岸田政権の掲げる「異次元の少子化対策」について、毎月届く行政情報の総合誌「時評」に興味深い記事がありました。


本市も少子化対策が人口減少対策の一丁目一番地として令和5年施政方針でも、多くを割いて発表させていただきました。


また、3月議会の一般質問でも本市の少子化対策についての質問をいただいたところです。


雑誌に書かれている内容、共感できるところが多くあったので、抜粋して紹介したいと思います。


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まず、わが国の急速に進む少子化の現状(2022年の年間出生数はこれまでの予測よりも早期に80万人を下回り、合計特殊出生率も1.27程度となる模様)を示した上で、政権の掲げる施策の、①児童手当を中心とした経済支援の拡充、②学童保育や病児保育を含む幼児教育・保育サービスの充実、③キャリアと育児の両立支援に向けた働き方改革や育児休業などの制度拡充、を柱として、関連予算を倍増させて従来の施策を拡充、に対して、「このような旧来の施策を、こども家庭庁の名の下に従来の各府省担当者が寄り集まって続けるのでは、関連予算を倍増させたところで、わが国の少子化傾向を反転させることはできないだろう。」とバッサリ。


子育て支援と少子化対策は、本来的に異なる政策であるとし、現在、子育てをしている方々は、こうした少子化の要因を乗り越えて実際にこどもを生み育てている方々であり、こうした方々への支援はあってしかるべきだが(こども家庭庁への期待もそこにある)、その支援を強化すれば少子化が反転するわけでは必ずしもない、と書かれている。


そして国民生活基礎調査(厚生労働省)によると、わが国の全世帯所得の中央値が440万円(2020年)と、1995年の505万円から四半世紀で大きく減少し、中間層の衰退が恒常的に進んでいることを一番の問題としている。


この中間層の減退という少子化の根本原因に思い至らないようでは、新たな異次元の少子化対策など打ち出せるはずもなく、旧来の子育て支援の拡充や、東京都の打ち出した18歳以下の子どもを対象とした月5千円程度の給付金などでは、少子化は止まらない、と。


さらに、人々の将来に向けた期待という点からは、高齢化が進む中、社会保障負担が現役世代および将来世代に大きくのしかかることがほぼ自明だという問題もあるとの現状認識。


少子化対策では、経済と社会のシステム全体の構造転換を視野に入れた、中間層の復活と社会保障負担の見直しを柱とするものであるべきだであるとし、目先のバラマキや、看板の架け替えでは、明るい未来は切り拓けない、と締めくくっている。


(「時評 2023年3月号」より抜粋、加筆)


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マクロ経済政策を通じて、出産適齢期にある若い男女の雇用を確保し、所得が上がるような流れを作っていくことが必須で、現在の金融緩和の継続、そして財政政策による景気対策が必要不可欠だと思います。


もちろん、子育て支援財源確保のための増税など、あり得ません。


コストプッシュ要因とはいえ、インフレ率上昇のトレンドで失業率が下がり、雇用環境が改善され賃金アップの動きが出ている流れであることは確かで、この中でのマクロ経済政策として財政政策をどう取っていくかが重要になってきます。


このトレンドが地方にどのくらいのスピード感で及ぶのか、地域の経済状況をしっかりと見極めながら、政策に取り組む必要性を感じています。


インフラ整備を含む公共投資や関係人口増による地域経済活性化など、経済的視点を第一に、環境整備という点では、子育て環境の整備にも取り組んでいかなければならないと改めて感じます。


枕崎市長 前田祝成