その他の未解決行方不明事件・その6-2(千葉市若葉区、佐久間奈々さんの場合) | 雑感

雑感

たまに更新。ご覧いただきありがとうございます。(ごく稀にピグとも申請をいただくことがあるのですが、当方ピグはしておりません。申請お受けできず本当にすみません)

若葉区多部田町未解決事件ポスター_画像改定

 


男は何者であったのだろう?


帰還した3女子の証言によると、


男の年齢は見たところ40~50代、

身長約155センチのずんぐりしたタイプで、

丸顔、目は切れ長、赤ら顔、

服装は黒のニット帽、よこしまの長そでシャツ、黒ズボン、


とのことらしく、


だしぬけとしか言いようがないその出現は、

人気(ひとけ)の失せた深夜の多部田町の路上に於いてであり、


「後方(坂月町交差点方面)から女子らを追い越し、数歩進んで立ち止まり、振り向いた」


ということからすれば、

男の足は南、すなわち「大宮台」方面へと向かっていた、と推測された。


大宮台は戸建てを中心とした閑静な住宅街であり、

そこには当時、1軒の深夜営業(24時間営業)のコンビニすら存在していなかった。


だからこそ、奈々さんらは夜食を買いに、4.3キロ離れた小倉台のコンビニまで、

暗く寂しい道を自転車で行かざるを得なかった。


大宮台およびその周辺とは、当時、そういう場所だった。


男の足はその大宮台方面に向かっていた。


連れ去り現場から大宮台の入り口(北端)までは約590メートル、

大宮台の南端までは約2.15キロメートルとなる。




大宮台~南方面
(赤点〈〉が連れ去り現場、水色の点〈〉が大宮台の北端、ピンク点〈〉が大宮台の南端。事件から24年後の衛星画像につき、当時は建物の数はもっと少なかったと思われる。)


身長約155センチの男がゆっくり歩いたとすれば(分速60メートル程度)、

連れ去り現場から大宮台の北端までは約10分、南端までは約36分程度だろうか。


大宮台の南端を突き抜けてさらに南下すれば、

男がその時間に目指すような、めぼしい目標でもあったのだろうか?


