18年ぶりのアレやな。いや、優勝や。ファンの応援にはほんま感謝しとるし、俺も05年の優勝の喜びとは全然、違う。今までの野球人生で一番楽しく野球ができた1年ちゃうかな、はっきり言うて。

 前回は2軍監督、優勝した03年も1軍コーチを経験しての就任やったから、選手の力量も分かってたし、完成されたチームやった。

 今回は全てが未知数やった。12年にオリックスの監督を辞めてからは評論家で、最近はコロナでグラウンドに下りられへんから、選手と話す機会もなくて性格も知らんかった。

 それでも監督に復帰してから、周囲の期待が大きくなっとることは感じてたわ。でも、心の中では「17年も優勝してないチームやのに、なんで俺が監督になったからってすぐ優勝できんねん。何をそんな簡単に考えとんねん」って思ってたな。

 だから、スタートはほんまに手探りよ。でも、理想の「守りの野球」は変わらん。チームを作る上でまず守備の強化だけを考えた。

 けど、チームに入ると守備への意識はめっちゃ低かったな。佐藤輝は昨秋キャンプの特守が初めてやったらしいわ。おいおいと思ったな、最初は(笑)。

 ポジションを固定して、守備の重要性は伝えてきたし、キャンプから選手が同じポジションで練習できたのも大きかった。手応えを感じ始めたのは開幕後やけど、ほんま良うなったで。木浪はうまくなったなあ。中野もセカンドが向いてたやろ?ゲッツーなんか、前より速なってるわ。

 外野手は二塁打をだいぶん一塁で止めとるで。それは中継への送球が低いから。うちが一番、外野の送球が低いで。相手にシートノックとかで見せといたらストップするわな。

 今年は「普通にやる」ということを言い続けた。記録に表れへんけど、こういうことを「普通に」やれるのは大きい。俺は試合で打つ打たんより、シートノックでゲッツーが上達しとるかなとか、そういうところを見る。そういう意味で、今年は選手の成長が見える楽しみもあったな。

 攻撃で言えば「普通にやる」ことの一つが、ボール球を振らないこと。それで四球が増えたけど、考え方が変われば、こんなに変わるんやな(笑)。開幕前に球団に四球の査定ポイントを上げるようには言うたけど、選手には考え方を伝えただけやで。技術はなかなか変えられへんから。

 印象深いのは開幕3連戦3連勝やな。去年は開幕戦で7点差をひっくり返されてズルズルいったし、開幕の3試合だけはある程度いい形で戦いたかった。

 特に2戦目。延長十二回2死よ。糸原が代打でヒット打った後、小幡が四球でガッツポーズしよったんよ。「ヨッシャー、つないだ」というような。あれを見た時に「あっ、なんかチームとしてええ感じやな」と思った。チームとしての戦い方を分かり始めとるというかな。シーズンの最初は俺が攻撃中にベンチから打席での意識を言うてたけど、今は選手が言うもんな。

 投手は先発なら村上、大竹、伊藤将が大きかった。リリーフはJFKみたいに飛び抜けたのはおらんけど、桟原、橋本、江草、渡辺よりもええ投手がいっぱいおる。敗戦処理がいないぐらいやから。岩崎も一喜一憂せずによう投げてくれたわ。

 村上、桐敷は去年の秋季キャンプからええと感じてたけど、村上はほんますごいで。横から見ても真っすぐが落ちへんもん。大竹と2人は登板間隔を空けたりして負担を減らそうと思ったけど、そんな必要もなかったな。

 桐敷の存在も大きかったわ。フレッシュオールスターで投げてるのを見て、中に入れたけど、ほんま正解やったな。後半戦で勝てだした一因は桐敷よ。

 今年は「みんなで」という言葉もよう使った。佐藤輝を一度2軍落としたけど、あれは打つ打たんが理由じゃない。先発を外した6月25日のDeNAの試合中、ロッカーで座っとったんよ。これはアカンと思うて、26日に抹消した。

 俺がベンチで笑ったりしてることも聞かれるけど、怒ることがないんやもん(笑)。選手が怒られることせえへんし、普通に野球をできてるから。08年を思い出すこともなかった。あの年は朝4時頃まで寝られんかったけど、今年は普通に寝られるしな(笑)。

 だから、これからの阪神は当分、強いで。楽しみな投手がたくさんいてるし、野手も年齢的にこれからの選手が多いしな。毎年優勝争いできるやろう。本当に魅力のあるチームになったな。(阪神タイガース監督)


「認識が変われば、行動が変わる。」の最高のお手本ですね。


枕崎市長 前田祝成