◆小説◆「Elephant Signs(エレファント・サインズ)」第二十七話
「あ、あたし、追われてるんです・・・!」
その女性は怯えた顔でそう言った。
白い長そでTシャツに、ジーパンのその女性。明らかに現地の人間ではない。
イスラムの女性であれば、皮膚を露出させる格好などしないからだ。
「は?!だ、だれに・・・?!」
前田もケルマーンもあまりの突然な出来事に、キョトンとしている。
女性は泣きそうな顔でこう叫んだ。
「それを言えば、あたしは殺されてしまう・・・。。。
いや、もう逃げ出した時点で殺されてしまうに違いないわ!!!」
「・・・ま、まぁまぁ、おちついてよ。」
あまりにその女性が混乱状態にあるので、前田はそっと背中をさすってやった。
女性の耳には、水晶のような透き通った石のピアスが揺れている。
太陽の光に反射したその石は、きらりと光っている。
まだ明けたばかりと思われるピアスホールである。
やたら耳たぶが赤くなっているのでそれが分かるのだ。
前田はふと思った。
(この子は日本人か?!アジア人の俺から見ると、何となくわかるからなぁ。。。
でも、・・・一体なぜこの場所に?!
どこから逃げて来たんだろうか・・・。
なぜ追われているんだろうか・・・。
追手など視界には見うけられないぞ?!
一体・・・誰に?!
なんで逃げてる最中だってのに、ピアスホール、開けたてなんだろうか・・・。)
・・・と。
前田は職業柄、わりと細かい所に目がいってしまう癖がある。
発掘作業は、細かな部分まで観察しなければならないからだ。
なので、やや疑問を感じつつも、自分の癖のせいかもしれないし、近頃まか不思議なことばかり起きているので、
(それもありなんだろうな・・・。考えすぎか・・・。)
と、思い、あえて深く、気にとめないことにした。