『日本のいちばん長い日』 | 狂気と正気の狭間

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『yahoo!ブログ』にて活動して来ましたが、突然の〝サービス終了〟と言うテロに遭い、止む無く移転して来ました。

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鑑賞日:平成27(2015)年8月14日[金]
劇場名:TOHO CINEMAS  流山おおたかの森/SCREEN1
席番号:G-9

映画館公開日:平成27(2015)年 8月 8日[土]
地上波初放送:平成28(2016)年 8月14日[日]

1945年7月。
太平洋戦争での戦況が悪化する日本に対して、連合軍はポツダム宣言の受託を迫る。
連日に亘って、降伏するか本土決戦に突き進むかを議論する閣議が開かれるが結論を一本化出来ずにいた。
やがて広島、長崎に原爆が投下され、日本を取り巻く状況は更に悪くなって行く。
全国民一斉玉砕と言う案も取り沙汰される中、阿南惟幾陸軍大臣は決断に悩み、天皇陛下は国民を案じていた。
その頃、畑中健二少佐ら若手将校達は終戦に反対するクーデターを画策していた。
監督 原田眞人
出演 役所広司(阿南惟幾陸軍大臣)
本木雅弘(昭和天皇)
山﨑 努(鈴木貫太郎内閣総理大臣)
堤 真一(迫水久常内閣書記官長)
松坂桃李(畑中健二陸軍少佐)

この先ネタバレの可能性有り

正に70年前のこの日に起こった出来事。
敢えてこの日を選んで鑑賞してみた。
平日だがお盆休みと言う事もあるのか、結構客の入りは良かった。
もしかしたら皆、私と同じ考えだったのかも知れない。
それにしても、当時の人々の思考は理解出来ない!
日本人って、1945年8月15日を境に、全く別の思考をする民族となってしまったのではないかとさえ思える。

1967年(昭和42年)にも映画化されていて、その時の原作『日本のいちばん長い日』が大宅壮一名義として1965年(昭和40年)に出版されているが、実際に書いたのは半藤一利氏らしい。
今作の原作は半藤一利名義の『日本のいちばん長い日 決定版』だ。

今回訪れたSCREEN1は初めてだったが、過去に訪れた事の有る同規模のSCREENとレイアウトが同じと言う事も有り、それらを勘案して決めた。
正しく9番がスクリーンに対してセンターだった。
目線の高さもG列で良かったが、もう1列後ろでも可だと思う。


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ストーリー
鈴木貫太郎内閣発足から昭和20年8月15日の玉音放送迄を、〝戦争を終わらせる為の戦い〟を中心に描いている。
やはり見所は、中々意見の統一を見ない午前会議での昭和天皇による御聖断と、玉音放送の録音盤を奪取しようとする宮城事件。
戦争の善悪や残酷さを声高に唱えている訳では無い。
設定
全体的に悲壮感溢れ、初っ端からドラマチックに飛ばして行くのかと想像していたが、意外と淡々と話しが進んで行くので少々出鼻を挫かれた感を覚えた。
歴史的事実を描いている訳だから突拍子も無い演出は出来無いか!?
クーデター勃発時、同じ陸軍同士なので〝誰と誰〟が〝どの部署とどの部署〟が対立し、若しくは結託し合っているのかが観ていて分からなくなる。
キャラクター
全て実在の人物。
昭和天皇を真正面から描いた初めての日本映画との事らしい。
鈴木首相は実際にあの様な飄々とした人だったのだろうか?
戦地では未だ大勢の兵士が死闘を繰り返し、日本の命運が掛かっていると言うのに結構呑気に構えている印象。
ただ〝自分の内閣で戦争を終わらせる〟と言う強い信念で有った事も事実。
キャスティング
昭和天皇役の本木氏は、デリケートな役柄だけに困難を喫したと察する。
見た目は似ている訳では無いが、内面から発する雰囲気が『昭和天皇だ。』と納得させるので、やはりそれは本木氏の演技力の賜物か!?
話し方は意識して演じている様に見受けられた。
ただ本木氏だと、昭和天皇の〝高貴な気品〟は上手く表現されていたが、〝親しみ易さ〟と言う点では残念な結果だと感じた。
何と言うか、〝隙が無い〟と言うか〝取り付く島が無い〟、他人を寄せ付けない雰囲気を感じさせるのだ・・・、本木氏は。

