小説NO.97 「 ドクター田辺への、告白。 」
朱音の言葉を聞き、田辺は正直驚いていた。
(前にもこんなことを言っていた患者がいたな・・・)
そう、感じていたからだ。
が、少し間を置いて、朱音にこう言った。
「大丈夫。敵どころか、ワタシは朱音さんの味方。仲間だよ。」
田辺の笑顔はやさしかった。
朱音は「仲間だ」という言葉を聞くと、不思議なほど、安心した。
「仲間だ。」
朱音の表情が和らいだのを見て、田辺はもう一度繰り返した。
「ワタシは君の仲間なんだから、信用してくれ。
君が、この5日間で何を感じていたか、もしくは…どこにいたか。
教えてくれないかな?」
田辺の言葉に朱音は驚いた。
(まるで私が今感じている違和感をしっているかのようだわ…。
本当に、仲間なのかも…しれない。)
そこで朱音は、これまでのことを話すことにした。
(この際、頭がどうかしちゃったとおもわれたって、構わない。話そう…。)
約一時間半、朱音は一人で話し続けた。
何も隠さず、見てきたままを伝えた。
その間も田辺は真剣に朱音と向き合っていた。
メモを取りつつ、相づちをうつ。朱音の言葉を疑ったりは、決してしなかった。
最後に、朱音は今気になって仕方ないことを、口にした。
…シュリと子供のこと。
そこまで話すと、朱音はワッと泣き出してしまった。
田辺は朱音の肩を軽く叩く。
「ありがとう。話してくれて。
焦ることはないよ。今日はこの辺にして、休みなさい。
明日またこの続きを、しようね。」
田辺は部屋を出ると、歩きながらふと、例の「昔診た、患者」のことを
思い出した。そして、思わず、息をのんだ。
(昔、事故で運ばれてきた、担当患者の名前は、「星崎 健司」!!
彼も、死に際に、「敵がどうだ」とか、「死界がどう」とか、いっていたな・・・
しかも、あれは、この子の父親じゃ・・・ないか?!)