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---------- 12月17日アップロード分↓ ----------
再びこのメモについて、
(このメモ)
これまでの記事で、
「事件現場となった野山で誰かに追われながら書かれたものではない」
「事件現場となった野山で相棒のMさんが暴行を受けているその横で、犯人の目を盗んで書かれたものではない」
「Aさんの自宅で書かれたものではない」
「Aさんの職場やその周辺、通勤路などで誰かに追われながら(あるいはつきまとわれながら)書かれたものではない」
と、あれこれ否定してしまった。
それでは他に何か、このメモの文言に合致する状況を思いつくのか・・・
というと、それも思いつかない。
そこで今回は、すこし違う視点から、このメモを捉えなおしてみようかなと。
「違う視点から・・・」
というのはつまり、これまでのような
「メモの文言に合致する(メモの文言を上手く説明しうる)状況を探し出す」
というやり方を捨てて、
「メモの文言や、それが書かれた経緯そのものを疑ってみる」
ということで、つまりは、何者かがなんらかの目的をもって、
「メモの全部または一部を、捏造したのかもしれない」
という視点からも検討してみる、ということだった。
その線で妄想を膨らませてみるとすると、まず
「誰が捏造したのか」
ということについては、ぱっと思いつくところで、
1. 犯人
2. 警察
この二つかなと思う。
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まず「犯人による捏造」の場合を考えてみると、
筆跡鑑定では、このメモについて「Aさんの筆跡」という結果が一応は出ているようなので、
「犯人自身が筆をとって書いた」
ということはあまり考えられず、おそらく、
「犯人が犯行現場でAさんに命じてメモを書かせた」
という形をとったのかな、と思う。
一連の流れを想像してみると、
まず、Aさんの殺害を決意した犯人は、捜査かく乱のために、Aさんの筆によるメモを捏造することを思いついた。
そこで、被害者のAさんに向かい、
「おい、紙と鉛筆あるか」
と訊いたのだった。
Aさんは震える手でナップサックやポケットをまさぐり、パート先である”いずみや”のレシート(5月21日付)と、鉛筆を取り出した。
当然、そのレシートや鉛筆には、「Aさんの指紋」が付着している。
また、Aさん本人に命じて書かせるのだから、その文字は「Aさんの筆跡」そのものでもあり、捏造文を演出するには、全てにおいて好都合といえた。
「いいか、俺が言う通りに書け」
こう前置きして口述筆記させたのが、例の
「オワレている たすけて下さい この男の人わるい人」
という文章だった・・・
ということになるのかもしれないが、疑問は残る。
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というのは、そもそも犯罪者がこの種のメモを捏造する「動機」は何なのか・・・ということを考えてみると、やはりそれは
「捜査のかく乱」
ということが第一なのかな、と想像する。
捜査をかく乱するのに、事実をあるがままに、正直に書いても仕方がないので、必然的に、捏造文は虚偽まみれの内容になりがちだった。例えば、
・捏造文「家も学校もちょっと休みたいです」 → 事実「家や学校に戻りたいです」
・捏造文「しばらく友達の家です」 → 事実「友達でもなんでもない人に拉致されました」
・捏造文「さがさないでください」 → 事実「一刻も早く探し出してください」
このように、犯人としてはバレバレとは分かっていても、捏造文には、やはり、事実とは違うことを書かざるを得ないものだと思う。
長岡京の事件の場合、例えば、犯人が「被害者の顔見知り」なら、メモには
「見ず知らずの他人に襲われた」
的なことを示唆する一節があってもよさそうだし、逆に、犯人が「被害者の顔見知りではない人物」であれば、メモには、
「顔見知り(知人、友人)に襲われた」
的なことを示唆する一節があってもよさそうなものだった。
ところがこのメモでは、そのあたりが一切触れられていない。
