群馬県前橋市・三夜沢赤城神社主婦失踪事件・その4 | 雑感

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たまに更新。ご覧いただきありがとうございます。(ごく稀にピグとも申請をいただくことがあるのですが、当方ピグはしておりません。申請お受けできず本当にすみません)

三夜沢赤城神社主婦失踪事件

三夜沢赤城神社主婦失踪事件

(1枚目、三夜沢赤城神社をグーグルの衛星画像で見た図。水色のラインは画像に出てなかった道を当方が補足したもの。

2枚目は、1枚目の画像の「御神水」の前から、赤矢印方面(第1駐車場方面)を望んだ図。画像奥が明るく開けているのが見て取れるが、そのあたりが駐車場。水色丸の地点で道は左右に分かれているが、ここを左右どちらにも曲がらず林の中を突っ切って直進すれば、約40mで1枚目の画像のピンクのあたりに出る。いずれにしても、杉木立の中の視界は良好であり、ピンクの位置から拝殿への近道に足を踏み入れたとしても、途中で拝殿の方向を見失うとは思えないのだが・・・。)

 

 

※※ パソコンからご覧の場合で、画像によってはクリックしても十分な大きさにまで拡大されず、画像中の文字その他の細かい部分が見えにくいという場合があります(画像中に細かい説明書きを入れている画像ほどその傾向が強いです)。その場合は、お手数ですが、ご使用のブラウザで、画面表示の拡大率を「125%」「150%」「175%」等に設定して、ご覧いただければと思います※※

 

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 いろいろな説を見てみる(「その3」からの続き)

 

 事件説(北朝鮮の工作員に拉致されたというもの)

 

法子さんは、「せっかくだから賽銭をあげてくる」と言って車を出たが、6分ほどしても帰らなかったので、娘が法子さんを探し始めたという。

 

幼児でもあるまいし、たかが6分帰らなかったといって48歳の女性を探し始めるものだろうかと、妙な気もするが、法子さんは耳に持病があり、低気圧の時期など気分が悪くなって倒れたりするので、娘はそれを心配して早めに探し始めたらしい。(その時間は雨が降っていた)

 

娘が探しに出てすぐに、帽子を目深にかぶった3人組とすれ違ったという。

 

北朝鮮による拉致説は、こうした怪しげな3人組の存在や、法子さんの失踪後に「大阪」「米子」などの局番から無言電話がかかってきた・・・といったあたりからの説かと。

 

この点、拉致が最も頻繁だったとされる1970年代の日本海側ならともかく、1998年の群馬三夜沢という内陸部、しかもゴールデンウィーク中の、ツツジの見ごろを迎えて人出も多い三夜沢赤城神社で、

 

北朝鮮の工作員が、その日、義母の発案でたまたま神社を訪れることになった48歳の(太り気味だったという)千葉県の主婦を拉致するものだろうか、ということを考えてみると、その狙いといい手段といい、いまひとつ想像しにくいと。


 事件説(法子さんは何か見てはならないものを見てしまったため、連れ去られたというもの)

 

林の中でたたずんでいた法子さんの目線の先には、見てはならないものがあった、それを見てしまった法子さんは、見られては困る何者かに連れ去られたのではないか、というもの。

 

法子さんの娘によると、法子さんが失踪直前に駐車場わきの林の中の小道(神社とは反対方向だったという)でたたずんでいるのを目撃したとのことで、「見てはならないものを見たので、連れ去られた」という説は、この法子さんの娘の目撃証言から着想されたのかなと。

 

ただ、連れ去りに遭ったのだとすれば、悲鳴の一つも上げそうな気がするが、悲鳴を聞いたという話は出ていない。

 

また何者かが「見られては困ること」をしていたというにしては、場所的な違和感がある。

 

つまり、法子さんの娘は神社の駐車場で車を降り、そこで赤ちゃんをあやしながら(林の中でたたずむ)法子さんを目撃しており、

 

このことからしても、法子さんがたたずんでいた位置は、林の中のさして奥まった場所とも思われず(駐車場から樹間越しに見える位置)、

 

とするとその時、たたずむ法子さんの目線の先にあった「見られては困るもの」は、他の参拝客にも見られる可能性大だったのではないか(少なくとも法子さんには見られてしまっている)、

 

人目に触れやすいその状況で、いったい誰が「見られては困ること」をしていたのか、しかも「法子さんはそれを見てしまったために連れ去られた」ということなら、

 

