JAなどが出資する農林中央金庫の今期最終赤字が、1兆5000億円規模になる見通しとなったと報じられている。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「農林中金は全国の農協が集めた60兆円超の資金を預かり、毎年3000億円ほどの運用益を還元している。これらが縮小・消滅していくと、農協は倒産・崩壊の危機に直面することになる」という――。

 

なぜ簡単に資本増強できるのか

 

JA農協が持つ「政治力」と「資金力」のルーツ

 
「農会」は、農業技術の普及、農政の地方レベルでの実施を担うとともに、地主階級の利益を代弁するための政治活動を行っていた。農会の政治活動の最たるものは、米価引き上げのための関税導入だった。
 
「産業組合」は、組合員のために、肥料、生活資材などを購入する購買事業、農産物を販売する販売事業、農家に対する融資など、現在農協が行っている経済事業(JA全農の系統)と信用事業(JAバンク、農林中金の系統)を行うものだった。
 

昭和恐慌を機に全農家が加入

 

政府系金融機関として誕生した農林中金

 

GHQが完全解体を目指した農協が生き残った理由

 

世界で類を見ない「総合農協」が誕生

 

農協だけに認められた准組合員

 

政府資金を運用して大儲け

 

預金に回る「高いコメ代金」

 

農業の非効率化と縮小が進んだワケ

米価引き上げで、コストの高い零細な兼業農家もコメ産業に滞留した。
 
酪農家の84%が農業で生計を維持している主業農家であるのに対し、コメ農家の74%は副業農家で、主業農家は8%しかいない。これらの農家の主たる収入源は兼業収入と年金収入である。農家全体でみると、多数の米農家の存在を反映して、2003年当時で農業所得に比べ兼業所得は4倍、年金収入は2倍である。これらは、JAバンクの口座に預金された。
 
 

農業の生産額を超えて拡大したJAバンクの預金

 
【図表1】農協貯金平均残高(2015年基準実質価格)
 

農業の赤字を金融事業で補てん

現在JAバンクの預金量は109兆円に上る。
 

農林中金と共にJA農協も崩壊する

 
【図表2】農協の部門別当期事業利益(2022)