犯人による捏造文というにしては、虚偽の事実を並べて捜査を攪乱しようという意図が、このメモには見えにくいような気がする。
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また、犯人がAさんにこのメモを書かせたのであれば、
「捏造文の中で、自らの性別を明かす」
ということは、しないのではないか、とも思う。
被害女性らの遺体の状況からして、この事件の犯人(のうちの少なくとも一人)は、確実に「男」と思われるが(凄惨な暴力~体液などの遺留物)、
それなら、捏造文の中で、「男」という、自己の性別を明かす言葉を持ち出すことは、普通は避けるのではないかと思う。
ところが、このメモの中には「男の人」という表現が使われており、男である犯人が捏造したにしては、えらく正直に、自己の性別を明かしてしまっているな、という印象だった。
また、「この男の人」という表現については、それが「単独犯」を連想させるところから、
「真実は複数犯による犯行であるところを、単独犯に見せかけるために、あえて”この男の人”という表現を捏造文に盛り込んだ」
と、考えることができるかもしれないが、その場合でも、わざわざ「男」という言葉を持ち出す必要はなく、単に「この人」で十分と思われるところ、
実際のメモでは、「男」という言葉を用いて自己の性別を明かす形になっており、これを、
「犯人みずからがAさんに書かせた」
とするには、違和感を覚えるかなと。
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さらに、この長岡京の事件では、「その1」の記事でも紹介した通り、
「メモを書くのに使用されたとみられる鉛筆が、発見されていない」
のだった。
メモが犯人による捏造ならば、犯人としては、「鉛筆(Aさんの指紋付き)」もまた、Aさんの遺体の横に転がしておくか、あるいは、Aさんのナップサックの中にでも入れておくのではないかと思うのだが、どうだろうか。
しかし、現場から鉛筆はついに出てこず、そのかわりに、警察の徹底捜索によって、Mさんの遺体から南に約17メートル離れた土砂からふるいに引っかかって姿を現したのが、なんと、
「鉛筆の芯のみ(先っぽの部分、長さ約1センチ)」
というのだった。
「鉛筆は犯人が持参していたものであり、そこには犯人の指紋も付いていたので、やむなく鉛筆本体は持ち去り、折れた芯だけを現場に放置したのだろう」
という見方もできるかもしれないが、しかし、「体毛」から「体液」から「凶器の文化包丁(指紋の付着無し)」まで、全て現場に打ち捨てて逃走している犯人が、
「鉛筆だけは持って逃げた」
というのも、現実的とは思えない。
Aさんに鉛筆でメモを書かせれば、その鉛筆にはAさんの指紋が付着する。
その「Aさんの指紋が付着した鉛筆」がメモの発見現場に転がっていれば、
「このメモは、この現場でAさん本人が書いたもので、間違いないだろう」
という強い推定が働く。
とすれば、「Aさんの指紋が付着した鉛筆」というのは、捏造の舞台演出には欠かせない、いわば、「捏造のキモとなる物品」といえた。
仮にもし、犯人がメモを捏造したのであれば、せっかくの「捏造のキモとなる物品」を現場から持ち去ってしまうとは考えにくく、
むしろ、これ見よがしに、遺体の横にでも転がしておくのではないかと思うのだが・・・
鉛筆は、ついに発見されることはなかった。
「Aさんの指紋が付いた鉛筆が、発見されていない」
この事実は、「犯人がメモを捏造した」ということの逆を指し示す、証左の一つではないか、と思う。
(「メモは鉛筆で書かれたのではなく、発見されたあの長さ約1センチの”芯”で書かれたのだ。鉛筆本体は初めから存在しなかった」・・・という見方もできるかもしれないが、しかし、山中で犯人の脅威に怯えつつ、指先に1センチの「芯」をつまみながら、薄い紙片に下敷き無しであのメモの文字は書けない、と私は思うので、
「芯をつまんで書いた」
「鉛筆本体は、初めから存在しなかった」
という可能性については、ここでは検討しません。)
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また、これを言ってはお終いかもしれないが、犯人がAさんに命じてこのメモを書かせた場合でも、