しかし大宮台以南の約3キロ程度は、連れ去り現場あたりと大差ない景色の田舎道であり、

そのエリアに、なにか目指すものがあったとは考えにくい気がする。


そもそも仮に大宮台以南のどこかを目指していたのであれば、

それはもはや徒歩ではなく、車かバスを利用する距離だとも思われた。


しかし男はバスにも乗らず(その時刻、公共交通機関はとうに終わっていた)、

自家用車にもタクシーにも乗らず、一人、暗闇の中を歩いていたというのだった。


「男はいったい何者なのか?」

「何のためにその時間、大宮台方面に歩いていたのか?」


そう訝しがらせる理由はこのあたりにある。


----------


男の素性や目的についてはいくつかの説がある。

以下、紹介してみる。


1. 「男は窃盗~強盗犯で、めぼしい家・工場を物色して歩いていた」


男が出現した現場あたりには少ないながらも工場や民家が点在しており、

そのいずれかに侵入するために物色して歩いていた、とする見方。


一理あるように思う。


手配ポスターによれば男は手ぶらであり(少なくとも見かけ上は手ぶら)、

盗人や強盗に定番の「バールのようなもの」を持っていないようだが、

盗人であればドライバー1本で事は足りる。


付近に車を止め、ドライバーをポケットに忍ばせ、

手ぶらのようななりで歩いていたところ、好みの美少女を偶然発見したため、

急きょ予定を変更して事に及んだ・・・

という筋書きに、そう無理はないと思う。


3人の女子に顔を見られつつも堂々と犯行に及んだ、という点も、

「よそ者であったため」とすれば、納得はしやすい。


2. 「男は長距離トラックのドライバーで、眠気覚ましに散歩していた」


男が最後に吐いた「トラックで運んでやる」というセリフに着目した説で、

そんなセリフが咄嗟に出たからには、

男は常日頃からトラックを使用する環境にいたのだろうと捉える。


この説によると、連れ去り犯は「長距離トラックの運ちゃん」だった。


長距離トラックの運ちゃんが連れ去り現場付近に駐車し、

眠気覚ましのために散歩していたところ、ふとJCの一団を発見し、

その中に好みの美少女を見つけたため、急きょ一芝居を打って連れ去った、と考える。


犯人が長距離トラックの運ちゃんで、よそ者だったとすれば、

女子らに顔を見られても平気で犯行に及んだ、という点は説明しやすい。


ただし、そこらで眠気覚ましの散歩をしている長距離トラックの運ちゃんなら、

よそ者はよそ者でもマジモンのよそ者----はるか遠方の出身~居住者----という可能性もあり、

それが連れ去りのために一芝居打ったというのだが、

方言やイントネーションはどうしたのだろうか、という気もする。


例えば、女子らとのやり取りの最中に、

出身地の方言やイントネーションがうっかり混入する、ということはなかったのだろうか?

(些細なことだが)


仮に、お国訛りなどから千葉の地元民ではないことを悟られたとすれば、

女子らの印象には、強く残っただろうと思うのだが・・・。


また、事件の風景の中に「長距離トラックの運ちゃん」を設定するのであれば、

この多部田町の現場が、それを設定しうるだけの条件を満たしていることが必要かと思う。


例えば連れ去り現場の一帯について、

長距離トラックの運ちゃんが一服したり仮眠したりする光景がよくみられる地域なのか、

そういったルートに当たっている地域なのか、ということだった。


仮にそういった光景が全く(あるいは滅多に)見られない地域であれば、

そこに「長距離トラックの運ちゃん」の存在を設定するのは、若干強引という感じはする。


そのあたりの現場事情については、地元の人々なら詳しいだろうと思う。


長距離トラックのドライバーという可能性は、皆無とは思わないにせよ、

窃盗~強盗犯説と比べると、やや弱いのではないか、という気はする。


連れ去り現場の一帯には「飯場」も多かったとのことで、


3. 「男は飯場に出入りする流れ者で、わいせつ目的で歩いていた」

4. 「男は近所の変質者で、わいせつ目的で歩いていた」


などとする見方もある。


しかし飯場の流れ者が深夜、わいせつ目的で徒歩でうろつき、

一人歩きの女性ではなく、JC4人組に声をかけるというのが今一つ想像しにくい。


徒歩ということなら、機動力には欠ける。

流れ者なら、そう土地勘があったとも思えない。


こういう人間がわいせつ目的で少女を人気のない深夜の小道に連れ込んだ場合は、

その場で犯行~即逃走という流れになるのが自然ではないか、と思うのだが・・・


その後の、坂月町交差点での、車の運転手による目撃証言などからすれば、

どうもそういうわけでもなさそうだった。


男はどうやら奈々さんを伴い、徒歩で他の場所に移動した様子だった。


男の、この妙にのんびりとした動きはヒット&アウェイを身上とする流れ者風ではなく、

どちらかというと、その近辺をホームにしている者、

その近くに他人の邪魔が入らない空間を有している者の、余裕のある動きに思える。


とすると、4の、


「ご近所在住の変質者による犯行だ」


という説が有力かとも思えてくるが、

複数のJCに顔を見られていながら、ご近所の人間が犯行に踏み切るものだろうか、

という気がしないでもない。


もっとも、顔を見られてでも目先の欲望達成に邁進してしまうのが、

変質者の変質者たるゆえんかもしれない。(ex. 寝屋川の山田容疑者)


その他、


5. 「男は北朝鮮の工作員で、奈々さんは北朝鮮に連れていかれた」


とする見方もある。


例えば連れ去り現場となった若葉区多部田町が、

拉致問題でしばしばその名の上がる「大町ルート」の末端(スタート地点)に近い、

ということが、その根拠の一つとして挙げられたりする。


「大町ルート」とは、


千葉県の旧海上町(現・旭市)周辺 →東京→山梨(甲府)→長野(大町)→富山・新潟


という流れで日本海沿岸まで抜けていく物流ルートのことであり、

あれやこれやで、このルート沿いでは拉致を疑われる謎の失踪が頻発しているらしい。


この事実から、北朝鮮の工作員~協力者は、この「大町ルート」沿いで頻繁に拉致を行い、

被害者を富山や新潟などの日本海沿岸まで陸送し、そこから船に乗せているのでは?

