◆ショートショート◆ ダレガワルイノ?ダレモワルクナインダ。
ついてくるんだ。影が。
やだな。
影の存在に気付いた幼年期から、少年は「影」というものに嫌悪感をいだいていた。
「ついてくんな!」
そんなことを叫んでも、もちろんついてくる影。
きみがわるい。
少年は振り返り、自分の影に唾をはいた。
更に気味が悪いのは、かげもまったくおなじ行動を、することであった。
学校。
みんな楽しそうにはしゃいでいる。
わからない。
やつらは自分のあとをつける影が、気持ち悪くないのだろうか。
ミンナオカシイ。
少年は全てに脅えた。本にも、黒板にも…チョークにも、更にはそのカスにさえも影は存在する。
こわい。コワイコワイコワイ…
あんたの行動はおかしい。
ある日母親に少年は告げられた。
(なにがおかしい?
おかしいのはあんた含め、影に何も感じない世の中の奴らだ。)
少年は母親にそう訴えたが、その言葉に母親は脅えた。
病院に連れて行かれた少年。薬を渡された。
カタカナのなまえ。覚えにくい名前。
やだ。
少年は飲もうとしなかった。すべてゴミ箱に捨てた。
しかし母親はそれを拾い、こっそり味噌汁に混ぜて少年にのませていた。
すると数日後、少年の様子が変わった。
明るくなり、社交的になった。
と、いうのも、少年には、影がみえなくなったのだ。すべてのひとがフワフワ浮いて見える。
実に愉快だった。
家でも笑顔を絶やさない息子。むしろいつも、にやにやしている。
母親は何も知らず、喜んで毎日薬をのませつづけた。
数日後、テレビのニュースである薬の成分が取り上げられていた。
問題が起こったのだ。覚醒作用が、尋常ではないという。
それはその少年に処方された、薬の名前と同じであった。
母親は混乱した。
明るくなった息子の目に見えている世界は・・・一体どんなものなのだろうか。と。
そして自分を責めた。なぜ、薬を無理やり飲ませたのかと。
しかし、どうなのだろうか。少年は飲まなくても怯えている。
飲むと覚醒してしまう。
だれも、わるくない。何も、間違っていない。しかし、起こってしまうことは、ある。
心配した。から、病院へ。・・・と思った母。
影が先天的に怖かった。・・・少年。
良かれと思って「薬」を出した。・・・医者。
母親は、医者を恨むのかもしれない。でもそれは、・・・ちがう。
少年を生んだことを後悔するかもしれない。 でもそれも、・・・ちがう。
何も悪くないんだ、間違ってなんかない。 でも、心は揺れるだろう。おそらく、いや、多くの確率で。
あなたが、家族なら・・・どうしますか?
~完~