東條英機を演じているのを麿 赤兒氏だと思い込んでいたので、後程『何故、昭和天皇側に控えて居るのだろう?』と疑問に思った。
改めてパンフレットを見て、東條を演じていたのは中嶋しゅう氏と言う役者さんで、麿氏が演じていた役は藤田尚徳侍従長だと言う事が判明し、合点が行った。
一見すると似ているので判別が付かなかった!
中嶋氏を観て『やっぱり東條役は麿 赤兒か、思った通りだ!』等と思ってしまった自分が恥ずかしい!

クーデターを企てた青年将校を演じた役者さん達の鬼気迫る熱演には空恐ろしい物を感じた。

名前は知らないが、顔は見た事の有る役者さんが大勢。(舞台俳優を中心に、形式的なオーディションを行ったとパンフレットに記述有り。)
映像
全編、やや暗めになっている様に感じたのは、地下防空壕での映像が多かったせいだろうか?

各場面に登場する建物も、その時代の臨場感を感じさせる〝1人の演者〟の様な存在。
様々な貴重な建物の様なので、さぞかし製作者の方々はロケハンや撮影交渉にご苦労された事だろう。
音楽
エンド・ロールで掛かっていた曲が、『これからはより良い方向へ向かうだろう。』と言う微かな期待感をイメージさせるが、曲名は分からない。
期待感
昭和天皇の描写がどの様なのか興味深かった。
それだけを観に行ったと言っても過言では無い。
終戦後70年の節目に『戦争はダメですよ!』的な、在り来たりな啓発映画かなと言う印象が強かった。
満足度
今迄、余り知らなかった史実に触れる事が出来て良かった。
どう考えても当時の人々の、特にクーデターを起こして迄も戦争を遂行しようと言う青年将校達の考え方は理解出来なかった。

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アクション

畑中少佐一行が森 赳近衛師団長(高橋耕次郎)を射殺したり、白石通教陸軍中佐(本郷壮二郎)を惨殺したり。

SF

該当要素無し。

コメディ

鈴木首相は飄々として、言動がコミカル。

ホラー

世相が怖い・・・、狂気染みていて。

グロテスク

やはり阿南陸相の自決シーンは・・・。

サスペンス

中々統一見解が出ないまま時間だけが過ぎ、やがて広島、長崎と原子爆弾が落とされ、ソ連が参戦する等刻一刻と状況が悪くなる。
玉音盤を奪取せんと宮城内を占拠し、捜索するクーデター軍。

謎解き

該当要素無し。

不可思議

該当要素無し。

ラヴ

該当要素無し。

エロス

該当要素無し。

悲劇

お互い貧乏クジを引いた感じの鈴木首相と阿南陸相。
昭和天皇からの度重なる要請に断り切れず、火中の栗を拾う役目を引き受ける事となった鈴木首相。
また、昭和天皇の終戦への決意と陸軍将兵のトップとしての立場に板挟みになり、一命を投げ出して責任を負う阿南陸相。

阿南陸相の亡骸に、漸く分かった知りたがっていた次男・惟晟の最後の様子を語って聞かせる妻・綾子(神野三鈴)の姿は痛ましい。

そういう時代だからと言ってしまえばそれ迄だが、何事にも命懸けで、責任の取り方は即ち死。

感動

終戦へと導く為に命を賭けた人々の物語。
自分の信じる正義の為に、自分の信じる方法で成し遂げようとする強い信念・・・、歴史的には評価されない部分も有るが。

ドキュメンタリー

純然たるドキュメンタリー映画では無いが、半藤一利著のノンフィクション小説『日本のいちばん長い日 決定版』が原作である。

歴史

70年前の日本。