◆◇◇ 月色の少年 ◇◇◆

◆◇◇ 月色の少年 ◇◇◆

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幸せて、気分によっても左右されてしまうけど…

私は…

美味しい物を食べたり、好きな系統の音楽に巡り会えたり、好きな映画やテレビ見たり、面白い本に出会ったり、パチンコで勝ったり…自分でも納得できて周りからも良しとされるお芝居ができたり…
案外、何でも幸せになれるかも…。

ただ、私は浮き沈みが激しい気分屋だから、次の瞬間に嫌な事があったら全部それに持って行かれて台無し…(+_+)

ある意味「±0」で、まさに人生楽ありゃ苦もあるさ…


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天夢航海。谷山由紀さんて方が書かれてる小説なんですが…この本、大好きなんですよ。
以前、好きな小説などを並べてみた時に書き忘れてました…(+_+)

でも…「好き」と言うより、もっと切実で切迫した何かなんですよね。

少女達が偶然手にする『天夢界紀行』と言う小説の無料冊子。
この地上を上手く生きられず、自分の本当の居場所を、この『天夢界』に求める人の想いを軸にした短編集です。

本当に独りになれて地上の全てのしがらみを捨て去る事のできる人にしか乗れない、夜空に銀色に浮かぶ迎えの船。
手に入れても地上の強烈な引力故に必ずしも有効に使う事のできない天夢界行きのチケット。

遠い世界を求めても、人はやはり、全てを失える程に一人にもなれない。切ないんですけども、同じくらい理解できるんです。

嫌な事からただ逃げ出したいだけなんじゃなく、安らげる自分の世界を一度はみんな求めるんじゃないかな~。

空想世界と呼ばれるものは、決して弱さでも現実逃避でもなく、自分の心に必要な糧なんだと思います。


それらが詰まったこの作品は、何だか…
登場人物達が『天夢界紀行』に描かれる人々に自身を重ね合わせて見ているのと同じように、私も彼女らを自身に重ねてしまう程に、身近で大切な、自分を埋める「一部」のような存在です。

絶版かもなんで、古本屋さんで見かけたら是非ともご一読下さい☆

何度読んでも、この果てしない望郷の想いに淋しさや憧れを抱きます。

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小話・1の続きです。今回は一人だけなんで、まともに会話がなくて寂しいかぎりです。


【月色の少年
 ~彼方の朧~】


――最後に見たのは少女の泣き顔。

少年はゆっくり目を覚ました。


蓄積された疲労故に重い身体を捩りながら起き上がる。

視界を埋め尽くす景色は無慈悲に広がる乾燥した赤土の荒れた大地。地平の空に蜃気楼の如く一帯を囲むように聳え連なる岩山は、ここが遮られた場所である事を証明している。

皮膚に触れる乾いた土の感触こそが、自分の現実であり、逃れられない真実なのだと忘れていた意識を取り戻す。

少年は肌にまとわりつく土を払うと、起こした上体を傍らの機械の残骸に傾けた。


涙は流れない。

絶望も困惑も不安も…今は消え去り、静けさが彼を満たす。


『リューイ!』


少女の声が耳の奥に鳴り響く。


少年――リューイは、手元に転がる小石を拾うと、地面に何十も書かれた線の横に新たな線を書き足した。


37本目。

月は闇の先に姿を消し、一方の空が薄い藍に色彩を変えていた。

もうすぐ夜が明ける。

今日で不時着から37日目。


仲間と幾晩も語り、励まし合い、想いを込めて造り上げた彼らの飛行船は無惨な姿と成り果て、荒れた大地のオブジェと化していた。

墜落にして言えば彼は幸運だった。低い位置からの墜落のためか、或いは見えぬ力か、船は大破したものの炎上もせず、身体もかすり傷で済んだ。

毛布や食料までが無事だった事が類い稀なる奇跡なのだと、最初の夜、喜びか先の見えぬ恐怖か…膝を抱え身を震わせた。


墜ちる前、上空から見た景色にも、地上に打ち付けられた後、求め探してみた景色にも、人の住む僅かな痕跡は見られなかった。


リューイは目を瞑り、夢とも現実ともつかない記憶を思い返す。

暗い空に大小無数の星が揺らめき、果てしない宇宙の真ん中に儚げに漂う様にポツンと浮かぶ狭く平らな地上。

気がついた瞬間にリューイは既にそこに居た。あまりに唐突であまりに非現実で、今思えば驚く事さえ忘れていた。


『まるで宇宙の真ん中みたい』


目の前には惚けた様に遠くを見つめる少女の姿。

彼女はホノカと名乗り、奇妙な現実にやや困惑していた。


――現実…とは言い難いかもしれない。確かめる術は無い。


だが、どちらでも良いとリューイは思った。

交わした言葉も、触れた頬の温もりも、例え全てがリアルな夢だったとしても、ホノカと言う存在が、虚ろな孤独に正に仄かな光を灯してくれた。


『リューイ!』


「ホノカはあんなに大声で名前を呼んでくれた。自分自身さえ見失いそうな僕の名前…」

自らに言い聞かせる様に声に出して呟く。
あんなに大声ださなくても…と笑いが込み上げた。


「あぁ…やっぱり」


リューイは空を仰いだ。


この胸の片隅に希望が生まれている。


リューイは先程地面に書き足した線を指でなぞり、ゆっくりと立ち上がった。


人を寄せ付けない程の高い岩山に遮られ、地上は何もない乾いた大地。

広くも限りある円の中に存在するものは、自分と自分をここまで運び力尽きた憐れな船の残骸のみ。


修理さえ叶わぬ状況の中、僅かながらも無事に残った食料などが幸いし、ここまで生き延びた。


…いつか迎えが来てくれるのを今ならまた信じられる。


リューイは大きく息を吐いた。


「いつか地球に」


聞いた事のない星に住む少女との約束。


互いが消えそうになる瞬間に交わした最後の言葉。


「僕はいつかキミに会いに行くよ」


明るくなった空に誓う。

例え…夢だったとしても。




数日後、夜明け前の冷たい空気を震わせ、微かな振動と低いモーター音を響かせた楕円形の飛行船が現れた。


☆★☆終わり☆★☆