京都長岡京ワラビ採り主婦殺人事件・その3(メモの件続き) | 雑感

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---------- 12月6日アップロード分↓ ----------

 

 

さてこの問題のメモについて

 

長岡京ワラビ採り殺人事件1_8

(問題のメモ)

 

当時の捜査本部がどういう見方をしていたのか、統一的な見解があったのか、なかったのか、あったとして、それはどういうものだったのか・・・ということについては、今となってはわかりにくい。

 

しかし、当時の新聞記事に、そのあたりを垣間見ることができるので、以下、紹介してみたい。

 

中日新聞1979年5月28日(月)夕刊

「京都府長岡京市の山中でワラビ採りにきていた近くの主婦、Aさん(43)、Mさん(32)の二人が殺害された事件で、京都府警の向日町署捜査本部は28日、Aさんの遺体のジーパンのポケットから
”オワレている たすけて下さい この男の人はわるい人です”
とスーパーのレシートに走り書きしたメモを発見した。
このメモは、あお向けになって殺害されていたAさんの薄青色のジーパンの右ポケットにくしゃくしゃに丸めて残っていた。
パート先の”いずみや長岡店”のレシート(幅4.5センチ、長さ9.5センチ、5月21日の日付)の裏にエンピツで書かれており、筆跡鑑定の結果、Aさんの文字とわかった。
タテ書きで3行にわたっていたが、ひらかな、片かな、漢字が混じり、字は乱れていた。
また、”たすけて”の”す”の字は”く”の上に二重書きしたうえ、さらに”す”と書き加えている。
こうしたことから、捜査本部ではAさんはレシートを手のひらに隠すようにしながら、急いで書いたものとみている
また、メモの内容などからAさんは犯人がMさんに包丁を突きつけながら乱暴しているあいだに走り書き。いったんポケットにしまい込み、助けを求めるためどこかへ捨てる機会をうかがっていて襲われ殺害されたとみている。

捜査本部では、二人の主婦が同一現場でほぼ同時に殺害されているとの状況から、犯人は単独か複数犯なのか決めかねていたが、Aさんが助けを求める”メモ”を書く時間とスキがあったことから、犯人は一人で、まずMさんに包丁を突きつけ、Aさんに”逃げたら、こいつ(Mさん)を殺すぞ”と脅しながら、Mさんに乱暴して殺害。

このあと、恐怖のあまり現場に座り込んでいたAさんにも、肋骨を9本も折るなどの暴行を加えたうえ、首を絞めて殺したと断定した。」

 

この記事にある警察の見解を、かいつまんで言えば、

 

「被害者であるAさんは、犯人がMさんに乱暴している横で、犯人の目を盗みつつメモを書いた」

 

ということらしかった。

 

しかも、その書いたメモの内容というのが、ご存知の通り、

 

「オワレている たすけて下さい この男の人わるい人」

 

なのだから、警察の見立てによると、Aさんはこの修羅場的状況から逃走することを目論んでおり、逃走した結果、激昂した犯人(男)が追いかけてくるだろうから

 

「オワレている」

 

状況になるであろうことをあらかじめ見越した上でこの文面(オワレている~この男の人・・・)に決定したのであり、しかも

 

「助けを求めるため、(そのメモを)どこかへ捨てる機会をうかがっていた」

 

というのだった。

 

切迫した状況で書かれたかもしれないメモの内容の整合性を論じるのは、野暮かも・・・ということは承知の上で、あえて上の警察の筋読みを前提として考えてみると、

 

まず、自分(Aさん)が現場から脱兎の如く逃げ出せば必ず追跡してくるであろう男を称して

 

「この男の人」

 

としたことへの違和感は禁じ得ないし、また

 

「助けを求めるため、(メモを)どこかへ捨てる機会をうかがっていた」

 

という点についても、こんな文面のメモが山道のどこかに落ちていたとしても、拾った側には

 

「オワレている?」

「この男の人??」

 

と意味不明で、役には立たないのではないかと思う。

 

また、「捨てる機会をうかがっていた」とあるが、どこに捨てる予定だったのだろう?