ということが一つの推測として言われており、

奈々さんの場合も


「連れ去り現場が大町ルートに近い」

「だから北朝鮮による拉致が疑われる」


ということが、可能性の一つとして囁かれているのだった。


また、「補導員を詐称した」という男の手口についても、

当時現場に本物の補導員が出回っていないのを知っていたが故の手口ではないか?

と考えると(現に警察によると当時現場に本物の補導員は出回っていなかったらしい)、

つまり男は「補導」だの「取り締まり」だのといったその筋の内部情報に通じていることが連想され、

「なんとなくプロの工作員ぽい」

ということで、

こういったあたりも、「北朝鮮工作員による拉致」を指し示す一つの理由とされている。


しかし北朝鮮の工作員~その協力者による犯行なら、

複数人による連携で、計画的に、確実に行うのではないかという気がするが、

奈々さんが男と接点を持ってしまったのには、いくつかの

「偶然的要素」

が絡んでいる。すなわち、


・ たまたまその日、お泊り会をした

・ たまたま友人が「夜食を買いに行こう」と言い出した

・ たまたまそれが近所のセブンイレブンの閉店後だった

・ たまたま小倉台のミニストップが選ばれた(おそらくそれは複数ある選択肢の一つに過ぎなかった)

・ たまたま午前1時に連れ去り現場を通りかかった

・ たまたま路上に転がっていた、台風の影響によるらしい倒木に引っかかって転んだ

・ たまたま後ろから来た男に追いつかれたのは、転んだあと騒いでぐずぐずしていたからだと言える


これらすべての「たまたま」が、

北朝鮮の工作員によるコントロール下にあったとは考えにくい。


仮にそんなことができるとすれば、

お泊り会をしていた女子の中に北朝鮮の協力者(仮にA子、13歳)がいた場合、

ということになると思うが・・・


それでも


「倒木に引っかかって転ぶ」


などという現象を人為的に起こし得るとは考えにくい。

(転んだのが奈々さんだという一般に流布している情報を前提にしている)。


そもそも北の協力者(A子、13歳)がいたのであれば、

なにも4人でお泊り会をせずとも、A子と奈々さんの2人だけでお泊り会をし、深夜に外出して、

そこでさっさと工作員に引き渡せば話は早いはずだった。


その方法だと、工作員としても、

自分の容姿や手口を無関係の者(この場合は3人のJC)に見られないというメリットがある。


ところが実際は4人ものJCでお泊り会を実施しているのであり、

男はその特徴的な顔立ち、背恰好、手口などの全てを目撃されてしまっている。


なにより、目撃者となったJCらが、無事帰還している。


仮に本当に北朝鮮工作員による犯行であったなら、

その一部始終を目撃したJCらも、無事では済まなかったのではないか、と思う。

(全員まとめて拉致されて終わり)


事件には偶然の要素が多々絡んでいるとみられ、単独犯であり、目撃者も多い。


「工作員(プロ)による仕業」


というにしては、自分的には違和感を覚える。


警察は一貫して


「わいせつ目的の誘拐」


との見方を採っているという。(前回記事、伊吹氏のレポート)


----------


ブログをご覧の方々は、

この男の素性や目的について、どう見ておられるのだろう?


