空いた時間にハリポタを読み返していて。

ガールが気まぐれに「読書感想文書いて。」と言うので。

 

私のハリポタとの出会いはもうかなり前のことだ。

あれは1999年12月。

第1巻「ハリー・ポッターと賢者の石」の日本語版初版が発売されたときに遡る。

なぜ手に取ったのか、そのきっかけはもう覚えてない。

「騒がれてたから。」とか。そういう程度だったのだと思う。

とにかく一気に読んだ。

慣れ親しんだ国や文化の物語ではないし、ましてや魔法使いの話ともなれば別世界。

それでも感じるこのリアリティは、情景の繊細な表現に基づいている。

全体的な色彩はダークでスモーキー。

蝋燭やガス灯の明かりに照らされた夜。石のグレーに森の深い緑。

後に映画化された時に、想像していた雰囲気にあまりにも重なっていて驚いた。

物語や小説などが映像化されると、自分の思い描いていた世界観とのギャップに失望することが少なくない。

そんな中にあって、ハリー・ポッターシリーズはかなりの割合で私の感覚に沿っていた。

登場人物は魔法使いや魔法使い候補生が主。

主人公のハリー・ポッターは候補生の一人で、魔法界では知らない者がいない奇跡の子供。

過去に魔法界に暗黒時代を築いた「名前を言ってはいけないあの人」。

家族がその襲撃を受けた際の唯一の生き残り。

そして、「あの人」が復活した時には希望になりうる存在。

その人物像は、よく言えば好奇心旺盛で正義感がある。悪く言えばわがままで無鉄砲で自己中心的。

若さと言えばそうなのかも知れない。

勇気と呼ぶのは少々はばかる行動の浅はかさ、幼さに腹立たしくなることも少なくないが、根底にある他人への思いやりを忘れる訳にはいかない。

わざわざ足を踏み入れたトラブルは、本人の機転や周囲の助けで、その後の世の中を良い方向に向かわせるのだし。

今、読み返しているのは「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」。

シリーズの中では4巻に当たる。

「あの人」がついに復活を遂げる、ストーリー全体を大きく揺さぶる物語でもある。

この「炎のゴブレット」は、純粋な冒険活劇として楽しめた前巻とは、特にその後半から趣を変え、これ以降、ハリーの周りで「死」がリアリティを持つことになる。

よりミステリアスでホラーな内容に寄って行くが、悪や最悪な状況に立ち向かい、勇気と正義で解決する流れは変わらない。

その中で、私は複雑な人間関係や感情の抑揚に特に惹かれる。

強い信頼で結ばれた正義と対照的な、恐怖と裏切りに支配された悪。

物語の中では正義の側とされる人々も、実は感情的で報復も辞さないただの人。

時には意地悪で口も悪い。そういうところもリアルと感じる部分。

この物語から私が受け取るメッセージの中で際立っているのは、正しさを測るのは難しいということだ。

他人を殺めたり傷つけたりすることが正しいとは言えないが、自分や近しい人を守るためなど、場合によっては肯定される。

それとて「自分の側」に限られる。

敵対する側が身を守るために攻撃してくれば、認めるわけにはいかなくなる。

ハリー・ポッターの世界では、悪がわかりやすい悪だ。

独裁者で殺戮者。

言葉で解決するなど不可能。

私たちの世界はどうだろうか。

話し合いでの解決が不可能な争いばかりだろうか。

知識や理性の使い方という点で見れば、ヒトはまだまだこれからだ。