令和6年3月定例会が開会しました。初日本会議で施政方針を述べました。




施政方針〈冒頭〉

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 令和6年3月議会の開会に当たり、市政運営の所信と基本方針について説明し、市議会並びに市民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。


 本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震では多くの尊い命が奪われました。地震により亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、2ヶ月が経過した現在も避難生活を余儀なくされている方々を始め、被災された全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。被災地の一日も早い復興を心からお祈りいたします。


 昨年5月、新型コロナウィルスの感染症分類が5類になり、社会経済活動が確実に動き出しています。経済活動が活発に動き出したと同時に、様々なモノの価格が上がってきています。ウクライナ情勢や中東の政情不安など、地政学的に不安定な国際情勢もあり、さらには長引く円安などの影響を受け、昨年はコストプッシュに起因するインフレ・物価高に直面し、本市でも多くの産業において厳しい経営環境に置かれた状況が見られました。しかし、今の経済状況は、我が国の経済に四半世紀以上の間染み付いたデフレ経済から脱却するための物価上昇と、それを上回る所得の実現という経済の好循環に向けての段階的な経済状況であり、今後の需要の拡大、デマンドプルによる適度なインフレの経済状況へ向けて本市経済にとっても大切な局面を迎えており、今年がそのような重要な一年になると認識しています。


 国内全体では、経済に明るい兆しが見えつつある一方で、地方は加速する人口減少、少子高齢化という大きな課題が一層大きくのしかかっています。異次元の少子化対策と言われる政府の取組は、児童手当の拡充や高等教育の負担軽減など、今現在、既に子育てに取り組んでおられる皆さんへ向けた施策が中心であり、これから子どもを生み育てようとする若い世代の雇用や所得など経済の視点に物足りなさを感じます。また、令和5年の東京都の「転入超過」が6万8,000人余りで、前年から80%増えていることが総務省公表の数字で明らかとなり、東京一極集中が加速していることも判明しました。そのような中、本市の少子化の実態は、令和2年の年間の出生数が81人となり100人を割り込んで以降、98人、73人、昨年の61人と減少の一途をたどっています。今、申し上げましたが、少子化の根本的な原因は、経済、そして特に若年層の東京一極集中による出生率低下にあり、地域の自治体間で人口の奪い合いをしているような場合ではなく、少子化対策を実効性のあるものにするためには、いかに地方において若者の雇用と所得を創出していくかということが重要な課題となっています。人口の偏在、少子化対策について、なかなか本気度の見えない政府対応には歯がゆいところもありますが、本市としては経済においてしっかりとした軸を作り、若者が定住し、特に若い世代が暮らしを成り立たせることのできる経済環境を構築することが重要だと考えます。新年度施策においても、枕崎漁港を中心とした水産業や水産加工業、その他製造業、農業といった本市の強みを更に強化していく経済関連施策を着実に実行し、少子化対策に資する取組としてまいります。


 昨年、令和4年度のふるさと納税寄付額がその前年から半減したことで、多くの市民の皆様にご心配をおかけすることになりました。本年度は運営委託事業者の公募を行いましたが、計画していた日程での事業者選定には至らず、これまで業務委託してきた中間管理業務を企画調整課で行い、その後、10月末から既存のポータルサイト運営事業者とそれらの業務の委託契約を行いました。本年度の寄付額としましては、1月末時点で約11億円の御寄付を頂いております。御厚意をお寄せいただいた皆様に心から感謝いたします。新年度は企画調整課にふるさと納税業務を担当する係を新たに設置します。今後とも、返礼品協力事業者、そして昨年設置された連絡協議会と連携しながら、新たな推進体制の下、事業の拡大強化に努めてまいります。


 この数年、私たちに大きな影を落としてきた新型コロナ感染症が一定の収束を見た現在、改めて市民の「暮らし」にこだわり、これからの「暮らし」についてしっかりと向き合っていく必要があります。


 南薩地区衛生管理組合の「なんさつECOの杜」の供用開始に伴い、市民の利便性を維持するため、家庭から出る粗大ゴミなどを市民が直接持ち込むことができる中継施設の機能と、内鍋清掃センターのストックヤードを活用した資源ごみの中間処理を行うマテリアルリサイクル推進施設の機能を持つ「内鍋リサイクルセンター」を本年9月から稼働します。


