彼女の堪忍袋の緒が切れたのでは。
階下の食堂で数人がざわついているのが耳に入ったが健太郎はそ知らぬ顔をして下駄箱へ進みスリッパを中に入れて靴に履き替えた。
「おい、大門どこへ行く」
三年生の角原さんから声をかけられた。
「ちょっと」
「デートか」
「いや、まあ」
「帰ったら俺の部屋へ来い」
「はい」
急いで玄関を出ると健太郎ただ一目散に駅へと向かった。角原さんの用事はだいたい想像できた。「原潜帰れ!安保破棄!」のデモ要員の話だろう、と思った。