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さて、第一回目。一体何を書こう。
まずはざっと自己紹介。30代女、独身。初めに書いたように、あちこち世界中を回っている。なぜなのか、何をしているのかは追々話すことにしたい。まあ、色々、とだけ言っておこうかな。
色々なところを見て歩いてはいるのだけど、去年から今年にかけては、特にイタリアが中心で、ほとんどイタリアに暮らしているような状態。
今年の春、イタリアに出かける前、むこうに行ってから行くことがないように、と歯の治療をした。そこの歯医者さんには申し訳なかったのだけれど、「あと一月で出かけるから、それ以内に終わらせて」という私の注文に答え、短期間に、数本の虫歯の治療、歯垢の除去、さらに虫歯予防にフッ素まで塗ってもらって、私的にはちょっと感激だった。特に「フッ素を塗る」なんてことをしてもらったのは初めてで、嬉しかった。今時の歯医者なら普通のことなんだろうか?
他の歯医者の事は知らないけれど、今まで通っていた別の歯医者は、そんなことはしなかった。そこがまた個性的な古典派歯医者だったからかもしれないけれど。とにかく,「こんなハイテクなことをしてもらったのだから、今度日本に帰るまで絶対持つはず」と、信じてやまなかった。
ところがである。イタリアに着いてすぐ、その治療した歯が、キャラメルとともに外れてしまった!
ああ、予想外の災難。キャラメルなんて食べるんじゃなかった。
日本にいれば、外れた歯なんてただで入れてくれるはずだ。だって、むこうがしっかり入れてくれないから外れるんだから、堂々はずれた銀歯を持って、
「入れてください!」
と一言,言えば済むのだ。例え、いくらか掛かったとしても、たいしたことではない。
でも、ここはイタリア。一体どのくらい掛かるんだろう?
そこでこちらに長く住む日本人の知人に聞いてみた。それが、とんでもなく治療費がかかる、というのだ。
なんでも彼の場合、親知らずを抜かなくてはならなくなったとか、こちらでは親知らずの抜歯は外科手術にあたり、数百万からかかったという。
で、でも、私の場合、かぶせた歯がはずれだだけなんだから・・・・。
「いや、そこから推察して数万円、ってとことちゃう?」
かぶせた歯を入れるだけで数万円・・・?そんなバカな値段設定って、ありなのか?
「例えかかっても、日本で健康保険に入とったら、7割は返ってくるやろうから・・・」
そうか、七割は返ってくるんだ、と思っても、う~、納得がいかん。
で、今度はイタリア人の友人に尋ねてみた。
「ねえ、歯が外れちゃったんだけど」
「それなら、友達の歯医者に連れてっ行ってあげる」
「いくら掛かるかな」
「お金?そんなのただじゃないの?ま、彼は俺の友達だからね。多分、とらないと思うよ」
友達だからとらない、というのもまた納得いかないなあ。とにかく、外れたままというわけにはいかない、とその'’友人の友人の歯科医''をたずねてみた。
外国に住んでいる間に、なるべくだったら病院にも行きたくないし、歯医者だってなるべくなら避けたい。怪我も病気もなく、無事に日本に帰ることを心に念じ、日々暮らしている。特に、個人的には歯医者は絶対避けたかった。日本にいても歯医者が嫌なのだ。一生行かなくていいのなら、その方がいい。
はー。やだやだ。
たかが歯を入れるだけなのに、私は極度に緊張していた。その医者は無愛想で、にこりともしなかった。日本の歯医者は、若い女性の助手がつくけど、ここには女性がいない。普段は「あんなにいなくてもいいんじゃないの」と、思うけれど、この時ばかりは彼女たちが患者の緊張をほぐしていることを認めざるをえなかった。というのも、ここには女性がいないどころか、医者以外に男が二人もいる。
この二人の男性は何者なんだ?なんで三人で私の口の中を覗く?
後で分かったのは、この二人は歯科技師さんたちで、ちょうど私がその日最後の患者であったこともあって、異国日本で治療した歯の見学をしていたのだった。
三人のイタリア男に口を覗かれる、という滅多にないコワいシチュエーションの中、外れた歯はきっちりと元の位置に収められた。
「あの、御代は」
「ん?ああ、いらないよ。たいした仕事ではないからね」
帰り道、友人が,
「そら、だからやつは俺の友人だって言っただろう」
と、胸を張って言った。
そう、この国では「友人」の存在がいかに重要か、私は学びつつあった・・・・。
しかし、この「歯医者騒動」、これだけで終わらなかったのである。