その「見られては困ること」は、「もし見られたら目撃者を拉致してでも口封じをしなければならないこと」だったということになり、それは例えば、「死体を埋めていた」だとか、「誰かをレイプ~殺害していた」だとかになるのかもしれないが、

 

そういった重大な犯罪行為を、(雨が降っていたとはいえ)ゴールデンウィークでツツジの見ごろを迎えているさなかの歴史ある神社の駐車場わきの林のそう深くもない場所で、しかも深夜ではなく真っ昼間(正午)に行うものだろうか、

 

そしてまた、それを目撃した主婦を拉致したりするものだろうか、拉致するとしても、あの林の中からどう連れ出すのか・・・といったことを考えてみると、

 

あの日あの時あの場所で、法子さんが何かヤバいものを見てしまい連れ去られたということは、あり得ないとまでは思わないにせよ、可能性としては低いのではないかと。

 

 事件説(林の中で性的暴行目的で襲われ、連れ去られるか殺害されて埋められるかしたというもの)

 

これは、先の「見てはならないものを見てしまい・・・」という説と似ている。

 

先のは、「見てしまった。だから襲われた」のに対し、こちらは、見る見ないに関係なく、はなから性的暴行の意図を持った何者かが、法子さんを言葉巧みに林の奥に誘い出したというパターン。

 

法子さんの娘は、林の中でたたずむ法子さんを見たというが、実はその時、法子さんの目線の先には手招きをする男がいたのだろうとか、

 

その男が法子さんに対して、「人が奥のほうで具合が悪くなって倒れている、手助けしてもらえないか?」等の言葉をかけて、林の奥へと誘導していたのだろうとか、そんな感じで説明される。

 

ただこれに対しても、先の「見てはならないものを見てしまい・・・」の時と、そう変わらない違和感を覚えなくもないのだった。

 

つまり、GWでツツジの見ごろを迎えている三夜沢赤城神社の駐車場わきの林のそう深くもない場所で、真っ昼間(正午)から、強姦魔が稼働しているものだろうかと、

 

悲鳴を聞いたという証言もなく、しかも、狙われたとされるのが48歳の太り気味の主婦ということを考えると、48歳太り気味でもストライクゾーンな人は実は結構いるだろうとは思うが、

 

深夜ひと気のない路上とかではなく、あの時期、あの時間帯にあの場所で・・・ということまで含めて考えると、強姦魔による連れ去り~殺害という線は薄いのではないか、という気がする。

 

画像で見てみた。

 

三夜沢赤城神社主婦失踪事件

 

第1駐車場のピンク丸の地点が法子さんの出発地点であり、例えば法子さんが何らかの理由で黄色矢印のルートで「A地点」へと向かった(途中、黄色のあたりでたたずんでいるのを駐車場から樹間越しに娘が目撃したものと思われる)、

 

そのルート上で何者かに襲われ、刃物を突き付けられる等して、ピンク矢印のルートで「B地点」まで連れていかれ、そこにとめてあった車で連れ去られた(あるいは「B地点」まで行く途中で殺害・遺棄された)、

 

三夜沢赤城神社主婦失踪事件

(B地点を西側から第1駐車場方面に望んだ図。B地点の目の前には待避所があり、秘かに車をとめておける場所ではある)

 

三夜沢赤城神社主婦失踪事件

(B地点を斜め前から。こんな道が通ってはいる)

 

あるいは、法子さんが参拝を済ませ、ふと本殿の東側から「三夜沢のブナ」「オートキャンプ場」へと抜ける山道に足を踏み入れ(水色矢印のルート)、

 

そのルート上で何者かに襲われ、刃物を突き付けられる等して、「オートキャンプ場」まで連れていかれ、そこにとめてあった車で連れ去られた(あるいは、「オートキャンプ場」まで行く途中で殺害・遺棄された)・・・といったことも考えられるが、そんな強姦魔が、あの時期あの場所に出没することの唐突感はやはり否めないかと。

 

 事件説(雨の中、傘を持たず濡れている男に法子さんが親切で傘を差しだし、その男の車まで傘をさして同伴してあげたところ、車に着くや否や男が豹変して、法子さんを車中に引きずり込み、連れ去ったというもの)

 

法子さんの失踪後、親切にも、失踪当日の同じ頃に三夜沢赤城神社で撮影したホームビデオのフィルムをテレビ局に提出した人がいた。

 

そこには、法子さんとも見える人物が男性に傘を差しだすような姿が写りこんでいたが、家族はこの傘を差しだす人物について、法子さんとは別人と確認したという。

 