 

捨てても、後ろから追跡してくる男に、拾われてしまうと思うのだが。

 

それとも、男にメモを拾う機会も与えないほどに、男を(距離的に)引き離す予定だったのだろうか。

 

しかし、それならなぜ、遥か後方に引き離す予定だった男を称して

 

「この男の人」

 

としたのか、という問題が再浮上してくる。

 

また、そもそも警察の言うような、

 

「現場からの逃走を目論んで、あらかじめ助けを求めるメモを書いておく」

 

という発想が一般的ではなく、そんな回りくどいことをするくらいなら、

 

「逃走の最中に運よく出会った人に駆け寄って、口頭で助けを求めればよいのではないか」

 

と思えてしまうという問題は、一つ前の記事で指摘した点と、なんら変わらない。

さらに、

 

「メモを書く」

 

という、文字にすればたった5文字の簡単そうな行為も、実際は、いくつかの動作の組み合わせであって、それなりに手間のかかるものだ、ということも、一つ前の記事で触れたとおりだった。

 

その手間のかかる行為を、警察が言うように、

 

「Mさんが激しく暴行されているその横で、犯人の目を盗みつつ」

 

行い得たのかどうか、ということについては、その光景を詳細に想像しつつ、考えてみる必要があるのではないかと思う。

 

そこで、警察のいう筋書きの内容を、より細かく具体的に想像してみると、

 

「犯人は、Mさんに刃物を突きつけ、強姦を試みようとしたが、Mさんはそれに激しく抵抗し、暴れ、泣き喚いた。怒った犯人は、Mさんを大人しくさせるために1発、2発・・・と拳や脚で殴打を加えていくが、Mさんのパニックは収まらず、なかなか大人しくならないため、苛立った犯人は、時に怒声を発しつつ、ますます激しい殴打を加えていった(最終的に50発)。

その修羅場を横で見ていたAさんは、その場から逃走することを思いつき、逃げる途中の山道にメモを捨てて助けを求めるべく、密かにナップサックを手元に引き寄せ、口のひもを緩め、手を突っ込んで中をまさぐり、鉛筆を取り出した。

紙を探したが、メモ帳のたぐいがなかったので、慌ててポケットをまさぐってみると、21日付のいずみやのレシートが出てきた。

Aさんは、そのレシートを左の手のひらの上に直置きし、右手に鉛筆を構え、書くべき文章をちょっと考えたのちに、

”オワレている

たすけて下さい

この男の人わるい人”

という3行のメモを書いたが、2行目の”す”の字を書き間違えたので、その横に正しく”す”と書き足しておいた。そして、いったんそのメモを、右ポケットの中にしまい込んだ。」

 

ということになるだろうか。

 

このAさんの一連の動作の所要時間は、一つ前の記事でも触れた通り、

 

「ナップサックに手を伸ばしてから、書きあがったメモを右ポケットにしまい込む」

 

まで、急ぎ気味にやって「約40秒」はかかったと思う。

 

個人的な感想としては、これら一連の動作を「約40秒」でできればいい方で、実際には、犯人の目を盗みながら、そーーっとナップサックに手を伸ばし、そーーっと中をまさぐって鉛筆を取り出し、

 

「見つからないか、見つからないか・・・」

 

と犯人をチラ見しながらやるのだろうから、所要時間40秒では済まないのではないかと思うし、

そもそも女性がこの状況に置かれたら、体の震えが止まらず、あるいは逆に、魂が抜けた人形のようにぐったりしてしまい、こっそりとナップサックに手を伸ばして鉛筆を取り出し、40秒以上かけてメモを書くどころではないのではないか・・・

 

という風にも思えるのだが(女性の読者の方、おられましたら、どうでしょうか?)、しかし警察の見立てによると、

 

「Aさんは、刃物を振りかざし猛り狂う犯人と、ジーパンや下着をむしり取られ、50カ所もの殴打を加えられ泣き叫ぶ被害者Mさんの隣で、鉛筆とレシートを取り出し、手のひらの上にレシートを直置きし、こっそりメモを書いた」

 

という筋読みになっており、しかもその筆跡というのが

 

長岡京ワラビ採り主婦殺人事件C

 

これだというのだから、

実際に手のひらの上に薄手の紙片を置いて(静止した状態で)字を書いてみて、「いつになく、明らかに乱れた筆跡」になってしまった自分(ブログ筆者)としては、このメモの筆跡には、ちょっと承服できないというか、

自分にできないからといって決めつけるのはよくないかもしれないが、Aさんが置かれていた修羅場のことも考え合わせると、その状況でこの筆跡は

 

「100%有り得ない」

 

とまでは言わないが、

 

「ほぼ、無いだろう」

 

くらいには、思えてくるのだった。

 

この赤で着色した部分は、警察によると

 

「下敷き無しの、手のひら直置き、修羅場での走り書き」

 

にもかかわらず、あたかも、「下敷き」か「机」のたぐいの上で書かれたかのように、縦のラインに乱れはなく、

字間も、ほぼ一定間隔でゆったりめにとられており、

 

長岡京_ワラビ採り主婦殺人事件

 

達筆とは言えないまでも、(主観だが)丁寧とは思える筆跡であり、

 