自分的な推測としては、先の1~5のどの説とも異なるが、

しいて言えば「4」のそれに近い、という気がしている。

すなわち、


「近所の変質者がわいせつ目的で歩いていた」


というものだが、

おそらくその男は常日頃からコアな性的変質者だったわけではなく、

色濃い犯罪傾向を有していたわけでもなく、

歪んだ性的願望を心のどこかに抱きつつも、

表面的には普通に暮らしていた人ではないか、と想像する。


いうなれば「普通の人」だった。


普通の人がその時間、

その方向に向かって何しに歩いていたのかというと、


「家に帰っていただけ」


ということになる。


以下、事件についてある程度詳しい方なら、

多少は賛同いただける部分もあるのではないかと思うのだが・・・


男はその日、いつもより遅い時間に職場を退出したのだった。


「油を売る」


という言葉がある。


仕事中に無駄話などをして怠ける、という意味の言葉だが、

男は決して怠けていて遅くなったわけではない。


確かに勤務時間中、多少は油を売ることもあったが、

それでも夜の9時にはきっちり仕事を終えていた。


仕事を終えた男はすぐには帰らず、事務所のテレビへと向かった。


その日はプロ野球日本シリーズ、

西武vs広島の第6戦が行われた日だった(デーゲーム。wiki)。


結果は6対1で西武の勝利、

日本一への逆王手をかけた一戦だった。


男は西武を応援していた。

夜9時から日シリ関連のニュースを飽くことなくハシゴしていた。


家に帰れば何とはなしに家族に気兼ねする。

歩いて帰る時間も惜しかった。


男は得点シーンに見入った。

ビールも進んだ。


酒焼けした頬はさらに赤みを帯びてきた。

心地よさが眠気を誘い、いつしか居眠りをし始めた。


ふと目覚めると日付は変わり、

時計の針は午前1時少し前を指していた。


「いかん、帰ろう」


男はよろりと立ち上がり、

黒のニット帽を掴んで職場を出た。


----------


路上に出ると、男は南(大宮台方面)に向かって歩きだした。


車の往来は少ないが、無いわけではない。


少し酔いの残る目に

時折やってくる正面からのヘッドライトが眩しい。


男は直ちに道の左側へと移ったか、

しばらく右側を歩いたのち、左側へと移ったものと思われた。


あるいは目指す男の家は道の左側にあったとも考えられるが、

いずれにしても男は道の左側を歩行していた。


しばらく行くと妙な一団に追い越された。


自転車に乗った女の4人組だった。


昼間なら普通の光景だが、時間が時間だった。


午前1時を回ろうとしていた。


暗くて年のころは判然としなかったが、まだ若いように思われた。


「なんだあいつら・・・」


訝しく思うのもつかの間、

4人が走り去った方角から騒ぐ声が聞こえた。


声は明らかに少女のそれだった。


怪訝に思いつつ男は進んだ。


50メートルほども歩いただろうか、男は4人に追いついた。


歩道に落ちた木の枝を前に、

自転車に乗った女子らが立ち往生していた。


その面影はいずれも幼さを残していた。

自転車のスタンドを立て、道に落ちた何かを拾っている者もいる。


木の枝にでもつまづいたのか、ここで一人が転倒したらしかった。


それは歩行の邪魔だった。


気にする風もなく女子らは騒いでいた。


小男の存在は眼中にない様子だった。


「なにやってんだ、こんな時間に・・・」


男は眉をひそめながらも、いったんその場をやり過ごそうとした。


聞こえよがしに舌打ちをして女子らを脇から追い越し、

そのままさらに数歩進んだ。


このときふと男の足を止めたものは、何だったのだろう?