「法子さんが親切で誰かに傘を差しだし、車まで同伴してあげたところ、車に引きずり込まれたのでは?」という説は、このホームビデオの「傘を差しだす女性」という情報からの着想かと。

 

この場合、「ツツジの名所として名高く、GW中でツツジの見ごろを迎えている歴史ある神社の駐車場で、真っ昼間(正午)に女性を車中に引きずり込んだ」ということになるかと思うが、

 

多くの情報には、「GW中で、神社には沢山の人が訪れていた」とあるものの、車中に引きずり込む瞬間を目撃した者もなければ、悲鳴を聞いたという証言も皆無だった。

 

誰にも目撃されず、悲鳴を聞いた者もないということは、男が車をとめていた駐車場とは、神社からかなり離れたひと気のない駐車場であり、法子さんはそこまで傘をさして同伴してやった、ということになるのだろうか。

 

しかしその場合は、「義母の発案でたまたま寄った神社でたまたま見かけた(おそらくは見ず知らずの)大人の男に傘を差しだし、けっこう離れた駐車場まで傘をさして同伴してやる・・・ということがあるのだろうか?」という疑問があり、

 

「あるかもしれない」とは思うにせよ、無理やり感は否めないのかなと。

 

それとも、その男は法子さんの知人だった、つまり、「千葉県在住の法子さんが、群馬の三夜沢赤城神社で雨に濡れる知人の男と偶然出くわし、傘をさして駐車場まで同伴してやったところ、男が豹変して法子さんを車中に引きずり込んだ」ということなのだろうか。

 

しかし、それもなにかご都合主義的な感じがしないでもない。

 

 事件説(雨の中、傘を持たず濡れている男に法子さんが親切で傘を差しだし、その男の車まで傘をさして同伴してあげたところ、男が「ありがとうございました。雨が降っていますし、奥さんの車まで送りますから、乗ってください」などといって、法子さんを車に乗せ、そのまま連れ去ったというもの)

 

先の、「男が豹変して、法子さんを車中に引きずり込んだ」という説を一部修正したもの。

 

これだと、法子さんをそう無理なく車に乗せることができるかもしれず、その意味では、事件説の中でも違和感の少ないものかもしれない。

 

ただし、たまたま見かけた雨に濡れる大人の男に傘を差しだし、車まで同伴してやるものだろうかという、そこへの違和感は残るかなと。

 

 事件説(駐車場かその付近で車にひかれて、加害者に車に乗せられ連れ去られたというもの)

 

これも、時期が時期、場所が場所だけに(しかも真っ昼間)、駐車場またはその付近の路上で法子さんを轢き、車から降りてその負傷の程度を確認し、連れ去りを決意し、抱え上げて車中に引き込むということをすれば、

 

その一連の流れのどこかで誰かに見られそうな気もするのだが、目撃者なし、遺留品(赤い傘やサンダル等)なしということは、事故から連れ去りの可能性は低いのではないか、という気がする。

 

 事故説(山中に迷い込み、崖から落ちる、穴に落ちる、足をくじいて動けなくなる、突然の心臓発作に見舞われる等したのではないかというもの)

 

あり得るかと。その他、山中では獣に襲われ大怪我をして動けなくなる(出血多量で死亡する)、毒蛇に噛まれて動けなくなるといった状況もある。

 

しかし、山中に迷い込んだのだとすれば、そもそもなぜ山中へと続く道に足を踏み入れたのか、その動機が気になるところかと。

 

 事故説(記憶を失い、どこかに行ったというもの)

 

記憶を失いどこかに行ってしまった場合、行った先で保護される可能性が高いのではないかと思うが、全国ネットのテレビで取り上げられ、これほど話題にされてもなお、「この人が志塚法子さんでは?」という人が現れないということは、

 

「記憶を失い迷い込んだ先が、人里ではなく山中であり、そこで崖から落ちる、穴に落ちる、足をくじいて動けなくなる、突然の心臓発作に見舞われる等してしまった」
「記憶を失い迷い込んだ先が、人里ではあったが、そこの誰かに監禁されてしまった」
「記憶を失い迷い込んだ先で、交通事故に遭い、遺体は隠蔽されてしまった」
「記憶を失い迷い込んだ先で、まったく記憶が戻らなかったか、(本人に悪意はなく)完全な別人格になってしまい(先日『松岡伸矢君では?』と騒がれた三重の『和田竜人』さんのようなパターン)、過去が不明な謎の人物として施設で暮らしている」

