◆ショートショート◆ 家族の愛情。 | もうすぐって…いつ?

◆ショートショート◆ 家族の愛情。

少女は幼いころから、部屋から出たことがなかった。一度も。
特に出たいとも思わなかった。

なぜ?

「自分は変だ」と思っていたから。



特に両親が肉体的体罰を与えたわけでもなく、いじめにあったわけでもない。
保育園や学校にも行ったことがないのだから、当然と言えば当然である。

物心つき始めると、彼女は自分の部屋のカーテンを遮光と頼んだ。
言われた通りのものを与えられた。
「壁中の金属は顔が映りそうなのですべて取り払ってほしい。」という要望にも、
親は資金を出して、応えた。

親は、自分の娘が「変な子供」だとも特に思っていなかった。
なぜなら親は子供が今どういう状況に暮らしているのか把握していなかったのだ。
・・・親は大金持ち。海外を行ったり来たりの生活。


そう、彼女の世話をしていたのは、召使数人だけであった。
食糧や衣類の買い出し、欲したものをカードで買い、あたえるのみ。

それが彼女の生活であった。
召使はロボットのように言われるがまま。
なにも意見はしない。意見できなかったのかも・・・しれない。


ある日、少女は部屋の中にある「森の写真集」をみつけた。
昔から部屋にはあったのだが、特に見る気がしなかったのだ。ただ、それだけ。

そおっと開いた、ほこりをかぶった、その一冊。

少女のひとみは、生まれて初めて輝いた。

(みたい。この景色を。)

召使いはそれを聞いて目を丸くした。(・・・そとにでるのか?この子が??)

しかし、言われた通りにすることにした。

実はその森、少女が住む場所のすぐ裏にあるのだ。扉を開ければ見える世界。
当然召使たちは毎日のように目にしている場所。
珍しくもなんともない。

ただ、彼女には未知の世界なのだ。


外に出た彼女は、風が吹いていることにまず驚いた。
そして、そのまぶしさにも・・・。目が、痛い。
歩こうとすると、つまずいて、こけた。

初めて感じた痛みに、涙する少女。「いたいよ~。いたいよ~。」
召使は初めて少女を心配した。

この子も感情があるのだ。

不思議なもので、いつもむすーっとしていた人の「人間らしさ」を垣間見ると、
愛着がわくものである。

「だいじょうぶですか?お嬢様・・・」

そんなこんなでたどり着いた森の中。




「わあああああああ!!!すごいすごい!!」



笑ったこともない少女が笑っている。まぶしい太陽よりも、召使たちには、眩しく感じられた。
その時召使たちは初めて
(なぜ自分たちはこれまで外に遊びに出してやらなかったのだろう・・・)
と、後悔した。
(よし、今日は思う存分遊ばせてやろう!)
皆そう感じていたのだ。

「お嬢様?みてください。これは河です。生き物が沢山住んでいますよ♪」

ひとりの召使が言った。
興味身心で、少女は近づく。


「キャーーーーーー!」



悲鳴をあげる、少女。

一体、なぜ?


「河の中に・・・女の子がいる!
私よりずっときれいな女の子が見てるの・・・こわい!」


召使たちは驚いた。もちろん、それは本人。
自分が映っているのだ、ということを言って聞かせ、実際召使たちも水面に映って見せたりしているうちに、
少女もその「女の子」が自分であると理解したようだ。


「あれ・・・わたし・・・汚くないのね・・・・」


少女は涙をこぼしながらそう言った。


「あの、なぜお嬢様は、自分が汚いなどと思うのですか?」
思い切って召使の一人が尋ねた。


「パパもママも、来ないんだもん・・・。わたしに会いに。
わたしが汚いから。だから、みたくないにきまってる・・・。
だから汚いんだと、思っていたわ。

今でも、パパとママはきっと、そう思ってる。みたくないのよ。わたしを。



少女は悲しげな表情で呟いた。

召使たちは少女の正直な気持ちを知り、少女の親に対して怒りの気持ちがこみ上げた。


其の夜、召使たちは彼女の親と連絡を取り、今日通りのことを話した。
そして、これまでの生活のことも・・・。

「仕事が忙しいんだ!」

両親とも、取り合ってくれない。

「あなたは殺人者になりたいのですか?!」

召使はそう突っかかった。

さすがに困惑した両親は、彼女のもとへとやってきた。
・・・が、決まりが悪かったのか、結局。娘とも顔を合わせぬまま、引き返してしまったのだ。


召使たちは団結した。
お金ならあるのだ。彼女に足らないのは、愛情・・・。




・・・そして、十年後。
彼女は学校にも通い、家では召使い・・・ではなくすでに家族となった数人の仲間たちと温かく、
暮らしていた。
そして彼女なりの幸せをつかみ、昔では考えられなかったような笑顔を振りまいて暮らしていた。


彼女の親の居所は今でも分からない。


しかし、彼女は幸せだった。
家族に囲まれ、皆、それぞれを想いあって、生きているのだから・・・。



                 ~完~






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