「気のきかねーガキどもだ」

「少しビビらせてやろうか」


男の内に勃然と湧き起こった、

怒りとも正義感(?)ともつかない感情だったのか。


それとも他の何かだったのだろうか。


いずれにしても男は振り向き、


「お前ら、何やってんだ?」


怒気を帯びた調子で、そう声を掛けたのだった。


----------


その後の展開は伝えられている通りだった。


男は補導員を詐称し、女子らは欺かれた。


声掛けの当初から奈々さんの連れ去りを意図していたのか、というと、

私にはそうは思えない。


先の記述で、4女子が男の進路を邪魔していることを気にせず騒いでいた、

としたのは妄想に過ぎないが、

その年頃の4人組ならあり得ない話ではない。


仮にそれがあったとすれば、

男としては、仕事帰りの自分が、夜遊び中のガキ4人に木の端のような扱いを受けた、

ということへの憤激もあったかもしれない。


いずれにしても男には当初、大それた意図はなく、


「非常識なガキどもを脅し上げ、わからせてやる」


そんな程度の意図ではなかったかと想像する。


「16歳未満の者が夜11時以降に保護者の同伴なしで・・・」


このセリフからすれば、男は明らかに「条例」を持ち出した。


うろ覚えに覚えていた条例の内容を、口から出まかせに言ってみたのか、

それとも、条例やその大まかな内容が、男の意識の中に常日頃からあったのか。


後者だとすれば、あるいは男は店舗などを営んでおり、

そこが時に、バイクなどを連ねた未成年者(不良グループ)の立ち寄り先になっており、

と同時に、警察官の巡回先にもなっており、

男は未成年者の夜間外出について定めた条例について、

常日頃から耳にし、意識するところはあったのかもしれない。


とすれば、4女子を脅し上げたとき、即座に


「お前らのしていることは、違法(条例違反)だ」


という言葉が口を突いて出たのは、自然な流れだった。


男の誤算は二つあったと思う。


一つは女子らがあまりにもあっさりと恐れ入ってしまったため、

「ビビらしてやる」

という当初の目的を逸脱し、調子に乗りすぎてしまったこと。


もう一つは、

見れば見るほど惜しくなる美少女が、女子らの中にいたことだった。


男のテキトーな法螺話に対し、

女子らは拍子抜けするほどあっさりと恐れ入ってしまった。


大人の間では時に肩身の狭さを覚える低身長の自分の前に

4人の女子らは、あまりにも子供らしく、素直に頭(こうべ)を垂れるのだった。


その姿は新鮮であり、快感でもあった。


それは「大人の権威」であり、不思議な全能感だったと思う。


その全能感の中で、男はさらなる欲望を求めた。


それは目の前にいる一人の美少女だった。


見れば見るほど惜しくなってきた。


「帰したくない」


当初の目的は容易に別のものに逸脱した。


「お前、代表でついて来い!」


奈々さんにそう言い放った直後、男は奈々さんの自転車について


「トラックで運んでやる!」


と言っている。


このセリフには、

「奈々さんを解放して、自転車で帰宅させる」

という視点が抜け落ちている。


奈々さんを(代表として)指名した時点で、

少なくとも直ちには解放する気がなかったことが見て取れる。


男は首尾よく奈々さんを小道に連れ込み、残りの女子らを家に帰した。


その後どうなったか。


午前1時半ごろ、

連れ去り現場から約260メートル離れた坂月町交差点で、

通りがかった車の運転手によって、男と奈々さんらしい2人連れが目撃されている。


連れ去り現場との位置関係や、

時間的なものからみて、この2人は男と奈々さんであった可能性は高いと思う。



千葉市若葉区多部田町衛星画像01

(赤点〈〉が連れ去り現場、上〈北〉に向かい約260メートルで坂月町交差点〈〉。ピンクの道は男が奈々さんを連れ込んだ小道。一つ前の記事に詳細あり。)


千葉市坂月町交差点_画像修正

(坂月町交差点を北側から眺めてみる。画像奥側〈南方向〉へ約260メートルで連れ去り現場。向かって左側はレストラン。向かって右側はローソン。このローソンは事件後約20年が経った2011年7月8日にオープンした。)