「舞台は山の中」
ということに変わりはなく、
そこにはおそらく、机も下敷きもなかったと思われるから、結局は、薄い紙片(レシート)に下敷き無し、体も手も震えが止まらない・・・かどうかは別としても、極度の緊張状態の中で筆を走らせた可能性が高いと思うが、そうなると、
果たしてこの字を書けるのか・・・
という疑問が、やはり生じてしまう。
率直に言って、無理だろうと思う。
(指先に1センチの芯をつまんで書く場合なら、なおさら無理だと思う。)
なので、
「犯人が、Aさんに命じてメモを書かせた(犯人による捏造)」
という見方は、自分は採らないことにしたい。
---------- 12月19日追記分↓ ----------
とすれば残るは
「警察による捏造」
の可能性だろうか。
「警察がそんなことをするはずがない」
そう思いたくはあるものの、しかし、現実問題として警察も無謬(むびゅう)の組織ではなく、例えば、
「袴田事件」「三億円事件」「足利事件」
等々での、警察の具体的な所業をここにあげつらうまでもなく、
「警察」
「不祥事」
「証拠」
「捏造」
「隠蔽」
「裏金」
「冤罪」
等々のワードで検索すれば、枚挙にいとまがないほどの不都合な先例が出てくるとか、
あるいは、警察の身内や政治家、有力者などの犯罪には甘く、
事件性の濃いものであっても
「事件性なし~自殺」
で片づけがちだとか、
とにかく現実には、警察もその他の組織と同じく無謬とは程遠い存在と思われるので、ここは、「話半分」「可能性の一つ」として、
「警察による捏造」
という線からも、妄想してみることをお許しいただきたいと思う。
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さて警察が捏造するにしても、その時点で、Aさんはすでに故人となっているわけだから、
「Aさんに命じて書かせる(全文が本人の筆跡になり好都合)」
という手を使うことはできない(当然だが)。
とすれば、捏造のやり方としては、
「捏造者自らが、Aさんの日記・業務日誌・手紙のたぐいを押収してAさんの筆跡を研究し、その筆跡を模倣しながら、全文を自分で書く(全部捏造)」
か、あるいは、
「”Aさんの筆跡のある紙”を入手し、その文章に、Aさんの筆跡を模倣しつつ改ざんを加えて、捏造文を完成させる(一部捏造~改ざん)」
この二通りがあるかと思うが、この事件の場合は、たぶん後者だと思う。
単にこのメモの仕上がり具合の奇妙さを見た上での、独断と偏見に過ぎないが。
奇妙さ、というのは例えば、
黄色と赤色の部分、そして3行目における、「丁寧さ」「文字の大きさ」「字間」「縦のラインのぶれ」、
そして、(画像中の文字の濃淡に着目すれば)「筆圧」ということにおける、バラバラ感~不統一感にある。
同一人が同一時に書いたものとは、自分には思えず、
むしろ、もともとあった文章に他人が付け加えたり、一部を消して書き直すなど、手を加えて改ざんしたもののように思え、
単に思い込みにすぎないかもしれないが、泡沫ブログにおけるたわごとでもあり、特に差し支えはないと思うので、
「あくまで、可能性の一つ(多分に妄想)」
と前置きしたうえで、
以下、この方向で話を進めてみたい。
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「Aさん本人の筆による文章を、一部改ざんする」
警察がこの方法でメモを捏造した場合、捏造メモが完成するまでの一連の流れとしては、どのようなものが考えられるだろうか・・・ということを想像してみると、
まず、さんざん既出の通り、この紙はAさんのパート先、「いずみや」のレシートなのであった(5月21日付)。
とすると、Aさんはおそらく同僚への業務上か何かの他愛のないメッセージを、実際に、このレシート裏面に書いたのだと思う。
書いた場所は、おそらく職場(いずみや)だった。
そこには机もあり、落ち着いていたので、丁寧な字も書けた。
Aさんは何らかの理由で、そのメモをジーパンのポケットか、ナップサックにしまったと思う。
(おそらく事件日、5月23日午前の勤務中?)
