ラララ ラララ ラララ…
ラララ ラララ ラララ…
電話だ。
駿はケイタイを探った。
「何してんのよ」
蘭の声が耳元でしゃべっている。
「今日授業に出なかったでしょう?」
「…」
「深尾くんも言ってたわ。どうするのピアノコンク
ール?」
「?」
「もう明日よ準決勝」
何のことか分からない。
「もしもし、聞いているの」
「…」
「ねえ、もしもし」
そうだ。ぼくは夢を見ていたんだ。
いつも聞こえていた謎の音にとりつかれ今日は夕方
から寝てしまっていたんだ。
駿は時計を見ながら欄に向かって言った。
「寝過ごしちゃって…」
「あのさあ、夢を見ていたんだけど…毎晩奇妙な音
が聞こえてきてさあ…」
「何の話?」
「だから」
言いかけて駿は黙った。それから安心したかのよ
うに「分かったよ、頑張って仕上げにかかるよ」
と欄に返事をした。
駿は起き上がって部屋の窓を見た。
「夢だったんだ」
おもむろにピアノの前に座り鍵盤に触れた。
濁りのない旋律が静かに流れ生まれ変わった音が部
屋を包み始めた。
時計の針は間もなく九時になろうとしていた。