坂月町交差点での目撃情報が正しいとすれば、

男は奈々さんを小道に連れ込んだ後、

そう時を置かずして、奈々さんを伴い、坂月町交差点方面へと徒歩で移動したものと思われた。


交差点方面へと移動する前に、

小道で少し会話をし、時間をつぶしたものと思われる。


男はおそらく深夜外出の理由などを、もっともらしく問いただしたのだった。


「うむ、なるほど」

「そうか」

「ほんとうか?」

「ちょっと信じられないな」


テキトーな相槌や脅し透かしを並べつつも、

その視線は暗闇にほの白く浮かぶ奈々さんの顔をねっとりと舐め回していた。


10分かそこらネチネチと「事情聴取」した後に、


「どうもまだ嘘をついているようだな。この件はやっぱり警察に報告しておく」

「俺の事務所から警察に電話をかけるから、そこまでついて来なさい」

「自転車はそこに置いといていい。あとでトラックで家まで運んでやる」


などと言って場所替えをしたものと想像された。


2人が移動した先は(男が先ほどまでいた)男の職場だったかも知れず、

その場合、男は奈々さんを伴い、もと来た道を取って返したものと思われる。


徒歩4~5分で坂月町交差点に到達したのがおそらく「午前1時半ごろ」であり、

その姿を通りがかった車の運転手に目撃された、

という流れに、不自然さはないように思う。


その他の目撃証言としては、午前4時過ぎに、

連れ去り現場から2キロ弱離れた千城台で、2人連れが目撃されている。



千葉市若葉区大宮台_小倉台01

(緑点〈〉が坂月町交差点。画像中そこから右上方面に千城台。)


この目撃情報は、坂月町交差点における最初の目撃情報からは、

時間と距離がかなり離れている。


千城台の2人連れが男と奈々さんであったかどうかは不明と思う。


また、坂月町交差点から千城台に至るいずれかのルート上でそれらしい2人連れを見た、

という情報もない。


「目撃情報が少ない(無い)」

という事実からは往々にして「犯人は近場の人間だ」ということが連想されがちだが、

それがこの事件についても当てはまるかどうかはわからない。


仮に地元~近場の人間が犯人だとして、

3人もの女子に顔を見られているのに、なぜ検挙できなかったのか・・・


ということについては、

例えば容疑者は絞られていたものの、その口が堅く、公判維持に足る物証が挙げられなかったこと、

また身柄を確保する前に容疑者が逃走~行方不明になるとか、

場合によってはあの世に逃げてしまう(死亡)などの事態があったことが想像されるが、

正確なところは不明だった。


事件は解決を見ないまま、2006年に公訴時効を迎えている。


----------


奈々さんが住んでいた大宮台のアパートから直線で2キロと離れていない場所に、

東光院という真言宗のお寺がある。


願い事が叶う寺とされ、その在所名の一部をとって、

人々からは「平山お願い薬師」の名で親しまれている。


歴史は古く、一説には平安期までさかのぼるという。


境内の片隅には「ぶじかえる」が鎮座しており、

人々はその前で、心にある者の無事の帰還を祈る。


千葉市緑区東光院ぶじかえる_画像改定


奈々さんが行方不明になって後の数年間、この「ぶじかえる」の前で、

娘の帰還を祈る奈々さんの母親の姿が見られたという。


やがて母親は事情で大宮台のアパートから県内某所の実家へと戻った。


しかしアパートの家賃だけは払い続け、室内にはあかりを灯し、

窓を小さく開け、奈々さんの部屋はそのままにして娘の帰りを待ち続けた。


それも今から10年ほど前には全て引き払われたという。


男は奈々さんをどこへ連れ去ったのだろう?


男の正体は何者であったのか?


あの日から24年、


真相はいまだに闇の中である。


ガソリンスタンド

(今回の寝屋川~高槻の事件では、駐車場やコンビニ、ガソリンスタンドなど、各所に設けられた防犯カメラが容疑者逮捕に威力を発揮したという。佐久間奈々さんの事件当時、2015年並みの防犯カメラ体制が整っていれば、事件は未解決には終わらなかったのではないかという気がしてならない。)