小説NO.116 「 桜坂ひとみ。 」 | もうすぐって…いつ?

小説NO.116 「 桜坂ひとみ。 」

「桜坂・・・ひとみ・・・です。」

そうぽつりとつぶやいた少女。決して真也とは目を合わさないその少女は、
名前を言い残すとチケットを渡し、強引に札の入った封筒を真也の手から、
奪い取った。

「そう・・・桜坂、ひとみちゃんね(=⌒▽⌒=)
サクラザカ・・・・・さくらざか(((゜д゜;)))?!は?」

真也が「え?」という驚きの表情を見せた瞬間、少女は何も言わずに真也に背を向け、
その場を立ち去ろうとした。

「ま、待って、ね・・・待って!!ひとみちゃん、待って!!!!!」

気づくと真也は「桜坂ひとみ」の腕をつかんでいた。細い腕、幼い腕を。

「やめてっ!放して!!」

ひとみは一瞬真也を睨みつける。彼女は、眉間にしわを寄せ、頬を痙攣させていた。

 「あ・・・ごめ・・・ん」
「さよなら!!」

真也はあまりの威圧感に、一瞬手の力をゆるめた。とたんにひとみは駆け出す。

(追いかけなくちゃいけない(`・ω・´)!)

とっさに真也はそう感じた。なぜだか解らない。しかし、彼はたしかに見たのだ。


桜坂ひとみの目・・・・・。
にらんだ時の、瞳の色・・・・・。


光ったのだ、「あの色」に・・・。
そう、朱音がシュリにもらったペンダント・サラクロが先日病院で見せた瞳のいろ。それと同じに。

高校生の男子が全力で駆けたら普通は簡単に少女に追いつけるだろう。
しかし、追いつけない。

彼女の足取りは実に軽やか。動物のように無駄のない筋肉の動きで路上を駆け抜ける。

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・なんだ?!速すぎだろ?!アレは(°Д°;≡°Д°;)」

真也は脳に酸素が回っていない状態に陥っていた。フラフラする・・・。
でも、追いかけなくては・・・・・・
気力だけで脚は動いていた。縮まることのない距離。離れていく二人の間。

そのとき、真也の意識はとたんにぼんやりと薄れていった。

(ああ、何やってんだ・・・俺・・・)

しかし、薄れゆく記憶の中で、真也は叫んでいた。
まだ見える距離にいるひとみに向って・・・。


「サラ!止まってくれ!!!俺だ!!!」

自分の言葉ではないようにも感じられた。叫んでいる自分を、第三者的にみている自分もいるのだ。
真也自身の反射的言動だったのか・・・それともルースの言葉だったのか・・・・・
わからない。わからないまま、真也は歩道にガクッと倒れこんだ。体力の限界・・・。
胃が無性に気持ち悪かった。こめかみもガンガン締め付けられるように痛かった。

道端でゲェッと吐く真也。もう、どうだっていい。そんな気分。


「あんた、超ダサくない?しかもこんなとこで、どうしようもないわね。
まるでわたしみたいに、どうしようもない・・・変な人。。。」

気づくと桜坂ひとみは、真也の背中をさすっていた。
道行く人は、変な顔で二人を見ているだけ・・・。


「・・・サラって・・・、なんで・・・。。まぁいいや。ちょっとだけ、話し・・・しよ。」

「ありが・・・・と・・・(x_x;)」

どっちが年上だか分らない状態。
初めてひとみは、真也に向って、少し微笑んでいた。

やっとふたりは・・・向き合ったのだ。