たかがこんな紙きれをごみ箱に捨てずに、ポケットかナップサックにしまったのだとすれば、このメモは、まだ使う予定があったのかもしれない。
ともあれ、その状態で、AさんはMさんを伴い、「河陽が丘」裏の里山である「野山(標高約230メートル)」にワラビ採りに赴き、危難に遭った。
(5月23日正午過ぎ)
このあたりの様子は、「その1」の記事に、わりと詳し目に記載させていただいた。
家族や警察はもとより、地元消防団、警察犬3頭も動員した捜索の結果、
5月25日の午前10時半ごろ、AさんとMさんの遺体が、「野山」山頂付近の雑木林で発見された。
Aさんが認(したた)めていた「レシート裏面のメモ」が捜査員の目に触れたのは、当然ながら、遺体発見後の、極めて早い段階だったと思う。(5月25日中)
「メモは、Aさんのジーパン右ポケットから出てきた」
警察はそう言っている。
実際は、ポケットではなくナップサックとかから出てきた可能性もあると思うが、どちらでも構わないので、ここは警察の言う通り、
「ジーパンの右ポケットから出てきた」
ということで話を進めたい。
押さえておきたいのは、ここで捜査員の前に現れたメモの内容というのは、
単にAさんが職場で(おそらくは同僚向けに)書いただけの、他愛のないメッセージか何かだった、ということだった。
ありきたりな文面だったのであり、後に有名になったような、不気味な文面ではなかった。
改ざんされる前の、それがメモの真の内容だった。
(5月25日、遺体発見直後の段階)
内容的には何の変哲もないメモだったが、しかしそれは、
「Aさんの筆跡」
「Aさんの指紋の付着」
この二つを兼ね備えていた。
捏造のベースとしては、最適のシロモノといえた。
その後(5月25日の遺体発見以降)の展開を見ると・・・
中日新聞の5月28日(月)夕刊で、Aさんのジーパン右ポケットから、得体の知れない不気味なメモが発見された、と報じられている。
部分的に省略したものを引用したい。
(前に一度引用したものでもあり、既にご存じの方は、読み飛ばしてください)
「京都府警の向日町署捜査本部は28日、Aさんの遺体のジーパンのポケットから”オワレている たすけて下さい この男の人はわるい人です”とスーパーのレシートに走り書きしたメモを発見した。
このメモは、あお向けになって殺害されていたAさんの薄青色のジーパンの右ポケットにくしゃくしゃに丸めて残っていた。
パート先の”いずみや長岡店”のレシート(5月21日の日付)の裏にエンピツで書かれており、筆跡鑑定の結果、Aさんの文字とわかった。
捜査本部ではAさんはレシートを手のひらに隠すようにしながら、急いで書いたものとみている。
捜査本部では、二人の主婦が同一現場でほぼ同時に殺害されているとの状況から、犯人は単独か複数犯なのか決めかねていたが、Aさんが助けを求める”メモ”を書く時間とスキがあったことから、犯人は一人で、(中略)Aさんにも肋骨を9本も折るなどの暴行を加えたうえ、首を絞めて殺したと断定した。」
記事によると、
「向日町署捜査本部は28日・・・メモを発見した」(下線部)
とあるが、(この中日新聞の記事が、どれだけ正確に警察のリークを伝えているかは別として)
この時点で、すでに茶番めいているように思う。
25日午前10時半に遺体で発見されたAさんの「ジーパン右ポケットに入っていたメモ」が、その3日後の28日になってようやく発見されたとは、さすがに思えず、
「メモは、遺体発見直後の25日中には、警察によって発見されていた」
と考えるのが妥当だと思う。
「仮にこのメモ(オワレている・・・)が、警察による捏造だったなら・・・」
と、再び前置きしての妄想だが、
5月25日午前の遺体発見時にはおそらく「他愛のない内容のメモ」だったものが、
5月28日に警察が「こんなメモが出てきたよ」とメディアにリークした時には、
「オワレている・・・」
という不気味な文面に、その姿を変じていたことになる。
とすれば、5月25日~5月28日の約3日の間に、警察の側に、捏造文書の作成を決意し、それを実行しなければならない、何らかの事情が生じたのかもしれない。
「あのメモを、ちょっと改ざんすればいいじゃないか」
「あれには、Aさんの指紋も付いていることだし・・・」
捏造の発案者はそう思いながら、捜査名目で押収したAさんの日記やら、業務日誌、手紙、ノートなどをめくりつつ、そこに記された「Aさんの筆跡」を、まじまじと見ていた。
練習のために、ちょっと書いてみたりもしたのである。
そして、おもむろに鉛筆を手に取るとメモに向かい、ある部分は付け加え、ある部分は大胆にも消しゴムで消したうえで、別の文字に改ざんした。
怪文書らしく、カタカナを交えてみたのは職業柄だったろうか。
泡食って書いたかのように、誤字を混ぜ、あるいは、走り書き風にもしてみた。
無理矢理な字句の継ぎ接ぎ(つぎはぎ)の結果、捏造文は、
「オワレている たすけて下さい この男の人わるい人」
という、いま一つ状況を想像しにくい、
得体の知れない、不気味な文章に仕上がった・・・
という流れではなかったか、と想像する。
(ある隠された意図のもとに無理矢理な手を加えた結果、異様な外観の文章に仕上がった・・・という点では、加茂前ゆきちゃん「カアイソウ」の怪文書に、状況が似ているかもしれない、と思う。)