「丁寧に見えるのは赤い部分だけではないか」

 

という見方もあるかもしれないが、しかし、赤い部分だけでもこうまで丁寧に書かれている、という事実が重要に思えるので、

私としては当時の捜査本部がリークしたような、

 

「Aさんは、刃物を振りかざし猛り狂う犯人と、ジーパンや下着をむしり取られ50カ所もの殴打を加えられ泣き叫ぶ被害者Mさんの隣で、鉛筆とレシートを取り出し、手のひらの上にレシートを直置きし、こっそりメモを走り書きした」

 

という見方には賛同できない、

 

というのが率直なところだった。

 

 

---------- 12月12日追記分↓ ----------

 

 

なので、自分的にはこのメモについて、

 

「山中で、誰かにオワレ(追われ)ている状況で書かれた」

 

とか、

 

「Mさんが暴行を受けているその横で、犯人の目を盗んで書かれた」

 

とかの見方には立たずに、考えを進めてみたい。

 

そもそも、山で男に追いかけられたり、

あるいは、凄惨な暴力を目の当たりにしている状況の中で、

 

「紙と鉛筆を取り出して、助けを求めるメモを書く」

 

という行為に出るものなのかどうか、

その光景への違和感は、いかんともしがたいものがあった。

 

同様に感じる人はいるようで、

 

例えば、元警視庁捜査一課長で、プロファイラーとしても名高いあの田宮榮一氏も

 

「ワラビ採りに行くのに、鉛筆持って行くか」

「犯人の目を盗んで、メモなんて書けるか」

 

等々の疑問を呈しつつ、結論として、

 

「(事件の日よりも)以前に、いぶかしい者に出会ったときにメモしたものとはいえないだろうか(原文ママ)」

 

という見解を示しておられる。

(事件を取材した塩見拓也氏のレポートを参照させていただいた。)

 

このメモが、果たして田宮氏の仰るように

 

「いぶかしい者に出会ったとき」

 

に書かれたかどうかは別として、

 

「事件のあった5月23日よりも以前に、殺害現場となった野山以外のどこかで書かれたのではないか」

 

という、その部分については同意だった。

(メモを書くのに利用された紙〈いずみやのレシート〉は、5月21日の日付。Aさん自身が買い物をした時に出たレシートなのか、それとも、他人が買い物をした時に出たレシートなのか、そのあたりは明らかにされていない。)

 

さて、

 

「野山以外のどこかで書かれた」

 

とすると、それは一体どこなのか・・・

 

という点については、あまりトリッキーに考えるのは苦手なので、

ありきたりなところで、

 

「自宅か、職場(通勤路)」

 

でいいんじゃないかと思う。

 

でも自宅なら

 

「家族相手にメモを書いて、筆談しようとした」

 

というのも変な話なので、あるとすれば

 

「家族相手に”書き置き”をした」

 

ということだろうか。

 

しかし、「家族相手の書き置き」なら、

 

「レシートの裏には書かないんじゃないか」

「メモ用紙くらいは用意するんじゃないか」

 

という気もする。

 

なので、ここは「自宅」というよりも、

むしろ、「職場(通勤路)」で書かれた可能性のほうが高いんじゃないかなと。

 

ここで「職場」とは、長岡天神駅近くにある、スーパー「いずみや(現イズミヤ)」だった。

 

AさんとMさんはそこで、午前6時~午前10時までの間(開店前)に、生鮮食料品を売り場に並べるパートタイマーをしていた。

 

とすれば、職場の同僚へのちょっとしたメッセージを書き置きするのに、いずみやのレシート(裏面)を利用したとしても、違和感はないように思う。

 

問題はそのメモの内容だった。

 

「オワレている たすけて下さい この男の人わるい人」

 

どう見ても、職場の同僚への業務上の書き置きには見えない。

 

明らかに、急迫性を帯びた、助けを求めるメッセージに見える。

 

こんな内容のメッセージを、職場~通勤路で書くとは、どういう状況が考えられるのだろうか・・・、

ということを考えてみると、例えば、

 

「職場か通勤路で変質者に追いかけられ、その時に助けを求めるメモを書き、ジーパンの右ポケットに入れたままにしていた」

 

といったところだろうか。

 

いずみやでのAさんの勤務は、開店前の朝6時~10時までの4時間、生鮮食料品を売り場に並べる業務なので、

その職場(売り場)で変質者に追いかけられるとは、ちょっと考えにくいので、追いかけられたとすれば、職場周辺の路上とか、通勤路かなと。

 

しかし、たとえ山中ではなく、職場周辺や通勤路のアスファルトの路上だろうと、また走りながらであろうと、歩きながらであろうと、立ち止まった状態であろうと、

 