 

とかが考えられるだろうか。

 

 UFO連れ去り説

 

これは、赤城山一帯でUFOの目撃情報が多いとか、赤城山にはUFOの基地がある(という噂がある)とか、そういったことから想起された説かと。

 

UFOの着陸基地としては、櫃石(ひついし)のあたりが怪しそうな気もするが、よくわからない。

 

 神隠し説

 

現場が神社であるということ、また痕跡を残さず忽然と消えたというミステリアスな状況から、「神隠し」を連想する人もいるということかと。

 

また三夜沢赤城神社には「神隠し伝説」があるとの話もあり、そういったことも影響しているのかもしれない。

 

ちなみにその三夜沢赤城神社の「神隠し伝説」とはどんなものかとググってみたが、検索不足からか、伝説の中身みたいなものは出てこなかった。

 

ただ、次のような書き込みを見つけたので、参考までに。

 

「宮城村・三夜沢(三夜沢という地名もけっこうヤバイ)の赤城神社  数年前、ここで消えた主婦・・ここには『神隠し伝説』がある。昭和十九年、太平洋戦争の最中、戦争に行った息子の無事を祈願に参拝した高橋という姓の老夫婦が、そのまま行方を絶った、という記録がある。大正時代にも、嫁に行く直前にお参りに行った十八歳の娘が、消息を絶ったという記録もあります。また、この神社はかつて『丑の刻参り』の名所であり、裏手にある杉の巨木の太い幹には、よく『わら人形』が打ち付けられていたという。」(原文ママ)

 

 「そもそも法子さんは赤城神社には来ていない」説

 

法子さんが三夜沢赤城神社に来たこと自体を疑う向きもある。

 

仮に法子さんが赤城神社に来ていなかったとすれば、「来ていた」という証言のすべてが、嘘だということになる。

 

嘘の背景に何があるのかを想像してみると、それは法子さんについての言いにくい事情が・・・、つまり「赤城神社に来た」と言っていた1998年5月3日昼の時点で、すでに死亡していた、殺害されていた、行方不明になっていた(家出していた)等の事情があるのかもしれず、その場合、この失踪騒ぎは、「狂言」あるいは「刑事事件」ということになるのかもしれない。

 

ただ自分的には、これがでっち上げられた失踪話だったとは思えない。

 

「せっかくだからお賽銭(101円)を」であるとか、「赤い傘」「林のわきの近道に入った」「林の中の、神社とは逆方向の場所にたたずんでいた」であるとか、わざとらしくない程度の具体性というのか、リアリティみたいなものを感じる。

 

親族の話に嘘はなく、法子さんは実際に赤城神社に来て失踪したのだろうな、と思う。


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 妄想的結論

 

このあたりで、自分なりの結論を・・・。

 

所持金が101円、補聴器その他、法子さんにとって重要と思われる何かしらの品が持ち出されているという情報なし、サンダル履き、車を出るときに変わった様子なし、駐車場わきの林内の道(なぜか神社とは反対方向)での目撃証言あり・・・、

 

これらを事実と仮定するとして、この失踪事件の真相は、「事故」ではないか、という気がした。(結論)

 

つまり法子さんは心ならずも山中へと迷い込み、崖から落ちる、穴に落ちる、足をくじいて動けなくなる、突然の心臓発作に見舞われる等で命を落としてしまい、捜索によっても遺体が発見されなかった、ということではないかと。

 

ではなぜ、法子さんは山中へと続く道に足を踏み入れたのか? 

 

単に道を間違えて山への道に足を踏み入れたのか、それとも、意図的にその道へと入ったのか、

 

そこが気になるところだったが、この点もすでに興味深い指摘がなされており、それによると、

 

「尿意(便意)をもよおしたから」

 

だというのだった。

 

つまり、山への道に入り込んだのは山中で用を足そうとしたからであり、「せっかくだから賽銭を・・・」は、「用を足すべく車外に出るための口実だった」というのだった。

 

確かに、親族間であっても、その人間関係によっては(特に女性の場合には)、「トイレに行ってくる」と直接的には言いにくい場合もあるのでは、という気がする。

 

そして、「賽銭をあげる」というのが嘘ではない場合、「賽銭を・・・」とだけ言って出れば事足りるのであり、わざわざ「トイレに行ってくる」と断る必要はない、ということもある。

 

しかし、法子さんの主眼はあくまでトイレにあった。

 

