夏の夜の怖い話。 | 謎とミステリィと人生と。

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いやさ。

さっき起きたんだけどさ。

いや。

ボクもね。

こんな話をしたくはないんだけどさ。

胸にしまっておけないっていうかさ。



さっきね。

コンビニ行ったの。



帰って来たらさ


ボクの部屋のドアの隙間にさ

緑のトカゲがいたんだよね。

目線の高さでね

お尻と尻尾が見えててね。



びっくりしたけどさ、

おやまあ

珍しいお客さんだね、くらいに思って。



でも、このままドア開けると

部屋に入っちゃうからさ

逃がそうと思って

たまたま外に出しっぱなしにしていた傘でね

つっついたりしてね。



つっつくと尻尾を振るくせに

全然逃げないの。


その辺りからちょっとね。

イヤな予感というかね。

あれ?

っていうかね

どう考えてもね。

ドアの隙間に入りきる大きさじゃないんじゃないかなって。



急に心臓がバクバクしてきてね。


あれ、行くとき、普通にドア開けて

振り返ってドアの鍵まで締めたけど

その時は何も気づかなかった。



でも、今、目の前で起きてる状況から考えるとさ

もうボクがドアを閉めたその最悪のタイミングで

トカゲが入ってきたことになるんだよね。



もう、クラクラしてきてね。

嘘だ。

そんなワケないって思ったけどね。

どう考えたってドアの隙間の大きさが足りない。

でも、じゃあなんで尻尾は動いてるんだよ。




こんなにも家のドア開けたくないって思ったことはないね。

もうハァハァしてきてね。

早く部屋に入って

落ち着きたい。

でもドアは開けたくない。



永遠とも思える時間を経ってね

勇気を振り絞って

震える手でドアを開けたよね。


もう大人だからね。

多くは語らないよね。





ただボクは今日も思ったんだよ。

自分が前に進むには勇気が必要なんだなって。