 県下でもいち早く取り組んできた公共下水道事業については、施設の老朽化対策、汚泥処理費用の増大などの課題を抱えていますが、一昨年から市民への広報啓発や事業者との協議を進め、本年4月収納分から事業者に負担していただいている水質料金を含む使用料を改定いたします。今後も市民の生活環境向上へ向け、下水道汚泥の有効活用への取組や施設の更新など一層推進してまいりますので、市民、事業者の皆様の御理解・御協力をよろしくお願いいたします。


 今回の能登半島地震でも明らかとなった半島先端部のインフラの脆弱性、道路網や漁港について、関係課を中心にその強靱性を確認(再点検)することとしています。本市は平成5年に発生した豪雨災害以降、災害に強いまちづくりを推進してまいりましたが、近年の激甚化、頻発化する自然災害等に備え、今後も進行中の土木事業の確実な事業実施と急傾斜地崩壊対策事業や浸水対策事業など必要な事業の可能な限り早期の実施に取り組んでまいります。


 地域の道路整備については、期成会等で要望を続けている地域高規格道路南薩縦貫道の機能強化に取り組んでまいります。また、市民から声の上がっている自動車専用道路の要望について、薩摩半島横断道路など南薩地域の道路整備計画等の進捗状況や更に広域の道路網の整備状況等を俯瞰するなど検討して、その可能性、有用性を研究してまいります。


 火之神地区の環境・景観の保全を目的として火之神公園へのアクセス道路に面した養豚場跡地の整備を昨年から進めていますが、引き続き建物の解体、危険除去に取り組みます。また、峯尾峠から本市を見下ろす景観にも配慮した環境整備を実施するなど、本市全体の景観の向上に継続的に取り組んでいきます。


 昨年11月、JR九州から「JR指宿枕崎線の指宿枕崎間の路線について県や沿線の自治体と将来の地域公共交通のあり方を議論したい。」との発言がありました。これについては、地域公共交通活性化再生法に基づく手続きではなく、存続か廃止かの前提を置かず、未来志向での議論を進めたいとのことであり、1月から事務レベルの勉強会を開催しています。本市としても、沿線市や県と情報を共有し、利用促進を含む路線の活性化に向けて前向きに取り組む考えです。


 JRを含む地域公共交通については、一昨年策定した枕崎市地域公共交通計画を基に、活性化協議会での議論、市民の意見も踏まえながら、あるべき将来像を描いていくこととします。昨年廃止となった金山道野線のバス路線の代替として、乗合タクシーによる実証運行を行なっておりますが、他の地域での施策についても具体化に向け、検討します。また、新年度は交通弱者対策事業のタクシー運賃助成の拡大を行います。


 ただいま申し上げた項目以外においても「市民の幸せの実現」が私たち市役所職員の最優先事項であるという認識を常に持ち続け、市民の「暮らし」に寄り添い、仕事に取り組んでまいります。


 昨年は、城山ホテル鹿児島において11月1日から約1ヶ月半に渡りホテルの各レストランで「ていねい・本物。枕崎フェア」を実施して県内外の多くのお客様に本市産品の味、そのおいしさをお伝えすることができました。また今年1月には「全国鰹節類青年連絡協議会枕崎大会」が鹿児島で開催され、水産加工業の若手経営者の皆様が枕崎の節の魅力、日本のだし文化、鰹節の価値を発信してくださいました。昨年4月には枕崎市漁業協同組合待望の第三冷蔵庫が竣工しました。水産加工業者のHACCPへの取組、茶農家・菊農家の機械・施設整備など、将来へ向けた前向きな投資も見られます。また、今月は枕崎お魚センターのリニューアルも控えています。本市経済に軸をつくるための準備は進められています。新年度のそれぞれの施策を着実に実施していき、その軸を確かなものにしてまいります。


 昨年も申し上げましたが、コロナ禍以降、市民と社会を取り巻く不確実性や変化の速度と複雑さの増大、これらの状況を新しい日常と捉えて、機敏に変化に対応していくことが求められています。私が先頭に立ち、職員の力を総動員して新年度の取組を進めてまいります。



枕崎市長 前田祝成