自分的にはこの見方に賛同したい。

 

おそらく、車を降りて真っ先に、駐車場内にあるトイレに向かったのではないだろうか。

 

三夜沢赤城神社に来たのが初めてでなければ、トイレの場所はわかっていただろうし、初めてだった場合でも、建物の外観からすぐに察しはついたことと思う。

 

車中で待機していた法子さんの娘や義母は、駐車位置や向きなどの関係から、法子さんがトイレに駆け込んだのが見えなかった。(トイレの入り口は東側を向いている)

 

三夜沢赤城神社主婦失踪事件

三夜沢赤城神社主婦失踪事件

(1枚目、西側から。ピンクは小道の入り口。2枚目は東側---鳥居側---から)

 

トイレに駆け込んだ法子さんは失望した。

 

思いのほか先客が多く、すでに全個室が埋まっていたのである。

 

場合によっては並んでさえいた。

 

神社に来る直前にソフトクリームか何かを食べ、それがあたっておなかがキュルキュル言い出したのかもしれず、法子さんが突如、「賽銭をあげてくる」と車外に出たのは、そんな切迫した事情もあったかもしれない。

 

(お願いだから早くして!)

 

心の中でそう叫びながら並んでいたが、先客がやたらと長かった。

 

1分経っても、2分経っても出てくる様子がなかった。

 

「無理かも、どうしよう・・・」

 

絶望的な気持ちで下腹部に手をやると、柔らかいものが指先に触れた。

 

地獄に仏とはこのことだったろうか?

 

それはポケットに入れていた「ポケットティッシュ」だった。

 

法子さんは直ちに決断した。

 

もと来た方へと踵を返し、駐車場北側の林へと目を向けた。

 

そこには小道の入り口があった。

 

拝殿への近道だったが、入ってすぐの分岐を左折すれば、山中へと続く道でもあった。

 

「奥まで行けるはず・・・」

 

法子さんはその入り口に足を踏み入れた。

 

分岐を左折して、山中への道を辿る。

 

人目につかない茂みはあるだろうかと、途中、立ち止まって前方を見渡してみたかもしれない。

 

あるいは、耳の持病が出て軽い眩暈(めまい)を覚えたため、しばらく立ち止まって様子を見ていたのかもしれず、

 

赤ん坊をあやすために車を降りた法子さんの娘が駐車場から樹間越しに目撃したという母親のたたずむような姿は、この時のものだったのかもしれない。

 

法子さんは林の奥へと足早に歩き続けた。

 

最悪の事態は免れそうだという安心感からか、気づけば尿意(便意)はやや収まっていた。

 

「これならトイレで待てたかも・・・」

 

そんな気もしたが、今さら引き返すことはしなかった。

 

この先がどうなっているのかという、別の興味もわいてきた。

 

途中、左方向への鋭角の曲がり道があったが、そこをやり過ごして直進した。

 

やがて良さげな茂みが目にとまった。

 

立ち止まって前後左右を見回す。

 

人の気配は皆無だった。

 

小道を逸れて、茂みの方へと足を踏み入れた。

 

目的が目的だっただけに、「あとちょっと」「もう少し奥・・・」と、絶対に安全と思える場所まで歩を進めたが、結果的にはその用心深さが仇となったかもしれない。

 

もともと耳の持病のため、そうなりやすい状態でもあった。

 

用を足し、ふと目を上げた時には、方角を失っていたのである。

 

「スーパーにて、、、 突然クルクル目が回って、 しゃがんでしまいました。一瞬にして方向感覚がわからなくなり、、、 自分がどの方向に歩いていたのかもわからなくなりました。最近調子がよかったのに、、、。(後略)」(メニエール病の掲示板より)

 

これと似たことが、法子さんの身に起きたのかもしれなかった。

 

自宅から直線で110km離れた、群馬山中の藪の中でのことだった。

 

冷静でいられたとみるほうが無理があるかもしれない。

 

恐怖と焦りの中で、ともかくも足を前に踏み出すも、それは見当違いの方向だった。

 

傘を閉じ、よろける足取りで藪をかき分けながら進んだ。

 

行けども行けども、もと来た道には突き当らなかった。

 

パニックに陥った法子さんは、やみくもに動き回ってさらなる奥地へと迷い込み、

 

どこかの時点で崖から---とはいえ、そう高いものがあるとも思えないので、崖というよりは2m前後の「段差」かもしれないが---落ちてしまった、

 