「誰かに追われるという状況の中で、薄い紙片に下敷きなしで、あのメモの文字を書くのは、まず無理」

 

と、(決めつけかもしれないが)自分は思うのであり、

 

さらに言えば、悪い男に追われて誰かに助けを求めたいのであれば、

 

「通りすがりの人に向かって、大声で助けを求める」

「通りすがりの人に駆け寄って、耳元で囁く」

 

などして、口頭で助けを求めれば済むはずなのに、

わざわざ紙と鉛筆を取り出し、助けを求める文章を書く(しかも2行目の誤字はしっかり訂正)、という行為に出る女性が、果たして本当にいるものなのか・・・

 

という根本的な疑問は拭い難く、この点は、舞台が「山中」であろうと「通勤路」であろうと、なんら変わらない。

 

何か月前だったか、大阪府八尾市で、ナイフ男に追いかけられる女子高生の姿が防犯カメラに捉えられ、それがテレビで報道されたことがあった。

女子高生には「助けを求めるメモ」を書き始める様子はなく、筆談でやりたそうな雰囲気はなく、

むしろ、悲鳴を上げながら、全力で逃げていた。

 

男に追われたときの、あれが普通の姿だと思う。

 

なので自分としては、長岡京のこの問題のメモが

 

「Aさんの職場やその周辺、通勤路などで、男に追われながら書かれたものだ」

 

という風にも思えないのだった。

 

 

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これに対して、

 

Aさんは「オワレ(追われ)」ていたのではなく、

(語弊のある言い方だが)もう少し穏当に、「つきまとわれて」いたのだ・・・、

とする見方もあるかもしれない。

 

つまりAさんは、平素からストーカーによるつきまといの被害にあっており、

 

5月21日ごろ、ついに身の危険を感じたAさんは、誰かに助けを求めることを決心し、同日付のレシートの裏に例のメッセージを書いて、誰かに渡すべくポケットに入れていた・・・

 

という筋書きだった。

 

しかし細かいことながら、ストーカーによるつきまといの被害を誰かに文章で訴え、助けを求めるなら、その文面は普通に、

 

「つきまとわれている」

 

となるのではないかと思われるが、しかし実際のメモでは

 

「オワレている」(1行目)

 

となっており、

2行目の「す」の書き間違いはしっかり訂正されているが、それより前に書かれたはずの1行目の表現は訂正されておらず、

だとすれば、「オワレている」という表現に間違いはなかったものと想像され、

これをあえて

 

「つきまとい行為」

 

のことであろうと拡大解釈する必要はないのではないか、と思う。

 

また仮に、そんなメモを書かざるを得ないほどに、ストーカーによる付きまとい行為が執拗だった・・・とすれば、

 

「なぜAさんは、あれほど頻繁に山入りしていたのだろうか?」

 

と、疑問にも思う。

 

Aさんはワラビ採りが大好きな人だったらしく、

事件のあった5月23日の時点で、その年、7回目の山入りだった。(Mさんはワラビ採り初心者)

時には、一人で山入りしたこともあったかもしれない。

 

仮に本当に、ストーカーによるつきまとい行為に晒されていたのであれば、

普通は、人気(ひとけ)のない場所に行くことは、避けようとするのではないかと思うし、

ましてや、

 

「山菜取りに山に分け入ろう」

 

という気分には、ならないのではないか、と思う。

 

しかし実際には、Aさんは5月23日のパートを終えて早々に、自分より10歳以上も若い女性のMさんと二人きりで、山にワラビ採りに出かけてしまっている。

 

「ストーカーによるつきまとい行為に晒されていた女性」

 

というにしては不自然に思えるし、

仮にストーカー被害が執拗で、数か月にもわたる長期のものだった場合は、Aさんの、

 

「その年だけでも7回目の山入り」

 

という行動は、説明がつき難いのではないかと思う。

 

また、ストーカーによるつきまとい行為があり、

しかも、その被害を文章化(メモ)して助けを求めるほどに危機感を覚えていたのであれば、

例えば、「交番に駆け込む」とか、「夫や同僚に一言でも相談する」とかの話があってもよさそうなものだった。

 

しかし野山での事件後、警察やAさんの夫~同僚などから、

 

「実はAさんについては事件の前に、不審者によるつきまとい行為があった」

 

という話は、出ていないように思う。

 

あれこれ言ってはみたものの、

 

結論としては、この問題のメモは、Aさんの自宅で書かれたものでもなく、

また、Aさんの職場やその周辺、通勤路などで変質者による追跡~つきまといに遭いながら書かれたものでもない・・・

 

ということで、さらに妄想を推し進めてみたい。