小説NO.135 「 新たな幕開けに向けて 」其の6  | もうすぐって…いつ?

小説NO.135 「 新たな幕開けに向けて 」其の6 

「記憶を消す前に・・・」

現世の王(サラクロ)は、神妙な面持ちで話し始めた。
周りの4人は強い金縛りで動くことができない。

「これを話しておこうと思う。
本当はそのまま、情に波打たされることなく、任務を遂行しなければならないのだが・・・。
ワシにはそれが出来ん(_ _。)。
話すと決めた・・・。」


(いったい・・・何を・・・)

4人全員がそう思っていた。言葉には出来ないままに。


「・・・3つ世界の記憶。確かに、持ち続けて生きられないことはない。
田辺さんの奥さんとお子さんは、そういうタイプだったんじゃ。
・・・・・・しかしあれは、完全なる現世の王のミス。気づいていなかったんじゃ。
2人が記憶をもつものだということに。
実際、気付かぬまま、現世を終えて行く者も、いる。残念なことに、気付けていないことも多いんじゃ。
田辺さんには、前任者のかわりに、わしから詫びたいと思う。」


現世の王は、深く、頭を下げた。


「で、じゃ。なぜ記憶を背負ったままではいけないか・・・ということを話そう
(`・ω・´)。
基本的に、その記憶があるというのは「自然のサイクル」どおりに行っていないから、というのが一番の理由じゃな。
現世で全うした記憶を死界できれいに浄化して、何もかも「無」の状態で新たな人生を送る。
それが本来の姿なんじゃ。・・・だし、そうせねばならないよう、ワシら各世界の王は気をつけている。
しかし、じゃ。まれに例外がある。
ワシも人のことが言えないが、昔の健司の力を消されぬままに、今の状態に至っておるからな。
そうすると、結果的に良くないんじゃ(´・ω・`)。
子孫に多少なりとも・・・いや、かなりの確率でその記憶や力は遺伝してしまう。
朱音もそうだし、田辺さんの娘さんも、まさにそういうケースじゃよ。
子孫たちは親を選んでいるわけではない。そこを拠点に新しくスタートしなければならない魂たちじゃ。
なのに、傷つく羽目になってしまう。朱音のように。本人は傷ついておらんというかもしれん。
しかしそれは間違いじゃ。あきらかに、一般の人々とは違う経験をしているわけじゃ。いくらその本人がいいといっても、後の子孫の面倒までみきれんじゃろ?そういう部分が問題なんじゃよ。
そして家族・・・、自分だけその力が持てなかった家族は、傷つくんじゃ。田辺さんのように、のぅ。


現世の王は、ふかく、ふかくため息をついた。
そして、話を続けた。


未来のため、・・・そこまで考えなければならない。うまくサイクルを回していかねばならないんじゃ(`・ω・´)。
記憶を失うというのは、確かにつらいと思う。ただ、後の世界のことも考えてのこと。
わかってくれ・・・。
これまで黙っていたのはな、2つの理由があるんじゃ。
ひとつは、ここに記憶を残している3人・・・まぁ、結果的には4人になったが、
その全員を集めたかったから、というのがある。まとめて記憶を抹消してしまった方が、魔術の力がそれぞれの「気」と反応して強まり、うまくいくんじゃ。
二つ目は、ルースと真也が「体内隔離状態」にあったのを、融合してから記憶の抹消をしたかったからじゃよ。
体内隔離状態にある場合、一つの体といえども二人の人物が存在するわけで、一番難しい方法を試さねば、ならないんじゃ。
そうじゃな。そうして、今に至ったということになる・・・(´・ω・`)」




沈黙が流れた。皆、金縛りにあっているので声が出せないのだから、当然である。
現世の王が言いたかったのは、それだけだった。
理由を教えても、消さねばならない・・・記憶。

辛かった。

しかし自分の決めたこと。皆の心の声を聞くことは、彼にはできるが、それさえ今は・・・怖かった。

自らの初仕事でここまでツライ思いをするとは思っていなかった現世の王。
しかし、あくまで彼は「王」である。


再び、彼はペンダントをかざし、魔術を唱える姿勢に入った・・・。