あるいは、穴に落ちる、足をくじく、心臓発作が起きるなどして動けなくなってしまい、そのまま還らぬ人となってしまった・・・という流れが考えられた。

 

あるいは、法子さんが車を出た時の経緯について、

 

「法子さんは夫や叔父とともに車を出たのであり、途中、法子さんだけが車に引き返してきて、『賽銭をあげてくる』と101円を手にして再び出て行った。その際、夫や叔父たちが通ったのとは別の、駐車場わきの林の中にある近道へと入っていった」

 

との情報もある。

 

これを前提とし、なおかつ、「法子さんは林の中に用を足しに行った」との見方から考えてみるとすると、

 

「自分だけ車に引き返してきた」という法子さんは、その直前に駐車場内のトイレに行っていたのであり、そこで個室がすべて埋まり、しかも場合によっては並んでいる人がいた、

 

法子さん的には待つのはつらい、すぐに用を足したいと思った、駐車場わきの林の奥に行けばできるだろうと考えたが、ティッシュの持ち合わせがない、そこでいったん車に引き返すことにした、

 

車のドアを開け、「あれ? どうして戻ってきたの?」という表情の娘や義母たちに、

 

「せっかくだからお賽銭をあげてくる。えーと、お賽銭は101円よね・・・」

 

などと言いながら財布の中をまさぐると同時に(賽銭をあげるのは嘘ではないのだから、これはこれでよかった)、バッグから素早くポケットティッシュを取り出して、スカートのポケットに入れ(娘たちは法子さんのこの動きにまでは気づかなかった)、

 

そのまま、夫や叔父が通った鳥居経由のルートとは別の、林の脇の小道にいそいそと入っていった・・・ということが考えられた。

(車に引き返してきた法子さんの主眼は、賽銭ではなくティッシュにあった)

 

いずれにしても、情報によると、警察は10日間で延べ100人あまりで付近一帯を捜索したが、見つけることはできなかったという。

 

しかし、1日平均10人程度を繰り出して、通常業務の合間に神社周辺の藪を申し訳程度に棒でつんつんしただけかもしれず、

 

仮にそうであれば、奥地に迷い込んでしまった法子さんの発見は、到底期待できるものではなかった。

 

ただし、「奥地」とはいえ、「その3」で掲載した3D画像や等高線地図で見た通り、法子さんが道に迷ったと思われる地点からさほど遠くないところで急激に傾斜がきつくなっており、

 

その傾斜を乗り越えてさらに奥地へと進んだとは見ないとすれば、法子さんが倒れてしまった地点は、その急傾斜よりは手前の地点ではないか・・・ということが推測できるかもしれない。

 

三夜沢赤城神社主婦失踪事件

(もし法子さんが、駐車場北側の山中へと続く道で迷い倒れたのだとすれば、その位置は、画像向かって左上の、赤で着色されたあたりの可能性が高いかと思うが、どうだろうか)

 

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以上、目新しい思いつきもないままに、「20年前のちょうどこの時期に起きた失踪事件」ということで取り上げてみたテーマだった。

 

古色蒼然とした趣の神社と雨というモノトーンな感じの背景に、赤い傘、満開のツツジといったとり合わせが(語弊のある言い方ながら)絵的に強く印象に残る失踪事件だと思った。

 

未解決の失踪事件といえば必ずその名の挙がる有名な事件で、取り上げているサイトは多く、その考察も興味深いものが多い。

 

まだの方は、是非そういったサイトを読まれることをお勧めしたい。

 

また、先月末ごろに初回をアップロードした直後のこと、赤城神社について情報を集めようとしたときに、「井の頭事件」の時に紹介させていただいたオカルトクロニクルさんが、近々この三夜沢赤城神社の主婦失踪事件について、現地調査を踏まえ、重要な資料も収集されたうえで記事化されるということを知り、伝聞ベースの妄想でけむに巻くつもりでいた私としては、「やめときゃよかった・・・」と後悔したこともあった。

 

しかしいったんアップロードして途中でやめるわけにもいかず、こうして結論までこぎつけはしたものの、その拠って立つところの怪しさは、如何ともしがたいものがあると。

 

私の記事については眉に唾つけて読んでいただくとして、この事件に関してよく話題に上がる「赤い傘の女性が写ったホームビデオ」、親族の証言、当時の新聞など、重要な資料についての詳細とそれらを踏まえた上での考察は、オカルトクロニクルさんの記事で明らかにされるものと思うので、是非ともそちらをご覧になることをお勧めしたいと思う。