小説NO.83 「 明かされし、シュリの意向 」
シュリの意見、それに従うことにした3人・・・。
朱音はまず、自分のお腹に朱鳳凰をかざして言った。
「そう言うことなら、私はこの子に時の流れが早くなるよう、念を込めるわね。」
朱鳳凰は「朱音の念」を受け取ると、軽く羽ばたくと、朱音の腹部を包み込み、
キュィン・・・
とかすかに声をあげた。
朱鳳凰が朱音から放れても、光は朱音の腹部を包んだまま、小さく波を打っていた。この波が、
命の成長を早めているのであろう。
「えっと、俺は・・・どうすればいい(・・;)?」
ルースは、緊張を隠しきれない様子で、朱音にそう尋ねた。
すると朱音は言いにくそうに、ではあったが、口を開くとこう言った。
「ルースは、そうね。寂しいけれど・・・、早く死界へ行ったほうがいいわ。
早く行けば、行っただけ、頭輪とも話がつけられるから。
ルースの覚悟ができたら、そう、言って・・・ね。」
朱音は涙をこらえていた。
涙をこらえる・・・?シュリは一体、どのような意向を皆に伝えたのだろうか・・・。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
先ほどの、決断のとき。
シュリはルースと朱音に、こういったのだ。
「僕は、この世界に、残る。
・・・残るとはいっても、「今、この世界に生存している命」はすべて、死界
に送ってほしい。
残すのは、僕と、朱音の腹の子と、「この世界そのものの、命」それだけ。
そこから僕は子供と共に、この世界をまっさらな状態から、やり直したい
んだ。
ルースは、死界へ行って、ここから一気にやってくる魂が混乱しないように
しばらく頭輪殿の手伝いをしてほしい。
そして、しばらくして落ち着いたら、君はあたらしい命となって、再び羽ば
たいてくれ。朱音はもちろん、現世に帰ってほしい。」
・・・と。
その言葉にルースは
(死界に行くのは構わないが、その後、自分だけ「新たな世界」に旅立って
もよいのか・・・)
と、戸惑ったのであった。
しかし、前回のようなやり取りの後、ルースは納得し、この意向に従うことにしたのであった。
朱音は最初から、この世界のことは、二人の意向で進めよう、と割り切っていたため、異論は
なかった。
(もともと自分は、この世界の者ではなく、たまたま自分が特殊な力を持っていると
いうだけなのだから・・・。)
これが朱音の考えであったし、実際、そうするほか、すべはなかったのだ。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「・・・ああ、わかった。ちょっとだけ、時間をくれよ。」
そう言うとルースは、自分の部屋に戻って行った。
シュリはあれからずっと黙っている。ベッドのふちに座って、顔の前で手を組み、遠くを見つめて
何か考え事をしているようだ・・・。朱音には、シュリが不安で居るのがよくわかった。
朱音はそんなシュリにそっと声をかけた。
「ねえ?シュリ。私はあなたに任せて・・・帰る。本当に、いいのよ・・・ね?」
シュリは遠くを見つめたまま、こう言った。
「もちろん。そうしてくれ。僕は、大丈夫。この世界も、どうにかしてみせる
から、さ。」
そう言うとシュリは、視線を朱音に移し、やさしく、しかし熱く・・・朱音の体を
抱きしめた。